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ダンジョン都市アルディナと王女ティア
ティア
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翌朝、俺たちは宿の食堂で落ち合う。
「おはよう、昨日はよく眠れたか?」
「はい、おかげさまで」
そう答えたティアレッタは血色がよくなり、足取りもきちんとしていた。王城で温室育ちだった割には体力があるんだな、と感心する。
リンの方も昨夜のやりとりが気に入ったのか、機嫌は良さそうで一安心する。
適当に朝食を頼むと、俺はティアレッタに尋ねる。
「それでこれからどうするか決まったか?」
「それは……」
ティアレッタは目を伏せる。
これまではとりあえず逃げるという目標があったが、それがなくなった今、急に今後どうするかを決めろと言っても難しいだろう。
「まだ結論が出ないというなら提案があるんだが、俺たちと一緒に冒険者にならないか?」
「え?」
思いもよらない提案に、ティアレッタは目を見張る。
「やはりパーティーは二人だと不自由だからな」
「とはいえ、いきなり素人を入れても大丈夫なものなのでしょうか?」
「大丈夫だ。職業は俺が用意するし、素人と言っても、隣国の王都からこの街まで一人で歩いてきたんだろう? 下手な冒険者よりも旅をしているさ」
というか俺もリンも能力と職業で強くなってるだけで、本人の経験や技術を見れば素人同然だ。むしろ戦闘以外の経験で言えばティアレッタの方が豊富だろう。
「ですが……え、本当にいいんですか? いろんな意味で迷惑をかけてしまうかもしれませんが……」
ティアレッタはなおも困惑したように言う。
冒険者に不慣れというだけでなく、宿の食堂なので表立っては言えないが、彼女に対する追手がくるかもしれないということだろう。
「それは分かっている。とはいえむしろ俺の方が、こんな力を使えるせいで神殿に睨まれている」
「ああ……」
彼女も神殿が何を考えるのかはある程度分かっているのだろう、それを聞いて苦笑する。
「まあすぐに答えを出せとは言わないから考えてみてくれ」
「は、はい……」
「じゃあ俺たちはギルドに行ってくる」
それだけを言い残し、俺はリンと共にギルドに向かう。
俺たちがギルドに向かうと、それだけで周囲に人が集まってきた。昨日職業売買の話をしたことに加えて、イビルスライム討伐により実力もそこそこ認められたらしい。
「実は俺、こいつと職業を交換したいんだが……」
「剣士の上位職ってないか?」
「私あんまり冒険者の適正ないから職業を売って村に帰りたい……」
そんな風に数人が声をかけてきて、さらにそれを十数人の冒険者たちが見守る。
「分かった。それなら職業を売りたいという方優先で頼む。とりあえずどういうものか話だけを聞きたいという方はリンに聞いてくれ」
そんな訳で俺は引退冒険者から職業を買い取ったり、パーティー内での交換を引き受けたりした。ただ、上位の職業はあまり持っていないので売る方はあんまりだったが。
その傍らでリンは他の人々に俺の力を説明する。
実際に俺が取引を行い、客の冒険者も満足して帰っていくのを見て、他の人々も徐々に俺の力を信じ始めた。
そんな訳で取引もある程度うまくいき、たくさんの取引を行えたからか俺のレベルも8に上がった。そして夕方ごろに俺たちは宿に帰っていく。
するとそこには真剣な表情をしたティアレッタが待っていた。
「お帰りなさい。朝の話でしたが、どうするか決めました」
「そうか。いいのか、半日で」
「はい。情報を集める当てもないので長く考えても仕方ありません」
それはそうだが、実際それですぐに決断できるのはすごいと思う。
やはり彼女の決断力は常人離れしている。
「分かった」
俺たちは再び三人で俺の部屋に集まる。
するとティアレッタは俺たちを交互に見て、口を開く。
「今朝のお誘いですが、微力ながら受けさせていただこうと思います」
「いいのか?」
「はい。逃亡を続けても、どこかできちんと生活するためには誰かを頼らなければなりません。それなら私はアレンさんを選びます」
「それは俺が特殊な力を持っているからか?」
「それもありますが、どちらかというと内面的なことです。最初に助けてくれたうえ、私が王女だと分かったからといってどこにも通報しなかったからです。そうすれば報奨金がもらえたかもしれなかったのに」
「そんなことしたら俺が『王女』の職業を奪ったことがバレて大問題になるだろう」
俺が言うと、ティアレッタは今気づいた、というふうに目を丸くする。
「それに、助けたのは金に目がくらんだからかもしれない」
「確かに。とはいえ、そういう理由があるならなおさらあなたは信頼できると言えます。『王女』を奪った以上、もし追手がきても隠すのに協力せざるを得ないですし」
「なるほど」
言われてみれば、俺はティアレッタの正体隠蔽に隠さなければならないから信頼できるのか。
もちろんそのリスクがあっても判断が揺らぐことはないが。
「と言う訳で、私は王女ティアレッタではなく一冒険者のティアとしてお世話になろうと思います」
ティアレッタ、改めティアは覚悟を決めた表情で言う。
職業も名前も変えて、本当にこれからは新しい人生を歩もうという決意が伝わってくる。
リンと顔を見合わせると、リンも頷く。
「分かった。じゃあこれからもよろしくな」
「改めて私もよろしくお願いします」
「はい、こちらこそお願いします」
