妹が行く先々で偉そうな態度をとるけど、それ大顰蹙ですよ

今川幸乃

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アーノルドの反応

 騒ぎを聞きつけてやってきたアーノルドの姿を見て私にはさっと緊張が走る。
 彼の心証を良くしなければならないはずが、こんな場面を見られてしまった。
 一方のシェリルはアーノルドに対して自信満々で挨拶する。

「いえ、大したことはありませんわ。こちらのメイドが粗相をしたので叱りつけておりましたの」
「ちょっとシェリル」

 私は小声で彼女をたしなめ、袖を引く。いくら何でもアーノルドの前でまでその態度を貫くのはまずい。

「初めましてアーノルド殿下、うちの妹がお騒がせしてすみません」
「お姉様は引っ込んでいてください!」

 が、そんな私をシェリルは容赦なく怒鳴りつける。
 それを見てアーノルドが尋ねた。

「シェリルよ、いたく怒っているようだが彼女は一体どんな粗相をしたのか?」
「それが、この私にぶつかって転ばせてきましたの。メイドの分際で公爵令嬢の私にぶつかるなど言語道断ですわ」
「それで、彼女は謝らなかったのか?」
「いえ、謝りましたけど、それで済む問題ではありませんもの」

 シェリルが自信満々に言うと、アーノルドは今度は私の方を見る。

「彼女が言っていることは間違いないのか?」
「そうですが……すみません、せっかくのパーティーなのにお騒がせしてしまって」
「ちょっと、何で謝るんですの!?」
「そうか」

 それを聞いてアーノルドが溜め息をつく。
 そして先ほどまでとは打って変わった冷たい声で言った。

「エインズ公爵家自慢の娘という噂もあっただけにすっかり幻滅してしまったよ」
「ほら、お姉様が余計な口を挟むから」
「いや、ラーナではなく君だよ、シェリル」
「え?」

 シェリルはまさか自分に矛先が向くとは思ってもみなかったようで、凍り付く。そんな彼女に対してアーノルドは険しい表情で言葉を続ける。

「確かに君は公爵令嬢で、それにぶつかってくるのは不注意かもしれない。しかし他家のメイドが不注意なのをパーティーの場で延々と怒り続けるのは常識知らずとは思わないか?」
「そ、それは……」

 先ほどまでの威勢はどこへやら、憧れのアーノルドに詰め寄られてシェリルは完全に固まってしまっている。

「そもそも君は公爵令嬢だと言うが、公爵令嬢というのは所詮公爵家自体の名声があるからすごい存在なんだ。それなのに君が自分の怒りで公爵家の名声を落とすというのは本末転倒じゃないか?」
「で、ですが、これも公爵家の名声を保つため……」

 シェリルの声はどんどんか細くなっていく。

「そうか、君にとっては他家のパーティーの真ん中で大声を出して他人を罵ることが名声を保つ行為なのか?」
「そ、それは……」

 それは違う、と言おうとしてシェリルは周囲を見渡す。
 そこには遠巻きにしてシェリルを見ている他家の方々の視線があった。

「そういうことがやりたいなら自分の屋敷の中で自分の使用人にすればいい。もっとも、公爵家に生まれたというだけで大した実績もないのにそんなことをしていればすぐに周囲に見放されると思うけどね」

 アーノルドの鋭い言葉にその場は水を打ったように静まり返るのだった。

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