48 / 56
ダークドワーフのオルギム
ダークドワーフ
しおりを挟む
その後俺はマキナとともにオルギムを連れて家に向かった。オルギムは俺たちが王国の外の山奥に住んでいるのを見て怪訝な表情をする。
「なぜあなた方はこのようなところに住んでいるのか?」
「まあ色々あるんだが、一言で言うと王国にいると人間関係が面倒だからだな」
「そうか? とはいえまあ我らも身内だけで山に引きこもっているし似たようなものか」
オルギムは勝手に納得してくれる。そして家が見えてくると、家の周囲にある畑と牧場を見て感心する。
「山奥なのにここまで立派な畑と牧場を造るなんてすごいな」
「ありがとう。ドワーフはそういうのはないのか?」
「そうだな。大体我らの食糧は魔族との交易と、山中での狩だけで賄われている」
そんなことを話しつつ俺たちは家の中へと入る。俺はあまりうまくないなりにお茶を淹れてオルギムに出した。
「ゴルゴールに連れていかれた人質がどこにいるか分かるか?」
「ゴルゴールは我らの山脈の近くのドグラという町に城を築いてそこから圧力をかけてきている。おそらくその中にいるはずだ」
「それなら話は早い。色々考えたが、今回の件を解決するにはゴルゴールを倒して人質を救出してしまうのが一番だろう」
「そんなことが出来るのか?」
もし魔王の城とかに連れていかれていれば面倒だったので俺は少し安堵した。が、俺の言葉にオルギムは首をかしげる。
「もちろん絶対に倒せるとは言えない。だが、俺は四天王の一人ガウゼルを倒したこともある」
「何と、あのガウゼルを!?」
それを聞いてオルギムの表情が変わる。
普通の人々(人ではないが)に比べれば魔王軍四天王と言えば雲の上の存在だろう。
「魔王軍全員が集結しているならともかく、話を聞く限りゴルゴールは自身の軍勢のみとドグラにいるのだろう? それなら俺たちが力を合わせれば勝機はあるはずだ」
「なるほど」
俺の言葉にオルギムは頷く。
「ただ、この案には大きな問題がある。仮に人質救出に成功すれば、魔王軍はダークドワーフたちに対して報復に出る可能性があるということだ」
「それはそうだ」
俺の言葉にオルギムの表情は曇る。
「そしてそうなった場合、人間も我らを助けてくれるかどうかは分からないということか」
「そうだな。時期にもよるが、王国の混乱が収まっていなければ厳しいだろう」
「結局、わしらがとれる選択は少ないな。魔族に膝を屈するか、全滅覚悟で抵抗するか、もしくはどこかに集落を移すか」
オルギムの言葉に気まずい沈黙が漂う。
「ちなみにだが、オルギムはダークドワーフが人間の王国に移住する可能性はあると思うか?」
「逆に訊くが、人間はそれを受け入れるのか?」
「どうだろうな」
俺は少し首を捻る。とりあえず賢者の石の結界は魔族にしか効かないため、ダークドワーフに効くことはない。問題は人間や王国にわずかに住むドワーフたちが彼らをどう思うかだが、正直予想はつかなかった。というのもダークドワーフの数が少なすぎて、そもそも認知されていないからだ。
「分からない。そもそもダークドワーフの存在自体、そこまで認知されていないからな。だが、それは逆に言えば第一印象でどうにでもなるということでもある。例えば魔族が攻めてきた時に共闘して力を発揮するとかな」
「なるほど。予想だが、ダークドワーフたちの意見は割れるだろう。魔族や人間に膝を屈するぐらいなら今まで生きてきた集落に立てこもって最後まで戦うという者はいるだろうし、逆にそこまでするぐらいなら魔族に膝を屈するとか人間領に逃げるという者もいるだろう。何にせよ、議論の時間が限られている以上きちんとまとめるのは難しいだろうな」
オルギムは少し暗い表情で言った。
「分かった。それなら一度戻って相談してみるか? 一応俺としては魔族に降伏することだけはやめて欲しいから、それ以外の選択をとるなら出来る限りサポートしよう」
「ありがとう。出来る限りおぬしの気持ちに答えられるようにしようと思う」
そう言ってオルギムは家を出た。来たばかりなのに慌ただしいが、時間が限られている以上仕方がない。
「いいのか? 場合によっては彼らが皆魔族に降ることになるが」
マキナが不安そうに言う。
「とはいえ、彼らが抵抗や移住を選んだとしても人間が全面協力する、と断言出来ない以上こちらから無理強いは出来ない。とはいえ一応王国にもこのことは伝えておくか。せめて移住の可否だけでも確認しておきたい」
彼らの移住を国として受け入れる意思があれば、少しはいい結論になりやすくなるかもしれない。そう思いつつ俺は手紙を書くのだった。
「なぜあなた方はこのようなところに住んでいるのか?」
「まあ色々あるんだが、一言で言うと王国にいると人間関係が面倒だからだな」
「そうか? とはいえまあ我らも身内だけで山に引きこもっているし似たようなものか」
オルギムは勝手に納得してくれる。そして家が見えてくると、家の周囲にある畑と牧場を見て感心する。
「山奥なのにここまで立派な畑と牧場を造るなんてすごいな」
「ありがとう。ドワーフはそういうのはないのか?」
「そうだな。大体我らの食糧は魔族との交易と、山中での狩だけで賄われている」
そんなことを話しつつ俺たちは家の中へと入る。俺はあまりうまくないなりにお茶を淹れてオルギムに出した。
「ゴルゴールに連れていかれた人質がどこにいるか分かるか?」
