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支離滅裂
「ベン様が帰られた!」
ベンが帰宅してすぐ、私は挨拶に出向こうとしましたが、それよりも家臣やメイドたちが先を争うように彼の元へと向かっていきます。
日中色々なことをどうしたらいいのか質問されたのでおそらくそのことを本人に直接確かめようとしているのでしょう。
帰ってきてそうそう大変だなとは思いますが、ベンも様々なことを私たちが勝手に決めなかったことを分かってくれるでしょう。
そう思いつつ、私はベンが戻ってくるまでの間読書をして暇をつぶします。幸いここアスカム公爵家は伝統ある家なので探せば興味深い本がいっぱいあります。
ベンが帰ってきたら夕食になる予定なのですが、ベンは帰宅早々用件が溜まっているせいかなかなか夕食が始まる雰囲気がありません。
そんなことを思いつつ待っていると、急に私の部屋に足音が近づいてきます。
メイドが夕食の準備が出来たことを告げにでも来たのでしょうか、と思っていると。
「おい、アンナ!」
不意に苛立ったようなベンの声が私の耳に飛び込んできます。
「何でしょう?」
そう言って私は部屋のドアを開けます。
するとそこにはなぜか怒り心頭のベンが立っていました。
「一体どうしたのですか?」
「どうしたもこうしたもあるか! 何で忘れ物を届けてくれなかったんだ!?」
開口一番、ベンは不機嫌そうに叫びます。
「忘れ物? それはもしかしてあの封筒のことですか?」
「そうだ! あれがないせいで僕は大恥をかいたんだ!」
「そうですか……ですが余計なことはするなと言われましたので」
昨日と真逆のことを言われてさすがに私は閉口します。
届けろと言ったり、大恥をかいたと言ったりその時々で言うことが変わりすぎていてどうしようもありません。
「うるさい、僕は余計なことをするなと言っただけで、必要なことまでするなとは言ってない! そんなこと、ちょっと考えれば分かるだろう!?」
「その理屈で言えば私は元々必要なことしかしてませんが……」
「何を言ってるんだ!? お前が今までやっていたのは余計なことばかりだろう!?」
「いえ、この前忘れ物を届けた時の話をしたらベンさんはそのせいで恥をかいたと言いましたよね?」
「な、何だと!?」
ベンは咄嗟に反論の言葉が出てこないのか、しばしの間顔を真っ赤にして口をパクパクさせます。
が、やがて吐き捨てるように言います。
「全く、すぐにああ言えばこう言う……そうじゃなくって、本当に僕のためを思ってしてくれているのであればどれが必要なことで、どれが必要じゃないことかぐらいわかるだろう?」
「ですから今まで色々良かれと思ってしていたのですが……」
「うるさい! そんな訳ないだろ! 今日だって屋敷に帰るなり家臣たちが先を争って僕の元にやってきた。何なんだ急に? あれもお前の仕業なのか?」
どうやらベンは私が何を言っても聞く耳を持つつもりはないようです。
「仕業というか、何もしていませんが……」
「そうやってすぐ揚げ足をとる! 分かった、お前は僕に怒られたのが憎くてこれまで皆が自分でしていたことを全部僕のところに言いに行かせるように仕向けたんだろう!?」
「そうではなく、皆もベンさんから余計なことをして怒られたことがあるので、重要なことは指示を仰いだ方がいいと言ったのですが」
「だからって限度があるだろう! 考えてくれ!」
結局のところベンは思い通りにならないことがあれば何でもキレるようです。
全く、一体どう対応するのが正解なのでしょうか。
自分でいいと思うことをしてもだめ、何もしなくてもだめならもはやベン本人に訊くしかありません。
「分かりました。それでは今後私はどうすればいいですか? 私がした方がいいと思うことだけすればいいですか?」
「もういい、お前は何もするな!」
よほど苛立ったのか、そう言ってベンは足音を立てながら去っていきます。
その結論になるのであれば今のやりとりは何の意味もなかったことになりますが……
ベンが帰宅してすぐ、私は挨拶に出向こうとしましたが、それよりも家臣やメイドたちが先を争うように彼の元へと向かっていきます。
日中色々なことをどうしたらいいのか質問されたのでおそらくそのことを本人に直接確かめようとしているのでしょう。
帰ってきてそうそう大変だなとは思いますが、ベンも様々なことを私たちが勝手に決めなかったことを分かってくれるでしょう。
そう思いつつ、私はベンが戻ってくるまでの間読書をして暇をつぶします。幸いここアスカム公爵家は伝統ある家なので探せば興味深い本がいっぱいあります。
ベンが帰ってきたら夕食になる予定なのですが、ベンは帰宅早々用件が溜まっているせいかなかなか夕食が始まる雰囲気がありません。
そんなことを思いつつ待っていると、急に私の部屋に足音が近づいてきます。
メイドが夕食の準備が出来たことを告げにでも来たのでしょうか、と思っていると。
「おい、アンナ!」
不意に苛立ったようなベンの声が私の耳に飛び込んできます。
「何でしょう?」
そう言って私は部屋のドアを開けます。
するとそこにはなぜか怒り心頭のベンが立っていました。
「一体どうしたのですか?」
「どうしたもこうしたもあるか! 何で忘れ物を届けてくれなかったんだ!?」
開口一番、ベンは不機嫌そうに叫びます。
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「そうだ! あれがないせいで僕は大恥をかいたんだ!」
「そうですか……ですが余計なことはするなと言われましたので」
昨日と真逆のことを言われてさすがに私は閉口します。
届けろと言ったり、大恥をかいたと言ったりその時々で言うことが変わりすぎていてどうしようもありません。
「うるさい、僕は余計なことをするなと言っただけで、必要なことまでするなとは言ってない! そんなこと、ちょっと考えれば分かるだろう!?」
「その理屈で言えば私は元々必要なことしかしてませんが……」
「何を言ってるんだ!? お前が今までやっていたのは余計なことばかりだろう!?」
「いえ、この前忘れ物を届けた時の話をしたらベンさんはそのせいで恥をかいたと言いましたよね?」
「な、何だと!?」
ベンは咄嗟に反論の言葉が出てこないのか、しばしの間顔を真っ赤にして口をパクパクさせます。
が、やがて吐き捨てるように言います。
「全く、すぐにああ言えばこう言う……そうじゃなくって、本当に僕のためを思ってしてくれているのであればどれが必要なことで、どれが必要じゃないことかぐらいわかるだろう?」
「ですから今まで色々良かれと思ってしていたのですが……」
「うるさい! そんな訳ないだろ! 今日だって屋敷に帰るなり家臣たちが先を争って僕の元にやってきた。何なんだ急に? あれもお前の仕業なのか?」
どうやらベンは私が何を言っても聞く耳を持つつもりはないようです。
「仕業というか、何もしていませんが……」
「そうやってすぐ揚げ足をとる! 分かった、お前は僕に怒られたのが憎くてこれまで皆が自分でしていたことを全部僕のところに言いに行かせるように仕向けたんだろう!?」
「そうではなく、皆もベンさんから余計なことをして怒られたことがあるので、重要なことは指示を仰いだ方がいいと言ったのですが」
「だからって限度があるだろう! 考えてくれ!」
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全く、一体どう対応するのが正解なのでしょうか。
自分でいいと思うことをしてもだめ、何もしなくてもだめならもはやベン本人に訊くしかありません。
「分かりました。それでは今後私はどうすればいいですか? 私がした方がいいと思うことだけすればいいですか?」
「もういい、お前は何もするな!」
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その結論になるのであれば今のやりとりは何の意味もなかったことになりますが……
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