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封印の儀
アマーリエの悩み
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翌日、私は色々考えた末にアマーリエの元に行くことにした。勝負(実際はただの魔力測定だけど)の最中に彼女が貴族としてやりたいことがある、というようなことを言っていたのでそれが少し気になったのだ。彼女には出来ないことでも、私の、というよりは精霊の力を借りれば成し遂げられるということもあるかもしれない。
私はアンナに場所を聞いて、アマーリエが普段使っているという塔へ向かった。少し殺風景の城内を歩いていると、人々は慌ただしそうに歩いていく。この国の人は貴族特有の虚飾と牽制に満ちた会話をあまりしていないんだなと思う。
アドラント王国では廊下を歩いていると、貴族(と一族)がしょっちゅうそんな会話をしているのを見かけたのに。
そんなことを思いつつ歩いているとアマーリエの塔の下の扉まで到着する。しかし何と言って入るべきか。悩みを話して欲しいというのも馴れ馴れしいし、手伝ってあげようかというのは上から目線な気がする。自国の貴族なら当たり障りなく会話に入ることが出来るのだが、と戸惑っていると、
「私に何か用ですの?」
「!?」
と急に後ろから話しかけられて思わず声をあげそうになる。振り向くとそこには怪訝な顔をしたアマーリエが立っていた。こうなった以上話さざるをえないか。むしろ余計なことを考えずに済んでありがたいのかもしれない、と思いつつ私は用件を切り出す。
「この間の魔力測定のとき、貴族としてやるべきことがあるというようなことをおっしゃっていたので、聞かせていただけないかなと」
私の言葉にアマーリエはさらに困惑を深めたようだ。
「何ですの? それを説明したら手伝ってくれるとでも言うんですか?」
「はい」
「へ?」
てっきり私が冷やかしに来たとでも思っていたのか、私が素直に肯定すると彼女は意外そうな顔をする。それはそれで微妙に傷つくんだけど。私が自分が負かした相手の冷やかしにくる女とでも思っているのだろうか。
「いや、手伝ってくれるならありがたいですが……いいんですの?」
「はい、私はすごい魔力が扱えることが分かったので誰かのお役に立てればいいなと思いまして」
「そ、そうですか。確かにあなたほどの魔力を持っているなら何かの役に立つかもしれませんわ。いいでしょう、お入りなさい」
「お邪魔します」
アマーリエは私が普通に協力するということがかなり意外という様子であった。
塔の中に入るとらせん状の階段と、一階につき一つの部屋がある。ドアには『蔵書』『資料』『道具』などときれいな字で書かれたプレートが貼ってある。私はアマーリエに続いて階段を上がっていく。
「あの、この国では魔法使いが互いに協力することはないのですか?」
「もちろんですわ。貴族生まれの魔法使いにしてみれば私たちは既得権益を侵す敵。私たち平民生まれの魔法使いにとってもお互いはライバルですわ」
なるほど、爵位の数が限られている以上そういう発想になるのか。そういうことなら私が協力することが意外だというのも分からなくはない。
アルツリヒト殿下が魔法実力主義を導入した結果、こういう弊害も出てしまったようだ。確かに他人に協力するぐらいなら自分の成果を上げようとするのは気持ちとして分からなくもない。
私はアマーリエが入った最上階の部屋に続けて入る。開け放たれた窓からはマナライト王国の国土が見渡せる。精霊の加護が少ないせいで土地があまり豊かではないが、魔法技術のおかげか人々は活発に動いているのが見える。
「むしろあなたはなぜ協力してくれますの?」
「私のこの力は私が努力して手に入れた力ではなく、精霊が与えてくれたものだから」
「それはそうですが、例え努力せずに生まれ持った力だとしても自分のために使いたいと思うのが人情ですわ。家柄などその最たるものですし。変わった方ですのね」
実は家柄も持っているんですよ、と私は内心申し訳ない気持ちになる。
「あと、詳しくは言えないのですが私は隣国の生まれで、この国に長居するかまだ決心がついていないのです」
「そうなんですの!? 私より魔力が上ということは最低でも伯爵位は保証されているようなものですのに。やはり変わっておりますわ」
納得しようと思って事情を一部明かしたら余計に変わり者扱いされてしまった。確かに公爵令嬢なのに身分を隠して他国に協力しているのだから実際に変わり者ではあるのだけど。
「もう変わり者でいいです」
私は少し憮然として言う。
さすがに彼女も申し訳なくなったのか、
