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因縁の再会と決着
エートランド王国の現状
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ダンジョンから帰った俺たちはとりあえずリオナや兵士たちが先に街に来ていないかを確認したが、二人とも特に目立ったことをした形跡はない。
それを確認して俺たちはドラゴンの鱗や角、牙、そして内臓などをギルドに届ける。それを見たギルドの職員や冒険者たちは驚くとともに、一緒にいった魔物軍団の姿がないことに訝しむ。
「いやあ、本当は魔物たちとドラゴンが戦っていたんだが、途中で公爵の支配が解けてしまって、弱っていたドラゴンを運よく俺たちが倒したという訳だ」
自分たちの手柄にしなくてもリオナが去っていった以上、ドラゴンの戦利品は俺たちのものになるので俺はあえて謙遜して報告する。
「そんな、あれだけ従順だった魔物の支配が解けるなんて……本当ですか? 兵士の方も姿が見えないようですが」
ギルド職員も困惑する。
もしかすると俺たちが兵士やリオナを不意打ちして手柄を奪ったかもしれないと思ったのだろう。
が、幸いあの場には目撃者がいたためその疑いは晴れる。
彼らにも俺が何かしたように見えたものの、確証がある訳ではないため一応頷いてくれた。
仮に俺が魔物の職業を奪ったことが立証されたら罪になるのかどうかはよく分からないが。
「そうですか。しかし公爵家の方々はどこへ行ってしまったのでしょうか?」
「任務に失敗した以上懲罰を恐れて逃亡したのでは?」
逃亡したというよりは俺が脅した訳だが。
リオナに関しては本当に謎だ。
「分かりました。とはいえ事が事なので少し調査させていただきます」
ドラゴンからの戦利品はかなり額が大きいのでギルドとしてはそういう対応になるのだろう。調べたところで今話した以上の事実が出てくることはないだろうが。
こうして俺たちはとりあえず帰ろうとしたときだった。
「アルスさん、この間の件だが、少し進展があった」
そう言って話しかけてきたのは、エートランド王国の状況について調べるよう頼んだ冒険者だった。
「本当か!?」
「ああ」
そう言って彼は状況を話し始める。
「そもそもエートランド王国の国王はそれにふさわしい職業を持っていなかった。王位を狙う貴族は多数いたが、最初は彼らが互いにけん制し合っていたので表向きは平和だった。というのも貴族たちもいきなり王位を簒奪するのは難しい上に王子がいなかったから、長女であるティアレッタ殿下と跡継ぎを結婚させることで王位を乗っ取ろうとしたわけだ。だからティアレッタ殿下がある程度成長するまではあまり大きな動きを見せなかった」
「なるほど」
傍らのティアをちらっと見るが、すでにエートランド王国との縁は断ち切ったからか、特に反応は示さなかった。
「とはいえ、少し前にそのティアレッタ殿下が出奔し、行方不明となってしまった。貴族たちは自分たちが彼女を見つければ次の王位が手に入ると血眼になって探したが、今のところ誰も見つけることが出来ない。その間にロシュタール公という人物はまどろっこしくなったのか、王に混乱を治めるために『大公』という役職を新設して自分をそこにつけるよう迫った」
「大公?」
聞き慣れない言葉だ。
「まあ要は自分を独裁者にしろということだ」
「なるほど」
公爵の上だから「大公」ということだろうか。
国王になることが出来ないなら権力だけでも手に入れようということだろう。
「国王としてもそんな要求を受け入れればロシュタール公に全ての権力を握られるのは目に見えている。しかし王女が亡命し、貴族たちは王女探しに忙しい。その隙に王宮にはロシュタール公の一派が増えていた。そこで国王は奇策に出た。密かに王宮を脱出してエルム公という貴族の元に転がり込んだのだ。エルム公とて国王本人がいれば王女よりもその方がいい。そのため反ロシュタール公の盟主に名乗りをあげた。一方のロシュタール公は国王がいなくなった王宮を占拠して勝手に『大公』就任を宣言し、事実上の内戦が始まろうとしている」
「そんな……」
それを聞いてさすがにティアの表情が変わる。
こうなったのも自分がいなくなったのが原因の一端だと思っているのだろう。とはいえもしティアがいればロシュタール公か、別の貴族が強引にティアとの婚姻を決めていただけだろう。
