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妹からの手紙
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『親愛なるお姉様へ
結婚して我が家を出てから半年ほどになりますがお元気でしょうか。
早速ですが本題です。
以前よりお姉様のようなじめじめした暗い女性には、イケメンで社交的、才能あふれるアドルフ様は勿体なく私のような美しく明るい女性の方がふさわしいと常々思っておりました。
が、以前何度かお話したところお姉様が譲っていただけないようなので、意を決して直接お話したところアドルフ様にも私の方がいいとおっしゃっていただけました。
現在私はアドルフ様と正式な婚姻を準備しています。アドルフ様は誰にも言うなとおっしゃっていますが、さすがに申し訳ないのでお姉様にだけはこのことをお伝えしておきます。
親愛なる妹 レイチェル』
「ん? 一体どういうことでしょう?」
私は妹のレイチェルから届いた手紙を見て首をかしげました。
私、クララはハワード公爵家の長女に生まれ、同じく公爵家の長男であるアドルフ・ガイラーと半年ほど前に結婚していました。手紙にもある通り、アドルフはとても素敵な男性で、ガイラー家の方も皆優しかったので私は幸せな生活を送っています。
妹のレイチェルはそんな私に勝手に対抗心を燃やしていたらしく、結婚前は譲れだのなんだの言ってきましたが正式に結婚して家を出るとそれもなくなりました。
そして最近は何も便りがなかったのでもう私のことはどうでもよくなったのかと思いましたが、密かにこんなことを企んでいたようです。
現在私は結婚したため王都にあるガイラー公爵家の屋敷に移り住み、そこで結婚生活を送っています。アドルフはレイチェルを始め私以外の女性にも人気のある方で、優しく気遣いの出来る性格でしかも貴族としての能力も高く今は領地経営を学ぶために領地に戻っているところでした。
彼は誠実な人柄であり浮気など考えられませんし、ガイラー公爵家も厳格な家なのでもしアドルフがそんなことを考えようものならすぐに当主である父親に雷を落とされることでしょう。
私はアドルフが屋敷を出たときのことを思い出します。
「すまない、今日から一か月ほど僕は屋敷を離れることになる」
そう言ってアドルフは申し訳なさそうに私を見ます。すでにこの話は何度も聞いていましたが、それでもいざ当日を迎えると私は寂しくなってしまいます。実は昨夜はよく眠れず、今も実は寝不足でした。
「分かりました……これもガイラー家の当主となるためですから気にしていません」
「ああ。だが一つだけ分かって欲しいことがある。実は僕の方も一か月間そなたと離れるのは寂しいんだ」
真面目な顔で何を言うのかと思えば、彼は急にそんなことを口走ります。
それを聞いて私もほっとしました。アドルフは常ににこにこと笑みを絶やさず、マイナスの感情を表に出すことは滅多にありません。
そのため、私と離れ離れになることについてきちんと寂しく思ってくれているということを聞いて、彼も同じ気持ちなんだと安心します。
「良かった……あなたも私と同じ気持ちで」
「そうだな、いや、同じではない」
「え?」
「他の人がいる前では絶対言わないが、絶対に僕の方が寂しく思っているだろう。実はそのことを考えて今日は一睡も出来なかったんだ」
「ふふっ」
アドルフが大真面目にそんなことを言いだすので、私は思わず吹き出してしまいます。
「そうだったのですね。何か私まで心配してしまったことが急に恥ずかしく思えてきてしまいました」
「ありがとう。元気でね。絶対に手紙を書くよ」
「はい、アドルフさんも、勉強頑張ってきてください」
そう言って私たちはどちらからともなく相手の体を抱きしめ、出発のキスをしたのでした。
それ以来、二日か三日に一度はアドルフから手紙が届きますし、家の者に聞いた限り彼は領地のあちこちを回って様々なことを学んでいるとのことです。