「すみません、せっかく手伝ってくださるというのに変なことを言ってしまって」
と言って紅茶を淹れてくれる。まさか本人が淹れてくれるとは思っていなかったので私は少し驚く。
「あの、伯爵位を持っているなら誰か雇ったりしないのですか?」
「魔法貴族は土地ではなく金で俸禄をもらうのですが、私はもらっているお金は全て魔法の研究に投じておりますわ」
あなたも十分変わり者では? と思ったが何とか口に出すのを我慢する。
アマーリエは二人分の紅茶を淹れると私たちの前に置き、話し始めた。
「この国はファーヴニルが封印されているせいか、近隣の国よりも精霊の加護が少なく、土地が貧しいと言われていますわ。特に私が生まれた町は、銀の鉱山しか産業がなく、農業はほぼ行われておりませんの。
そのため、食べ物は周囲の街から銀で買ってくるものばかりになるのですが、周辺とは距離があるせいか夏場は肉や野菜がよく傷んでいますわ。そこで私は魔力をこめると冷気を発して食物の保存に役立つ魔道具を開発するため研究を続けていますの。そうすればあの町の人々は夏場でもおいしい肉や野菜を食べることが出来るようになりますわ」
「ヴァーグナー伯もかなり高潔な理由で研究されているのですね」
私は思わず感心してしまった。生まれ故郷の人々の生活を良くするためにもらった俸禄のほとんどをつぎ込むなどなかなか出来ることではない。
「高潔というほどではありませんわ。とにかく、研究や開発には恥ずかしながらお金がかかりますのよ」
それで伯爵という地位にこだわりを見せていたのか。それを聞くと余計に力になってあげたいと思ってしまう。
「分かりました、手伝わせてください」
「すでに魔力を注ぎ込むと魔法が発動する技術は開発されておりますわ。ですからそれを冷却魔法で応用しようとしたのですが、うまくいかないのです。また、そもそも冷却魔法を使える方が少なく、案を思いついても気軽に実験に移すことが難しいのです」
先ほどの魔法使い同士の競争の話を聞く限り、この国の他の魔法使いが気軽に協力してくれるということはあまりないのだろう。
正直私は魔道具のような技術について学んだことはないので、何でそれがうまくいかないのかを考えても分からないだろう。
だけど、今の話を聞いて一つ思ったことがある。
「それなら、冷却魔法を凝縮して、少しずつ発動するような形にしてみてはどうでしょう。魔力を流し込んで使うのではなく、あらかじめ魔力を込めておいて少しずつ使うという形にするのです」
「なるほど」
おそらく、魔力を注ぎ込むと魔法が発動する技術というのがすでにあったためにそちらを発展させる方法を考えたのだろう。
また、私の案だと魔力がなくなると使えなくなってしまうため完全ではない。とはいえそれでもないよりはましなはずだ。
「それに私、冷却魔法も使えます」
「何と! それはとても助かりますわ!」
昨日ウンディーネが空気中の水分を一瞬で凍結させていたから大丈夫なはずだ。
私の言葉を聞いたアマーリエはしばらくの間色々な可能性を検討しているようだった。が、やがて何かに閃いたように立ち上がる。
「すみませんが、少々お待ちくださいませ」
「は、はい」
そして彼女はどこかに走っていった。しばらくして下の階から小さい水晶のような透き通った石を持って戻ってくる。
「お待たせいたしましたわ」
「これは……?」
「昔別の用途で作った物ですわ。冷却魔法を使ってみてくださらないかしら」
「分かりました」
私はウンディーネの力を借りて水晶に向かって冷却魔法を発動する。すると、魔法がどんどん水晶に吸い込まれていくような妙な感覚を覚えた。実際、周囲の気温は全く下がっていない。
「少しでいいですわ」
そう言われて冷気を注ぐのをやめる。
が、直後に水晶より膨大な冷気があふれ出してくる。
「寒っ」
「没になったものだけあって貯蔵量は少ないので溢れてしまってますが……ゆっくり魔力を放出出来るようになれば、うまくいくかもしれませんわ!」
「本当に!? それは良かったです」
そして翌日。アマーリエは没作品の水晶を大きくしたものを持って私の部屋を訪れた。徹夜で研究していたのか、その目は充血している。改めてその執念を思い知ったが、やはり彼女も変わり者と言うべきだろう。
「出来ましたわ……これに魔力をこめてみてくださる?」
「は、はい……」
すると、今度はきちんと私の魔力が吸い込まれていき、溢れてくることもない。
そしてアマーリエが合図をすると、急に冷気を放出し始める。
それを見てアマーリエは自分の研究が成功したことを実感したのだろう、目に涙を浮かべて喜んでいる。
「出来ましたわ……。後は効率だけ改善すれば十分実用出来るものになると思います。本当にありがとうございますわ」
