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Ⅱ
シルヴィアと闇の種子
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それからもエマによるシルヴィアへのいじめは継続的に続いた。
どうも彼女は常に誰かを標的にしていないと気が済まない性格のようで、レミリアという獲物を失った今、シルヴィアが完全にその代わりとなっていた。
とはいえあまり大っぴらにやるとレミリアの心証が良くないということを感じているのだろう、彼女の嫌がらせはより陰湿になっていった。
「嘘」
その日もシルヴィアが授業のために教科書を取り出そうと鞄を開けると、中は何かの動物のフンでまみれていた。しかも鞄を開けると臭いがあふれ出してしまうため、シルヴィアは慌てて閉め直す。
とはいえそんなことがあっても授業は普通に始まる。
教科書を取り出せないシルヴィアは仕方なく何もなしで授業を受ける。当然貸してくれる相手もいない。
「……それでは教科書のこの部分について説明してみてください、シルヴィアさん」
やがてシルヴィアは先生に当てられる。
「すみません、教科書を忘れたので答えられません」
「教科書を忘れるなんて気が緩んでいますよ。もっとまじめに授業に取り組んでください」
先生の言葉に、教室内から失笑が広がる。
特にエマやその一派は露骨にシルヴィアを見て嘲笑した。
それでも彼女は言い返すこともやり返すことも出来ない。
そしてこんな嫌がらせは毎日のように続いた。
何であんな奴なんかにこんなことをされなければいけないのか。どうにかしてまた力を手に入れ、すっかりクラスに溶け込んでいるレミリアや偉そうにいじめをしてくるエマを見返したい。
そう思ったシルヴィアは気が付くと再び例の裏路地に足を運ぶのだった。
一日目では再会出来なかったが、それでも彼女は毎日寮の門限いっぱいまで裏路地をふらふらした。
足を運び続けてから数日後、ようやく彼女の前に再び黒ローブの人影が現れる。
「可哀想なお嬢ちゃん、もう私には連絡しないよう言ったと思うけど」
「……もう一回私に力をください!」
シルヴィアは万感をこめて頼み込む。もはや彼女にとって今の状況を好転させるにはそれしかなかった。
が、謎の女レティシアの答えは少し意外なものだった。
「それはいいけどお嬢ちゃん、気づいている? つけられているけど」
「え?」
レティシアの指摘にシルヴィアは驚く。すぐに後ろを振り返ってみるが、残念ながら素人のシルヴィアには尾行者の気配は分からなかった。
「だから本当はもう会うつもりはなかったけど、あまりにしつこいから危険を覚悟で応じてしまったわ」
「それは……ありがとう?」
「このまま私があなたに何かを渡すと、すぐに見つかってしまう。それでもいい?」
「そんなこと、もうどうでもいい!」
すでに今の状況は最悪だし、レミリアから魔力を奪った件だってそのうち露見するかもしれない。
そんなシルヴィアの言葉にレティシアは苦笑する。
「ふうん、私はあなたのことずっと見ていたからその気持ちも分からなくはないけどね。それにこちらとしても新作を試してみたいし」
そう言ってレティシアは新しい小箱を取り出す。開くと、そこには禍々しい瘴気を放つ黒い種子のようなものが入っていた。
「これは……何?」
「いわゆるヤドリギみたいなもの。所有者に根を張り、宿主と一体化して育つ。代わりに溢れんばかりの闇の魔力を発してくれる。体に異常はあるかもしれないけど、これで望んだ力が手に入るわ」
「ありがとう」
そう言ってシルヴィアはためらいなく種子を指で掴むと、口の中に入れる。
「なかなか勇気があるじゃない」
「うっ」
種子を口に含んだ瞬間、身体の奥からむせ返るような瘴気が噴き出し、あまりの気持ち悪さにシルヴィアはその場にしゃがみこむ。さらに身体の奥から強烈な異物感が込み上げてくる。思わずその場に吐いてしまうが、吐いたものはどす黒く染まっていた。
それを見てシルヴィアは自分が口に入れたものがそういう類のものであることをはっきりと実感する。もちろん、だからといって後悔はなかったが。
「はい」
レティシアが渡してくれた水筒の水を飲むと、幾分か落ち着いて来る。お腹の中の何かが自分に馴染んでくるようだ。
「じゃあ、帰り道は気を付けてね」
「うん」
そう言ってシルヴィアはよろよろと帰路につくのだった。
その後ろ姿を見送りながらレティシアはため息をつく。
「あの子は闇の種子と相性は良さそうだけど、これではきっとすぐ捕まってしまいそうね。返り討ちにしてくれたら嬉しいけど、どうかしら。さて、これで所在がばれてしまった以上、私も面倒な犬たちの相手をする準備を始めないといけないわね」