レイチェルは今も王都のハワード家の屋敷にいるはずなのでそもそもアドルフと会うことも出来ないはずですが、これはどういうことでしょうか。
結婚して我が家を出てから半年ほどになりますがお元気でしょうか。
早速ですが本題です。
以前よりお姉様のようなじめじめした暗い女性には、イケメンで社交的、才能あふれるアドルフ様は勿体なく私のような美しく明るい女性の方がふさわしいと常々思っておりました。
が、以前何度かお話したところお姉様が譲っていただけないようなので、意を決して直接お話したところアドルフ様にも私の方がいいとおっしゃっていただけました。
現在私はアドルフ様と正式な婚姻を準備しています。アドルフ様は誰にも言うなとおっしゃっていますが、さすがに申し訳ないのでお姉様にだけはこのことをお伝えしておきます。
親愛なる妹 レイチェル』
「ん? 一体どういうことでしょう?」
私は妹のレイチェルから届いた手紙を見て首をかしげました。
私、クララはハワード公爵家の長女に生まれ、同じく公爵家の長男であるアドルフ・ガイラーと半年ほど前に結婚していました。手紙にもある通り、アドルフはとても素敵な男性で、ガイラー家の方も皆優しかったので私は幸せな生活を送っています。
妹のレイチェルはそんな私に勝手に対抗心を燃やしていたらしく、結婚前は譲れだのなんだの言ってきましたが正式に結婚して家を出るとそれもなくなりました。
そして最近は何も便りがなかったのでもう私のことはどうでもよくなったのかと思いましたが、密かにこんなことを企んでいたようです。
現在私は結婚したため王都にあるガイラー公爵家の屋敷に移り住み、そこで結婚生活を送っています。アドルフはレイチェルを始め私以外の女性にも人気のある方で、優しく気遣いの出来る性格でしかも貴族としての能力も高く今は領地経営を学ぶために領地に戻っているところでした。
彼は誠実な人柄であり浮気など考えられませんし、ガイラー公爵家も厳格な家なのでもしアドルフがそんなことを考えようものならすぐに当主である父親に雷を落とされることでしょう。
私はアドルフが屋敷を出たときのことを思い出します。
「すまない、今日から一か月ほど僕は屋敷を離れることになる」
そう言ってアドルフは申し訳なさそうに私を見ます。すでにこの話は何度も聞いていましたが、それでもいざ当日を迎えると私は寂しくなってしまいます。実は昨夜はよく眠れず、今も実は寝不足でした。
「分かりました……これもガイラー家の当主となるためですから気にしていません」
「ああ。だが一つだけ分かって欲しいことがある。実は僕の方も一か月間そなたと離れるのは寂しいんだ」
真面目な顔で何を言うのかと思えば、彼は急にそんなことを口走ります。
それを聞いて私もほっとしました。アドルフは常ににこにこと笑みを絶やさず、マイナスの感情を表に出すことは滅多にありません。
そのため、私と離れ離れになることについてきちんと寂しく思ってくれているということを聞いて、彼も同じ気持ちなんだと安心します。
「良かった……あなたも私と同じ気持ちで」
「そうだな、いや、同じではない」
「え?」
「他の人がいる前では絶対言わないが、絶対に僕の方が寂しく思っているだろう。実はそのことを考えて今日は一睡も出来なかったんだ」
「ふふっ」
アドルフが大真面目にそんなことを言いだすので、私は思わず吹き出してしまいます。
「そうだったのですね。何か私まで心配してしまったことが急に恥ずかしく思えてきてしまいました」
「ありがとう。元気でね。絶対に手紙を書くよ」
「はい、アドルフさんも、勉強頑張ってきてください」
そう言って私たちはどちらからともなく相手の体を抱きしめ、出発のキスをしたのでした。
それ以来、二日か三日に一度はアドルフから手紙が届きますし、家の者に聞いた限り彼は領地のあちこちを回って様々なことを学んでいるとのことです。
レイチェルは今も王都のハワード家の屋敷にいるはずなのでそもそもアドルフと会うことも出来ないはずですが、これはどういうことでしょうか。
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