そこまで感謝されるとかえって恐縮してしまう。冷却魔法も私というよりはほぼウンディーネの力だし。
「全然です。滞在中にまた何かあったら声かけてください」
「はい、ではその時はお願いいたしますわ」
私はアンナに場所を聞いて、アマーリエが普段使っているという塔へ向かった。少し殺風景の城内を歩いていると、人々は慌ただしそうに歩いていく。この国の人は貴族特有の虚飾と牽制に満ちた会話をあまりしていないんだなと思う。
アドラント王国では廊下を歩いていると、貴族(と一族)がしょっちゅうそんな会話をしているのを見かけたのに。
そんなことを思いつつ歩いているとアマーリエの塔の下の扉まで到着する。しかし何と言って入るべきか。悩みを話して欲しいというのも馴れ馴れしいし、手伝ってあげようかというのは上から目線な気がする。自国の貴族なら当たり障りなく会話に入ることが出来るのだが、と戸惑っていると、
「私に何か用ですの?」
「!?」
と急に後ろから話しかけられて思わず声をあげそうになる。振り向くとそこには怪訝な顔をしたアマーリエが立っていた。こうなった以上話さざるをえないか。むしろ余計なことを考えずに済んでありがたいのかもしれない、と思いつつ私は用件を切り出す。
「この間の魔力測定のとき、貴族としてやるべきことがあるというようなことをおっしゃっていたので、聞かせていただけないかなと」
私の言葉にアマーリエはさらに困惑を深めたようだ。
「何ですの? それを説明したら手伝ってくれるとでも言うんですか?」
「はい」
「へ?」
てっきり私が冷やかしに来たとでも思っていたのか、私が素直に肯定すると彼女は意外そうな顔をする。それはそれで微妙に傷つくんだけど。私が自分が負かした相手の冷やかしにくる女とでも思っているのだろうか。
「いや、手伝ってくれるならありがたいですが……いいんですの?」
「はい、私はすごい魔力が扱えることが分かったので誰かのお役に立てればいいなと思いまして」
「そ、そうですか。確かにあなたほどの魔力を持っているなら何かの役に立つかもしれませんわ。いいでしょう、お入りなさい」
「お邪魔します」
アマーリエは私が普通に協力するということがかなり意外という様子であった。
塔の中に入るとらせん状の階段と、一階につき一つの部屋がある。ドアには『蔵書』『資料』『道具』などときれいな字で書かれたプレートが貼ってある。私はアマーリエに続いて階段を上がっていく。
「あの、この国では魔法使いが互いに協力することはないのですか?」
「もちろんですわ。貴族生まれの魔法使いにしてみれば私たちは既得権益を侵す敵。私たち平民生まれの魔法使いにとってもお互いはライバルですわ」
なるほど、爵位の数が限られている以上そういう発想になるのか。そういうことなら私が協力することが意外だというのも分からなくはない。
アルツリヒト殿下が魔法実力主義を導入した結果、こういう弊害も出てしまったようだ。確かに他人に協力するぐらいなら自分の成果を上げようとするのは気持ちとして分からなくもない。
私はアマーリエが入った最上階の部屋に続けて入る。開け放たれた窓からはマナライト王国の国土が見渡せる。精霊の加護が少ないせいで土地があまり豊かではないが、魔法技術のおかげか人々は活発に動いているのが見える。
「むしろあなたはなぜ協力してくれますの?」
「私のこの力は私が努力して手に入れた力ではなく、精霊が与えてくれたものだから」
「それはそうですが、例え努力せずに生まれ持った力だとしても自分のために使いたいと思うのが人情ですわ。家柄などその最たるものですし。変わった方ですのね」
実は家柄も持っているんですよ、と私は内心申し訳ない気持ちになる。
「あと、詳しくは言えないのですが私は隣国の生まれで、この国に長居するかまだ決心がついていないのです」
「そうなんですの!? 私より魔力が上ということは最低でも伯爵位は保証されているようなものですのに。やはり変わっておりますわ」
納得しようと思って事情を一部明かしたら余計に変わり者扱いされてしまった。確かに公爵令嬢なのに身分を隠して他国に協力しているのだから実際に変わり者ではあるのだけど。
「もう変わり者でいいです」
私は少し憮然として言う。
さすがに彼女も申し訳なくなったのか、
「すみません、せっかく手伝ってくださるというのに変なことを言ってしまって」
と言って紅茶を淹れてくれる。まさか本人が淹れてくれるとは思っていなかったので私は少し驚く。
「あの、伯爵位を持っているなら誰か雇ったりしないのですか?」
「魔法貴族は土地ではなく金で俸禄をもらうのですが、私はもらっているお金は全て魔法の研究に投じておりますわ」