こうして俺たちのパーティーには思いもよらない三人目が加入することになったのだった。
「おはよう、昨日はよく眠れたか?」
「はい、おかげさまで」
そう答えたティアレッタは血色がよくなり、足取りもきちんとしていた。王城で温室育ちだった割には体力があるんだな、と感心する。
リンの方も昨夜のやりとりが気に入ったのか、機嫌は良さそうで一安心する。
適当に朝食を頼むと、俺はティアレッタに尋ねる。
「それでこれからどうするか決まったか?」
「それは……」
ティアレッタは目を伏せる。
これまではとりあえず逃げるという目標があったが、それがなくなった今、急に今後どうするかを決めろと言っても難しいだろう。
「まだ結論が出ないというなら提案があるんだが、俺たちと一緒に冒険者にならないか?」
「え?」
思いもよらない提案に、ティアレッタは目を見張る。
「やはりパーティーは二人だと不自由だからな」
「とはいえ、いきなり素人を入れても大丈夫なものなのでしょうか?」
「大丈夫だ。職業は俺が用意するし、素人と言っても、隣国の王都からこの街まで一人で歩いてきたんだろう? 下手な冒険者よりも旅をしているさ」
というか俺もリンも能力と職業で強くなってるだけで、本人の経験や技術を見れば素人同然だ。むしろ戦闘以外の経験で言えばティアレッタの方が豊富だろう。
「ですが……え、本当にいいんですか? いろんな意味で迷惑をかけてしまうかもしれませんが……」
ティアレッタはなおも困惑したように言う。
冒険者に不慣れというだけでなく、宿の食堂なので表立っては言えないが、彼女に対する追手がくるかもしれないということだろう。
「それは分かっている。とはいえむしろ俺の方が、こんな力を使えるせいで神殿に睨まれている」
「ああ……」
彼女も神殿が何を考えるのかはある程度分かっているのだろう、それを聞いて苦笑する。
「まあすぐに答えを出せとは言わないから考えてみてくれ」
「は、はい……」
「じゃあ俺たちはギルドに行ってくる」
それだけを言い残し、俺はリンと共にギルドに向かう。
俺たちがギルドに向かうと、それだけで周囲に人が集まってきた。昨日職業売買の話をしたことに加えて、イビルスライム討伐により実力もそこそこ認められたらしい。
「実は俺、こいつと職業を交換したいんだが……」
「剣士の上位職ってないか?」
「私あんまり冒険者の適正ないから職業を売って村に帰りたい……」
そんな風に数人が声をかけてきて、さらにそれを十数人の冒険者たちが見守る。
「分かった。それなら職業を売りたいという方優先で頼む。とりあえずどういうものか話だけを聞きたいという方はリンに聞いてくれ」
そんな訳で俺は引退冒険者から職業を買い取ったり、パーティー内での交換を引き受けたりした。ただ、上位の職業はあまり持っていないので売る方はあんまりだったが。
その傍らでリンは他の人々に俺の力を説明する。
実際に俺が取引を行い、客の冒険者も満足して帰っていくのを見て、他の人々も徐々に俺の力を信じ始めた。
そんな訳で取引もある程度うまくいき、たくさんの取引を行えたからか俺のレベルも8に上がった。そして夕方ごろに俺たちは宿に帰っていく。
するとそこには真剣な表情をしたティアレッタが待っていた。
「お帰りなさい。朝の話でしたが、どうするか決めました」
「そうか。いいのか、半日で」
「はい。情報を集める当てもないので長く考えても仕方ありません」
それはそうだが、実際それですぐに決断できるのはすごいと思う。
やはり彼女の決断力は常人離れしている。
「分かった」
俺たちは再び三人で俺の部屋に集まる。
するとティアレッタは俺たちを交互に見て、口を開く。
「今朝のお誘いですが、微力ながら受けさせていただこうと思います」
「いいのか?」
「はい。逃亡を続けても、どこかできちんと生活するためには誰かを頼らなければなりません。それなら私はアレンさんを選びます」
「それは俺が特殊な力を持っているからか?」
「それもありますが、どちらかというと内面的なことです。最初に助けてくれたうえ、私が王女だと分かったからといってどこにも通報しなかったからです。そうすれば報奨金がもらえたかもしれなかったのに」
「そんなことしたら俺が『王女』の職業を奪ったことがバレて大問題になるだろう」
俺が言うと、ティアレッタは今気づいた、というふうに目を丸くする。
「それに、助けたのは金に目がくらんだからかもしれない」
「確かに。とはいえ、そういう理由があるならなおさらあなたは信頼できると言えます。『王女』を奪った以上、もし追手がきても隠すのに協力せざるを得ないですし」
「なるほど」
言われてみれば、俺はティアレッタの正体隠蔽に隠さなければならないから信頼できるのか。
もちろんそのリスクがあっても判断が揺らぐことはないが。
「と言う訳で、私は王女ティアレッタではなく一冒険者のティアとしてお世話になろうと思います」
ティアレッタ、改めティアは覚悟を決めた表情で言う。
職業も名前も変えて、本当にこれからは新しい人生を歩もうという決意が伝わってくる。
リンと顔を見合わせると、リンも頷く。
「分かった。じゃあこれからもよろしくな」
「改めて私もよろしくお願いします」
「はい、こちらこそお願いします」
こうして俺たちのパーティーには思いもよらない三人目が加入することになったのだった。
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