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思わぬ褒め言葉
「私はアーノルド様の耳に入るようなことをしたような覚えはまるでないのですが」
「そうか。君は相手が格下の貴族や使用人、平民であっても分け隔てなく接すると評判だが」
「それは普通のことではないですか?」
改めて口にするといいことのようにも聞こえるけど、それは当然のことではないだろうか。改めて評判になるほどのこととも思えない。
「いや、そうでもない。シェリルは極端な例だが、誰だって自分がいい身分に生まれれば多かれ少なかれそれを当然と思ってしまうものだ。そしてそういう気持ちは自然と態度に出てしまう」
「アーノルド様はそういう話は聞きませんが」
私の言葉に彼は少し苦笑した。
「それは、僕は評判がいいからだ。自分が尊敬しているとか憧れているとか、上に見ている人物であればその人物が多少尊大な行動をしても当然と思ってしまうものだ」
「……なるほど?」
とはいえいまいち彼の言うことはぴんとこない。
他人に対して尊大な態度をとらない人物というのは何人もいると思うのだが。
「さっき僕がシェリルを叱ったのだって、僕が見ず知らずの他人であれば多少尊大に見えてしまったのではないか?」
「言われてみれば……」
それを聞いて私は少しアーノルドの言いたいことがあった。
確かに、もしアーノルドではない全く関係ない人物がいきなりあそこまで言ってきたら私も多少疑問を覚えたのかもしれない。もちろんアーノルドはこの屋敷の主だからというのもあるが、アーノルドが言っているのだから正しいことだ、という気持ちはあったと思う。
シェリルだってアーノルドに言われたからあそこまで消沈していたのであって、別の男に言われていれば私の時のように言い返していたかもしれない。
「それはさておき、貴族の家に生まれれば商人は自分たちに物を売って当然だし、むしろ買ってやってることを感謝して欲しい、という気持ちになることも多い。そして格下の貴族であれば自分たちを敬って当然だ、と思ってしまうだろう」
「なるほど」
言われてみればそうかもしれない。それを態度に出すか出さないかというだけで、普段はまともな性格だと思っている友達にも内心ではそう思っている人はいるだろう。
そして自分のことを思い返してみると、あまりそういう風には思ったことがないような気がする。
ただ、私が何でそういう風に思わないのかと言えば、シェリルの存在が大きいような気がする。横にシェリルがいたからこそ、余計に自分の見え方というものを考えるようになったのだろう。
「そう、君にとっては当然のことかもしれないが、そういう考え方は実はすごいことなんだ」
「そうだったのですね……そう言えば、このパーティーはたくさんの方々と話される目的だったとのことですが、私たちとずっと話していて大丈夫でしょうか?」
「それもそうだな、気遣わせてしまってすまない」
「いえ、こちらこそシェリルが申し訳ありませんでした」
こうしてアーノルドはひとまず私の前を離れていくのだった。
「そうか。君は相手が格下の貴族や使用人、平民であっても分け隔てなく接すると評判だが」
「それは普通のことではないですか?」
改めて口にするといいことのようにも聞こえるけど、それは当然のことではないだろうか。改めて評判になるほどのこととも思えない。
「いや、そうでもない。シェリルは極端な例だが、誰だって自分がいい身分に生まれれば多かれ少なかれそれを当然と思ってしまうものだ。そしてそういう気持ちは自然と態度に出てしまう」
「アーノルド様はそういう話は聞きませんが」
私の言葉に彼は少し苦笑した。
「それは、僕は評判がいいからだ。自分が尊敬しているとか憧れているとか、上に見ている人物であればその人物が多少尊大な行動をしても当然と思ってしまうものだ」
「……なるほど?」
とはいえいまいち彼の言うことはぴんとこない。
他人に対して尊大な態度をとらない人物というのは何人もいると思うのだが。
「さっき僕がシェリルを叱ったのだって、僕が見ず知らずの他人であれば多少尊大に見えてしまったのではないか?」
「言われてみれば……」
それを聞いて私は少しアーノルドの言いたいことがあった。
確かに、もしアーノルドではない全く関係ない人物がいきなりあそこまで言ってきたら私も多少疑問を覚えたのかもしれない。もちろんアーノルドはこの屋敷の主だからというのもあるが、アーノルドが言っているのだから正しいことだ、という気持ちはあったと思う。
シェリルだってアーノルドに言われたからあそこまで消沈していたのであって、別の男に言われていれば私の時のように言い返していたかもしれない。
「それはさておき、貴族の家に生まれれば商人は自分たちに物を売って当然だし、むしろ買ってやってることを感謝して欲しい、という気持ちになることも多い。そして格下の貴族であれば自分たちを敬って当然だ、と思ってしまうだろう」
「なるほど」
言われてみればそうかもしれない。それを態度に出すか出さないかというだけで、普段はまともな性格だと思っている友達にも内心ではそう思っている人はいるだろう。
そして自分のことを思い返してみると、あまりそういう風には思ったことがないような気がする。
ただ、私が何でそういう風に思わないのかと言えば、シェリルの存在が大きいような気がする。横にシェリルがいたからこそ、余計に自分の見え方というものを考えるようになったのだろう。
「そう、君にとっては当然のことかもしれないが、そういう考え方は実はすごいことなんだ」
「そうだったのですね……そう言えば、このパーティーはたくさんの方々と話される目的だったとのことですが、私たちとずっと話していて大丈夫でしょうか?」
「それもそうだな、気遣わせてしまってすまない」
「いえ、こちらこそシェリルが申し訳ありませんでした」
こうしてアーノルドはひとまず私の前を離れていくのだった。
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