あなたも十分変わり者では? と思ったが何とか口に出すのを我慢する。
アマーリエは二人分の紅茶を淹れると私たちの前に置き、話し始めた。
「この国はファーヴニルが封印されているせいか、近隣の国よりも精霊の加護が少なく、土地が貧しいと言われていますわ。特に私が生まれた町は、銀の鉱山しか産業がなく、農業はほぼ行われておりませんの。
そのため、食べ物は周囲の街から銀で買ってくるものばかりになるのですが、周辺とは距離があるせいか夏場は肉や野菜がよく傷んでいますわ。そこで私は魔力をこめると冷気を発して食物の保存に役立つ魔道具を開発するため研究を続けていますの。そうすればあの町の人々は夏場でもおいしい肉や野菜を食べることが出来るようになりますわ」
「ヴァーグナー伯もかなり高潔な理由で研究されているのですね」
私は思わず感心してしまった。生まれ故郷の人々の生活を良くするためにもらった俸禄のほとんどをつぎ込むなどなかなか出来ることではない。
「高潔というほどではありませんわ。とにかく、研究や開発には恥ずかしながらお金がかかりますのよ」
それで伯爵という地位にこだわりを見せていたのか。それを聞くと余計に力になってあげたいと思ってしまう。
「分かりました、手伝わせてください」
「すでに魔力を注ぎ込むと魔法が発動する技術は開発されておりますわ。ですからそれを冷却魔法で応用しようとしたのですが、うまくいかないのです。また、そもそも冷却魔法を使える方が少なく、案を思いついても気軽に実験に移すことが難しいのです」
先ほどの魔法使い同士の競争の話を聞く限り、この国の他の魔法使いが気軽に協力してくれるということはあまりないのだろう。
正直私は魔道具のような技術について学んだことはないので、何でそれがうまくいかないのかを考えても分からないだろう。
だけど、今の話を聞いて一つ思ったことがある。
「それなら、冷却魔法を凝縮して、少しずつ発動するような形にしてみてはどうでしょう。魔力を流し込んで使うのではなく、あらかじめ魔力を込めておいて少しずつ使うという形にするのです」
「なるほど」
おそらく、魔力を注ぎ込むと魔法が発動する技術というのがすでにあったためにそちらを発展させる方法を考えたのだろう。
また、私の案だと魔力がなくなると使えなくなってしまうため完全ではない。とはいえそれでもないよりはましなはずだ。
「それに私、冷却魔法も使えます」
「何と! それはとても助かりますわ!」
昨日ウンディーネが空気中の水分を一瞬で凍結させていたから大丈夫なはずだ。
私の言葉を聞いたアマーリエはしばらくの間色々な可能性を検討しているようだった。が、やがて何かに閃いたように立ち上がる。
「すみませんが、少々お待ちくださいませ」
「は、はい」
そして彼女はどこかに走っていった。しばらくして下の階から小さい水晶のような透き通った石を持って戻ってくる。
「お待たせいたしましたわ」
「これは……?」
「昔別の用途で作った物ですわ。冷却魔法を使ってみてくださらないかしら」
「分かりました」
私はウンディーネの力を借りて水晶に向かって冷却魔法を発動する。すると、魔法がどんどん水晶に吸い込まれていくような妙な感覚を覚えた。実際、周囲の気温は全く下がっていない。
「少しでいいですわ」
そう言われて冷気を注ぐのをやめる。
が、直後に水晶より膨大な冷気があふれ出してくる。
「寒っ」
「没になったものだけあって貯蔵量は少ないので溢れてしまってますが……ゆっくり魔力を放出出来るようになれば、うまくいくかもしれませんわ!」
「本当に!? それは良かったです」
そして翌日。アマーリエは没作品の水晶を大きくしたものを持って私の部屋を訪れた。徹夜で研究していたのか、その目は充血している。改めてその執念を思い知ったが、やはり彼女も変わり者と言うべきだろう。
「出来ましたわ……これに魔力をこめてみてくださる?」
「は、はい……」
すると、今度はきちんと私の魔力が吸い込まれていき、溢れてくることもない。
そしてアマーリエが合図をすると、急に冷気を放出し始める。
それを見てアマーリエは自分の研究が成功したことを実感したのだろう、目に涙を浮かべて喜んでいる。
「出来ましたわ……。後は効率だけ改善すれば十分実用出来るものになると思います。本当にありがとうございますわ」
そこまで感謝されるとかえって恐縮してしまう。冷却魔法も私というよりはほぼウンディーネの力だし。
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「はい、ではその時はお願いいたしますわ」
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