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アーノルドとの初対面
屋敷の中もアーノルドの招待を受けた貴族たちでごった返しており、廊下を歩くのも困難だった。それでも私たちは家柄がいいから道を歩けば前を空けてくれる方は多いが。
歩いていくと、広間の方でアーノルドが他家の客に挨拶しているのが見える。
遠目に見てもアーノルドの立ち居振る舞いは美しく、私と同じように遠目から彼に注目している人は周囲にたくさんいた。
今も彼に挨拶している令嬢は軽く頬を赤く染めている。
それでもアーノルドは特に浮かれることも気安くなることもなく、マナー通りに挨拶しては次の相手の元へ向かう。
「やっぱりアーノルド様は美しい方ですわ」
隣にいるシェリルもうっとりとした目でアーノルドを見つめている。
が、その時だった。
「きゃっ」
不意に悲鳴が聞こえたかと思うと、他家のメイドがよろめいてシェリルにぶつかる。
「きゃあっ!?」
突然の衝撃にシェリルは思わずよろめいてその場に尻餅をつく。
それを見てすぐにぶつかったメイドは平謝りした。
「すみません、すみません!」
「……」
が、シェリルはその場で無様に転ばされたのがよほど不服だったのか、そのメイドをギロリと睨みつける。
それを見て私は嫌な予感がした。この感じは普段よりもとりわけ怒っている時の感じだ。店に行って商品がないだけであれほど怒るのにぶつかってこられたら並の怒りでは済まないだろう。
「ちっ、あなたどこの家の者?」
「く、クローゼ家です、本当にすみません」
メイドもシェリルの怒りを察したのか、声を震わせている。
「クローゼ家? ああ、貧乏貴族だと思ったけど使用人の教育もまともに出来ないなんて」
「い、いえ、これはひとえに私の不始末です、本当に申し訳ありません!」
「自分の不始末って言うけど、もし私が傷を負ったりこのドレスが破れたりしたらあなた程度が一生働いても責任はとれません。分かります?」
「は、はい、申し訳ありません」
メイドは恐らく本心から申し訳ないという様子で何度も頭を下げるが、シェリルの言葉はヒートアップしていく。
「さっきから申し訳ありませんばかり……本当に反省してます?」
「は、はい」
「どうでしょう、口では何とも言えますからね」
しきりにメイドは頭を下げるが、シェリルの怒りは収まる気配がない。そもそもメイドの身分でシェリルの言い訳など出来る訳はないから謝ることしか出来ないし、仮に謝る以外のことをしたとしてもシェリルは怒ると思うけど。
私は嫌な役回りだ、と思いつつも止めに入る。
「あの、さすがにその辺で……」
「お姉様は黙ってください! 無礼者にはきちんとそれを教えてあげないと侮られたままになってしまいます!」
「でも、今は他家のパーティーだから」
「そういう問題ではありません! むしろ他家だからこそ猶更堂々とした振る舞いが求められるのです!」
「本当に申し訳ありません」
「一体何があった?」
そこへ騒ぎを聞きつけてやってきたのはアーノルドだった。
私は嫌な場面を見られてしまった、と思われるがシェリルは嬉しそうにする。
「これはアーノルド様! ご機嫌よう!」
「おや、シェリル嬢か、ご機嫌よう。何か騒ぎがあったようだが?」
シェリルの隣で私はまずいところを選ばれてしまった、と内心頭を抱えるのだった。
歩いていくと、広間の方でアーノルドが他家の客に挨拶しているのが見える。
遠目に見てもアーノルドの立ち居振る舞いは美しく、私と同じように遠目から彼に注目している人は周囲にたくさんいた。
今も彼に挨拶している令嬢は軽く頬を赤く染めている。
それでもアーノルドは特に浮かれることも気安くなることもなく、マナー通りに挨拶しては次の相手の元へ向かう。
「やっぱりアーノルド様は美しい方ですわ」
隣にいるシェリルもうっとりとした目でアーノルドを見つめている。
が、その時だった。
「きゃっ」
不意に悲鳴が聞こえたかと思うと、他家のメイドがよろめいてシェリルにぶつかる。
「きゃあっ!?」
突然の衝撃にシェリルは思わずよろめいてその場に尻餅をつく。
それを見てすぐにぶつかったメイドは平謝りした。
「すみません、すみません!」
「……」
が、シェリルはその場で無様に転ばされたのがよほど不服だったのか、そのメイドをギロリと睨みつける。
それを見て私は嫌な予感がした。この感じは普段よりもとりわけ怒っている時の感じだ。店に行って商品がないだけであれほど怒るのにぶつかってこられたら並の怒りでは済まないだろう。
「ちっ、あなたどこの家の者?」
「く、クローゼ家です、本当にすみません」
メイドもシェリルの怒りを察したのか、声を震わせている。
「クローゼ家? ああ、貧乏貴族だと思ったけど使用人の教育もまともに出来ないなんて」
「い、いえ、これはひとえに私の不始末です、本当に申し訳ありません!」
「自分の不始末って言うけど、もし私が傷を負ったりこのドレスが破れたりしたらあなた程度が一生働いても責任はとれません。分かります?」
「は、はい、申し訳ありません」
メイドは恐らく本心から申し訳ないという様子で何度も頭を下げるが、シェリルの言葉はヒートアップしていく。
「さっきから申し訳ありませんばかり……本当に反省してます?」
「は、はい」
「どうでしょう、口では何とも言えますからね」
しきりにメイドは頭を下げるが、シェリルの怒りは収まる気配がない。そもそもメイドの身分でシェリルの言い訳など出来る訳はないから謝ることしか出来ないし、仮に謝る以外のことをしたとしてもシェリルは怒ると思うけど。
私は嫌な役回りだ、と思いつつも止めに入る。
「あの、さすがにその辺で……」
「お姉様は黙ってください! 無礼者にはきちんとそれを教えてあげないと侮られたままになってしまいます!」
「でも、今は他家のパーティーだから」
「そういう問題ではありません! むしろ他家だからこそ猶更堂々とした振る舞いが求められるのです!」
「本当に申し訳ありません」
「一体何があった?」
そこへ騒ぎを聞きつけてやってきたのはアーノルドだった。
私は嫌な場面を見られてしまった、と思われるがシェリルは嬉しそうにする。
「これはアーノルド様! ご機嫌よう!」
「おや、シェリル嬢か、ご機嫌よう。何か騒ぎがあったようだが?」
シェリルの隣で私はまずいところを選ばれてしまった、と内心頭を抱えるのだった。
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