妹が行く先々で偉そうな態度をとるけど、それ大顰蹙ですよ

今川幸乃

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勝手に期待するシェリル

「これがどういうことだか分かりますか?」

 父上との話が終わって部屋を出ると、シェリルは勝ち誇ったように私に話しかけてくる。
 が、私には彼女の言いたいことが分からない。大人気のアーノルドにパーティーに誘われて嬉しいということだろうか。

「どういうことって……どういうこと?」
「普通ならパーティーには姉妹一緒に行くとしても、縁談の話については長女であるお姉様にだけ言えば済む話です」
「それは先方が……」
「ではなぜアーノルド様は私たちのどちらかから相手を選ぶと言ってきたと思います?」

 そもそもアーノルドがそれを言ってきた訳ではないし、第一さっきの父上の言い方だと他家のご令嬢が選ばれる可能性すらあったように思うけど。
 が、そんなことには構わずシェリルは続ける。

「それは本当はお姉様よりも私の方が婚約者にふさわしいと思ったからですわ。ただ、それを露骨に言えば角が立つから、実際に見て選ぶと言葉を濁したのですわ」

 シェリルは得意げに言った。
 確かに普通は長女から縁談が進むものなので、「妹の方をください」と言えば角が立ってしまう。そこで一応両方と会って選ぶ……そういう体にした、と彼女は言いたいのだろうか。
 とはいえ縁談の慣例を無視してまでシェリルを選ぶなんてことがあるとは思えない。

「いや、そんな……」
「お姉様は外でも公爵家の令嬢として自覚のない振る舞いが多く、侮られているのでしょう。それでより威厳のある私が選ばれたということに違いありませんわ」
「そ、そんなこと」

 もしかしてシェリルのあの傍若無人な振る舞いの方が世間の評判がいいということだろうか。
 にわかには信じられないが、思い返せば貴族の中にはシェリルのように身分が低い者を見下してかかる人も多い。
 さすがに評判のよいアーノルドはそうではないだろう、と思いつつも優秀であることは必ずしも人柄がいいということではない。

 むしろ有能な人物ほど他人に厳しいということはままあることだ。

「シェリルはアーノルドがどんな性格か知っている?」
「もちろんです、有名な方ですから。アーノルド様は厳格な方で、普段は温和な振る舞いをしていても、ひとたび間違ったことをしている者を目にすれば火のように厳格な態度を示すと評判です。そんなことも知らなかったんですか?」
「……」

 シェリルの言葉に私は黙ってしまう。
 もしかしてシェリルの態度を父上や母上も時々たしなめるものの、本気で怒っているのを見たことはない。ということは私よりも彼女の方が貴族令嬢として正しい振る舞いをしているということなのだろうか。

 得意げなシェリルの態度に私は縁談よりも自分が間違っているのではないかと不安になってしまうのだった。

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