その方が混乱が少ないのかはそうなってみないと分からない。
「今分かるのはそれぐらいだ」
「ありがとう」
そう言って俺は彼に報酬を渡した。
それを確認して俺たちはドラゴンの鱗や角、牙、そして内臓などをギルドに届ける。それを見たギルドの職員や冒険者たちは驚くとともに、一緒にいった魔物軍団の姿がないことに訝しむ。
「いやあ、本当は魔物たちとドラゴンが戦っていたんだが、途中で公爵の支配が解けてしまって、弱っていたドラゴンを運よく俺たちが倒したという訳だ」
自分たちの手柄にしなくてもリオナが去っていった以上、ドラゴンの戦利品は俺たちのものになるので俺はあえて謙遜して報告する。
「そんな、あれだけ従順だった魔物の支配が解けるなんて……本当ですか? 兵士の方も姿が見えないようですが」
ギルド職員も困惑する。
もしかすると俺たちが兵士やリオナを不意打ちして手柄を奪ったかもしれないと思ったのだろう。
が、幸いあの場には目撃者がいたためその疑いは晴れる。
彼らにも俺が何かしたように見えたものの、確証がある訳ではないため一応頷いてくれた。
仮に俺が魔物の職業を奪ったことが立証されたら罪になるのかどうかはよく分からないが。
「そうですか。しかし公爵家の方々はどこへ行ってしまったのでしょうか?」
「任務に失敗した以上懲罰を恐れて逃亡したのでは?」
逃亡したというよりは俺が脅した訳だが。
リオナに関しては本当に謎だ。
「分かりました。とはいえ事が事なので少し調査させていただきます」
ドラゴンからの戦利品はかなり額が大きいのでギルドとしてはそういう対応になるのだろう。調べたところで今話した以上の事実が出てくることはないだろうが。
こうして俺たちはとりあえず帰ろうとしたときだった。
「アルスさん、この間の件だが、少し進展があった」
そう言って話しかけてきたのは、エートランド王国の状況について調べるよう頼んだ冒険者だった。
「本当か!?」
「ああ」
そう言って彼は状況を話し始める。
「そもそもエートランド王国の国王はそれにふさわしい職業を持っていなかった。王位を狙う貴族は多数いたが、最初は彼らが互いにけん制し合っていたので表向きは平和だった。というのも貴族たちもいきなり王位を簒奪するのは難しい上に王子がいなかったから、長女であるティアレッタ殿下と跡継ぎを結婚させることで王位を乗っ取ろうとしたわけだ。だからティアレッタ殿下がある程度成長するまではあまり大きな動きを見せなかった」
「なるほど」
傍らのティアをちらっと見るが、すでにエートランド王国との縁は断ち切ったからか、特に反応は示さなかった。
「とはいえ、少し前にそのティアレッタ殿下が出奔し、行方不明となってしまった。貴族たちは自分たちが彼女を見つければ次の王位が手に入ると血眼になって探したが、今のところ誰も見つけることが出来ない。その間にロシュタール公という人物はまどろっこしくなったのか、王に混乱を治めるために『大公』という役職を新設して自分をそこにつけるよう迫った」
「大公?」
聞き慣れない言葉だ。
「まあ要は自分を独裁者にしろということだ」
「なるほど」
公爵の上だから「大公」ということだろうか。
国王になることが出来ないなら権力だけでも手に入れようということだろう。
「国王としてもそんな要求を受け入れればロシュタール公に全ての権力を握られるのは目に見えている。しかし王女が亡命し、貴族たちは王女探しに忙しい。その隙に王宮にはロシュタール公の一派が増えていた。そこで国王は奇策に出た。密かに王宮を脱出してエルム公という貴族の元に転がり込んだのだ。エルム公とて国王本人がいれば王女よりもその方がいい。そのため反ロシュタール公の盟主に名乗りをあげた。一方のロシュタール公は国王がいなくなった王宮を占拠して勝手に『大公』就任を宣言し、事実上の内戦が始まろうとしている」
「そんな……」
それを聞いてさすがにティアの表情が変わる。
こうなったのも自分がいなくなったのが原因の一端だと思っているのだろう。とはいえもしティアがいればロシュタール公か、別の貴族が強引にティアとの婚姻を決めていただけだろう。
その方が混乱が少ないのかはそうなってみないと分からない。
「今分かるのはそれぐらいだ」
「ありがとう」
そう言って俺は彼に報酬を渡した。
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