そう言ってレティシアは裏路地の奥に姿を消した。
どうも彼女は常に誰かを標的にしていないと気が済まない性格のようで、レミリアという獲物を失った今、シルヴィアが完全にその代わりとなっていた。
とはいえあまり大っぴらにやるとレミリアの心証が良くないということを感じているのだろう、彼女の嫌がらせはより陰湿になっていった。
「嘘」
その日もシルヴィアが授業のために教科書を取り出そうと鞄を開けると、中は何かの動物のフンでまみれていた。しかも鞄を開けると臭いがあふれ出してしまうため、シルヴィアは慌てて閉め直す。
とはいえそんなことがあっても授業は普通に始まる。
教科書を取り出せないシルヴィアは仕方なく何もなしで授業を受ける。当然貸してくれる相手もいない。
「……それでは教科書のこの部分について説明してみてください、シルヴィアさん」
やがてシルヴィアは先生に当てられる。
「すみません、教科書を忘れたので答えられません」
「教科書を忘れるなんて気が緩んでいますよ。もっとまじめに授業に取り組んでください」
先生の言葉に、教室内から失笑が広がる。
特にエマやその一派は露骨にシルヴィアを見て嘲笑した。
それでも彼女は言い返すこともやり返すことも出来ない。
そしてこんな嫌がらせは毎日のように続いた。
何であんな奴なんかにこんなことをされなければいけないのか。どうにかしてまた力を手に入れ、すっかりクラスに溶け込んでいるレミリアや偉そうにいじめをしてくるエマを見返したい。
そう思ったシルヴィアは気が付くと再び例の裏路地に足を運ぶのだった。
一日目では再会出来なかったが、それでも彼女は毎日寮の門限いっぱいまで裏路地をふらふらした。
足を運び続けてから数日後、ようやく彼女の前に再び黒ローブの人影が現れる。
「可哀想なお嬢ちゃん、もう私には連絡しないよう言ったと思うけど」
「……もう一回私に力をください!」
シルヴィアは万感をこめて頼み込む。もはや彼女にとって今の状況を好転させるにはそれしかなかった。
が、謎の女レティシアの答えは少し意外なものだった。
「それはいいけどお嬢ちゃん、気づいている? つけられているけど」
「え?」
レティシアの指摘にシルヴィアは驚く。すぐに後ろを振り返ってみるが、残念ながら素人のシルヴィアには尾行者の気配は分からなかった。
「だから本当はもう会うつもりはなかったけど、あまりにしつこいから危険を覚悟で応じてしまったわ」
「それは……ありがとう?」
「このまま私があなたに何かを渡すと、すぐに見つかってしまう。それでもいい?」
「そんなこと、もうどうでもいい!」
すでに今の状況は最悪だし、レミリアから魔力を奪った件だってそのうち露見するかもしれない。
そんなシルヴィアの言葉にレティシアは苦笑する。
「ふうん、私はあなたのことずっと見ていたからその気持ちも分からなくはないけどね。それにこちらとしても新作を試してみたいし」
そう言ってレティシアは新しい小箱を取り出す。開くと、そこには禍々しい瘴気を放つ黒い種子のようなものが入っていた。
「これは……何?」
「いわゆるヤドリギみたいなもの。所有者に根を張り、宿主と一体化して育つ。代わりに溢れんばかりの闇の魔力を発してくれる。体に異常はあるかもしれないけど、これで望んだ力が手に入るわ」
「ありがとう」
そう言ってシルヴィアはためらいなく種子を指で掴むと、口の中に入れる。
「なかなか勇気があるじゃない」
「うっ」
種子を口に含んだ瞬間、身体の奥からむせ返るような瘴気が噴き出し、あまりの気持ち悪さにシルヴィアはその場にしゃがみこむ。さらに身体の奥から強烈な異物感が込み上げてくる。思わずその場に吐いてしまうが、吐いたものはどす黒く染まっていた。
それを見てシルヴィアは自分が口に入れたものがそういう類のものであることをはっきりと実感する。もちろん、だからといって後悔はなかったが。
「はい」
レティシアが渡してくれた水筒の水を飲むと、幾分か落ち着いて来る。お腹の中の何かが自分に馴染んでくるようだ。
「じゃあ、帰り道は気を付けてね」
「うん」
そう言ってシルヴィアはよろよろと帰路につくのだった。
その後ろ姿を見送りながらレティシアはため息をつく。
「あの子は闇の種子と相性は良さそうだけど、これではきっとすぐ捕まってしまいそうね。返り討ちにしてくれたら嬉しいけど、どうかしら。さて、これで所在がばれてしまった以上、私も面倒な犬たちの相手をする準備を始めないといけないわね」
そう言ってレティシアは裏路地の奥に姿を消した。
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