「ゴルゴールは我らの山脈の近くのドグラという町に城を築いてそこから圧力をかけてきている。おそらくその中にいるはずだ」
「それなら話は早い。色々考えたが、今回の件を解決するにはゴルゴールを倒して人質を救出してしまうのが一番だろう」
「そんなことが出来るのか?」
もし魔王の城とかに連れていかれていれば面倒だったので俺は少し安堵した。が、俺の言葉にオルギムは首をかしげる。
「もちろん絶対に倒せるとは言えない。だが、俺は四天王の一人ガウゼルを倒したこともある」
「何と、あのガウゼルを!?」
それを聞いてオルギムの表情が変わる。
普通の人々(人ではないが)に比べれば魔王軍四天王と言えば雲の上の存在だろう。
「魔王軍全員が集結しているならともかく、話を聞く限りゴルゴールは自身の軍勢のみとドグラにいるのだろう? それなら俺たちが力を合わせれば勝機はあるはずだ」
「なるほど」
俺の言葉にオルギムは頷く。
「ただ、この案には大きな問題がある。仮に人質救出に成功すれば、魔王軍はダークドワーフたちに対して報復に出る可能性があるということだ」
「それはそうだ」
俺の言葉にオルギムの表情は曇る。
「そしてそうなった場合、人間も我らを助けてくれるかどうかは分からないということか」
「そうだな。時期にもよるが、王国の混乱が収まっていなければ厳しいだろう」
「結局、わしらがとれる選択は少ないな。魔族に膝を屈するか、全滅覚悟で抵抗するか、もしくはどこかに集落を移すか」
オルギムの言葉に気まずい沈黙が漂う。
「ちなみにだが、オルギムはダークドワーフが人間の王国に移住する可能性はあると思うか?」
「逆に訊くが、人間はそれを受け入れるのか?」
「どうだろうな」
俺は少し首を捻る。とりあえず賢者の石の結界は魔族にしか効かないため、ダークドワーフに効くことはない。問題は人間や王国にわずかに住むドワーフたちが彼らをどう思うかだが、正直予想はつかなかった。というのもダークドワーフの数が少なすぎて、そもそも認知されていないからだ。
「分からない。そもそもダークドワーフの存在自体、そこまで認知されていないからな。だが、それは逆に言えば第一印象でどうにでもなるということでもある。例えば魔族が攻めてきた時に共闘して力を発揮するとかな」
「なるほど。予想だが、ダークドワーフたちの意見は割れるだろう。魔族や人間に膝を屈するぐらいなら今まで生きてきた集落に立てこもって最後まで戦うという者はいるだろうし、逆にそこまでするぐらいなら魔族に膝を屈するとか人間領に逃げるという者もいるだろう。何にせよ、議論の時間が限られている以上きちんとまとめるのは難しいだろうな」
オルギムは少し暗い表情で言った。
「分かった。それなら一度戻って相談してみるか? 一応俺としては魔族に降伏することだけはやめて欲しいから、それ以外の選択をとるなら出来る限りサポートしよう」
「ありがとう。出来る限りおぬしの気持ちに答えられるようにしようと思う」
そう言ってオルギムは家を出た。来たばかりなのに慌ただしいが、時間が限られている以上仕方がない。
「いいのか? 場合によっては彼らが皆魔族に降ることになるが」
マキナが不安そうに言う。
「とはいえ、彼らが抵抗や移住を選んだとしても人間が全面協力する、と断言出来ない以上こちらから無理強いは出来ない。とはいえ一応王国にもこのことは伝えておくか。せめて移住の可否だけでも確認しておきたい」
彼らの移住を国として受け入れる意思があれば、少しはいい結論になりやすくなるかもしれない。そう思いつつ俺は手紙を書くのだった。
1
あなたにおすすめの小説
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな
・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー!
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。
だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。
なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!
《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。
そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!
ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!
一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!
彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。
アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。
アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。
カクヨムにも掲載
なろう
日間2位
月間6位
なろうブクマ6500
カクヨム3000
★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる