17 / 20
ラインハルト発見
しおりを挟む
その後店が終わった後、ラインハルトはレニーを待って一緒に彼女の家に向かう。
彼女の家は近所の住宅街にあった。高級なレストランで働くだけあって、普通の庶民よりはいい暮らしをしている。
「悪いね、急に来てしまって」
「いえいえ、お忙しい中うちに来ていただいてありがとうございます」
そう言ってレニーがドアを開ける。すると、中からレニーの両親と思われる男女が出迎えてくれた。
そしてラインハルトを怪訝な目で見つめる。
「お帰り、レニー。あれ、その男は?」
「はい、この方が私が前から言っていた恋人のハルトさんです」
一応レニーはラインハルトの正体を隠して紹介する。
が、二人は顔を見合わせた。
そんな二人の様子を見てレニーは少し疑問を覚えるが、きっと娘の恋人を値踏みしているのだろう、と勝手に納得して部屋に向かう。
一方、二人が部屋で逢瀬を楽しんでいる間、レニーの両親は顔を見合わせていた。
ラインハルトとジェニーの捜索に携わる人数は減っていたが、代わりに二人の似顔絵が街中に張り出されるなどの策が講じられていた。
レニーが働いている高級レストランにはさすがに中に貼り紙が貼られるようなことはなかったが、庶民が使うお店に入ればそこには大体ラインハルトやジェニーの似顔絵が貼られていた。
元々平民の者が貴族の顔を直接見る機会はあまりないので、両親は二人の顔を知らなかったが、今となっては町の人の多くが二人の顔を知っていた。
そのため、父親も母親も間近でラインハルトの顔を見てもしやと思ってしまったのである。
「しかしレニーもラインハルト様の心を掴むなんてやるわね」
「感心している場合じゃない! ラインハルト様は婚約者がいるのに駆け落ちしたような人物だぞ!?」
すぐに二人の間でラインハルトをどうするかの話し合いが始まる。
「た、確かに……。ん? ということは、婚約者、駆け落ち相手、とレニー以外に少なくとも二人以上は相手がいるってこと?」
「そうなるな……いずれにせよ、ラインハルト様を匿ったなどということになれば後で何を言われるか分からん」
「そうね、早く通報した方がいいんじゃない?」
「そ、そうだな。それなら早速行ってくる。ただ、このことは本人には気づかれぬようにな」
そう言って父親は急ぎ外出の準備を整える。
父親も慌てていたが、当のラインハルトとレニーは完全に二人の世界に入っていたためか、両親の動きに全く気が付かなかった。
翌朝、ラインハルトは満足げな表情でレニーとともに部屋から出てくる。
が、そんな二人の前に現れたのはレニーの両親ではなく、メイウェザー家の家臣たちであった。
「な……」
それを見てラインハルトの表情が凍り付く。
そんな彼を見て家臣たちも表情を変えた。まさか自分たちの未来の主君があれほど世間を騒がせた末、こんなところで平民の女と楽しんでいたとは。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことである。
その家臣たちの後ろでレニーの両親は隠れながらおそるおそる様子を窺っている。
「ラインハルト様!」
「このようなところで何をしていらっしゃるのですか!?」
「そもそも駆け落ち相手のジェニー様はどちらに!?」
「というかその女は一体どなたですか!?」
家臣たちは次々とラインハルトに語り掛ける。
もはや彼に逃げ場はなかった。
「そ、それは……くそ、レニーめ、まさかこの僕を売るなんて!」
動揺したラインハルトは思わず傍らのレニーに疑いの目を向ける。
しかしレニーからすれば心外な疑いであった。
「そんな、私は今晩ずっとラインハルト様と一緒にいたじゃないですか!」
「うるさい! そうじゃなかったらこんなことになるか!」
「ラインハルト様! これ以上平民の前で醜態をさらすのはおやめください!」
「誰が醜態だと!?」
「とにかく速やかにお越しください!」
家臣たちはラインハルトを取り囲み、半ば連れ去るようにつれていく。
「くそ、この僕を売りやがって! 覚えとけよ!?」
ラインハルトはそう叫びながら連れていかれるのだった。
彼女の家は近所の住宅街にあった。高級なレストランで働くだけあって、普通の庶民よりはいい暮らしをしている。
「悪いね、急に来てしまって」
「いえいえ、お忙しい中うちに来ていただいてありがとうございます」
そう言ってレニーがドアを開ける。すると、中からレニーの両親と思われる男女が出迎えてくれた。
そしてラインハルトを怪訝な目で見つめる。
「お帰り、レニー。あれ、その男は?」
「はい、この方が私が前から言っていた恋人のハルトさんです」
一応レニーはラインハルトの正体を隠して紹介する。
が、二人は顔を見合わせた。
そんな二人の様子を見てレニーは少し疑問を覚えるが、きっと娘の恋人を値踏みしているのだろう、と勝手に納得して部屋に向かう。
一方、二人が部屋で逢瀬を楽しんでいる間、レニーの両親は顔を見合わせていた。
ラインハルトとジェニーの捜索に携わる人数は減っていたが、代わりに二人の似顔絵が街中に張り出されるなどの策が講じられていた。
レニーが働いている高級レストランにはさすがに中に貼り紙が貼られるようなことはなかったが、庶民が使うお店に入ればそこには大体ラインハルトやジェニーの似顔絵が貼られていた。
元々平民の者が貴族の顔を直接見る機会はあまりないので、両親は二人の顔を知らなかったが、今となっては町の人の多くが二人の顔を知っていた。
そのため、父親も母親も間近でラインハルトの顔を見てもしやと思ってしまったのである。
「しかしレニーもラインハルト様の心を掴むなんてやるわね」
「感心している場合じゃない! ラインハルト様は婚約者がいるのに駆け落ちしたような人物だぞ!?」
すぐに二人の間でラインハルトをどうするかの話し合いが始まる。
「た、確かに……。ん? ということは、婚約者、駆け落ち相手、とレニー以外に少なくとも二人以上は相手がいるってこと?」
「そうなるな……いずれにせよ、ラインハルト様を匿ったなどということになれば後で何を言われるか分からん」
「そうね、早く通報した方がいいんじゃない?」
「そ、そうだな。それなら早速行ってくる。ただ、このことは本人には気づかれぬようにな」
そう言って父親は急ぎ外出の準備を整える。
父親も慌てていたが、当のラインハルトとレニーは完全に二人の世界に入っていたためか、両親の動きに全く気が付かなかった。
翌朝、ラインハルトは満足げな表情でレニーとともに部屋から出てくる。
が、そんな二人の前に現れたのはレニーの両親ではなく、メイウェザー家の家臣たちであった。
「な……」
それを見てラインハルトの表情が凍り付く。
そんな彼を見て家臣たちも表情を変えた。まさか自分たちの未来の主君があれほど世間を騒がせた末、こんなところで平民の女と楽しんでいたとは。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことである。
その家臣たちの後ろでレニーの両親は隠れながらおそるおそる様子を窺っている。
「ラインハルト様!」
「このようなところで何をしていらっしゃるのですか!?」
「そもそも駆け落ち相手のジェニー様はどちらに!?」
「というかその女は一体どなたですか!?」
家臣たちは次々とラインハルトに語り掛ける。
もはや彼に逃げ場はなかった。
「そ、それは……くそ、レニーめ、まさかこの僕を売るなんて!」
動揺したラインハルトは思わず傍らのレニーに疑いの目を向ける。
しかしレニーからすれば心外な疑いであった。
「そんな、私は今晩ずっとラインハルト様と一緒にいたじゃないですか!」
「うるさい! そうじゃなかったらこんなことになるか!」
「ラインハルト様! これ以上平民の前で醜態をさらすのはおやめください!」
「誰が醜態だと!?」
「とにかく速やかにお越しください!」
家臣たちはラインハルトを取り囲み、半ば連れ去るようにつれていく。
「くそ、この僕を売りやがって! 覚えとけよ!?」
ラインハルトはそう叫びながら連れていかれるのだった。
97
あなたにおすすめの小説
婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。
ぱんだ
恋愛
クロエ子爵令嬢は婚約者のジャック伯爵令息の実家に食事に招かれお泊りすることになる。
彼とその妹と両親に穏やかな笑顔で迎え入れられて心の中で純粋に喜ぶクロエ。
しかし彼の妹だと思っていたエリザベスが実は家族ではなく幼馴染だった。彼の家族とエリザベスの家族は家も近所で昔から気を許した間柄だと言う。
クロエは彼とエリザベスの恋人のようなあまりの親密な態度に不安な気持ちになり婚約を思いとどまる。
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。
石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。
七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。
しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。
実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。
愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
好きな人と結婚出来ない俺に、姉が言った
しがついつか
恋愛
グレイキャット伯爵家の嫡男ジョージには、平民の恋人がいた。
彼女を妻にしたいと訴えるも、身分の差を理由に両親から反対される。
両親は彼の婚約者を選定中であった。
伯爵家を継ぐのだ。
伴侶が貴族の作法を知らない者では話にならない。
平民は諦めろ。
貴族らしく政略結婚を受け入れろ。
好きな人と結ばれない現実に憤る彼に、姉は言った。
「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
待ってるだけでは何も手に入らないのだから。
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。
まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。
私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。
お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。
けれど、彼に言われましたの。
「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」
そうですか。男に二言はありませんね?
読んでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる