学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃

文字の大きさ
29 / 41

魔法を教える

しおりを挟む
 その日の昼休みのことである。

「あの、私に魔法を教えてくれない!?」

 そう言って頼んできたのはミラだった。ミラは神官見習いをしており、私の呪いを解くときはお世話になった。彼女は持っている魔力は多いのだが、授業ではその魔力をうまく魔法に出来ていないようであった。おそらく練習すればうまくなるだろう。

「もちろんいいよ」
「あの、レミリアさん」

 そこへもう一人私に声をかけてきた人がいる。例のにぎやか女子リンダだった。

「何?」
「私にも魔法を教えてくれないかな?」

 そう言って彼女は両手を合わせる。言われてみればリンダも先ほどの授業では教わった魔法を使うのがあまりうまくいっていなかった。ミラもリンダも魔法の実技の成績はクラスでかなり悪い方だろう。

 一年生の時はクラスの人間関係は最悪だったけど、二年生になった以上これからは楽しい学園生活を送りたい。そのためにはエマのように直接私を嫌がらせしてきた人以外にはわだかまりを捨てて接しようと思っていた。中にはこれまで私がいじめられていたせいで声をかけづらかったけど、本当は仲良くする気があった人もいるかもしれない。そう考えればこれは絶好の機会だ。

「うん、いいよ。じゃあ校庭にいこうか」
「ありがとう!」

 私が了承するとリンダは無邪気に喜ぶ。
 昼休みの校庭は主に球技に興じる男子で埋まっており、そんな彼らを横目で見ながら私たちは校庭の隅っこのあまり人がいないところに行く。

「じゃあまずはミラからね。とりあえず練習のために一番簡単な魔法を使うところを見せて。自分が一番使いやすい魔法でいいよ」
「わ、分かった……『ライト』」

 ミラは手をかざすと初歩的な魔法である、灯りをともす魔法を唱える。
 するとミラの手の上にぼむっという何かがはじけるような音とともに直径数十センチの大きな光の球が現れる。ある意味凄いのだが、ミラが動揺しているところを見ると意図せざる結果だったのだろう。

「今のってこんなに大きな玉を出そうと思った?」
「いや、ローソクの炎ぐらいのを出したかった」

 私の問いにミラは恥ずかしそうに答える。やはりミラは自分の魔力が多すぎてうまくコントロール出来ていないようだ。

「やっぱり授業だとどんどん進んでいって新しい魔法を覚えさせられるでしょ? だからどんどん新しい魔法を覚えないとっていう気持ちになっていくんだけど、ミラの場合はまず簡単な魔法をしっかり使えるようになっていくことが大事だと思う」
「なるほど」
「だからまずは自分が思った通りの灯りをともせるようになるまで『ライト』を練習してみようか」
「ありがとう! 『ライト』」

 早速ミラは『ライト』の練習を始める。偉そうに教えてはいるけど、これは私が一人で魔法の練習をしていたときにしていた基礎練習だ。
 剣術において派手な技よりも地道な体力づくりが必要なのと同じように、魔法においても基礎的な努力が大事なのだろうが、貴族の間ではなかなか顧みられることはない。学園でも、そういう地味な練習をすると生徒が嫌がるから先生もあまりしないのだろう。
 とはいえ、遠回りに見える地道な練習が案外上達の近道だったりする。

「じゃあ次はリンダも、何か使ってみて」
「うん……『ウォーター』」

 彼女が唱えると、指先から一滴の水が出現して彼女の水をつたう。こちらも初歩的な魔法だがミラの場合とは違い、リンダはそもそも魔法自体がうまく出来ていない上に、基礎的な魔力自体が少ない。運動で例えると、そもそも体力ない上に走り方のフォームも滅茶苦茶というところだろうか。
 とはいえ魔力が少ないことは多少の訓練でどうにかなるものでもない。とりあえず技術的なことをどうにかしようと、私は一年生の時の教科書を見せる。

「リンダは魔法を使うときの詠唱や意識を向けるところが少しずれてるかもしれない。もう一回最初から確認してみようか」
「うん」

 一年生の時の、しかも初めの方にやった内容を復習するというのは少し屈辱的であったがそれでもリンダは真面目に頷いた。

 その後私はミラが少しずつ上達しているのを確認しつつ、リンダに手取り足取り魔法の使い方を教える。
 そして昼休み終了五分前の予鈴が鳴った。

「じゃあ最後に二人とも今日の成果を見せてくれない?」
「うん、『ライト』」

 そう言ってミラが魔法を唱えると、しっかりローソク大の光球が指先に出現する。

「すごい、出来るようになってるね」
「ありがとう、レミリアさんの教え方が良かったからだよ」

 そう言ってミラは無邪気に喜んでくれる。それを聞いて私もほっとする。

「じゃあ次はリンダ、どう?」
「うん……『ウォーター』」

 リンダが唱えると、やはり指先から一滴の水が出現する。

「さ、さっきよりすごい水の量が増えてるよ」

 私はそう言って励ますが、リンダの顔は浮かない。
 その理由は私にも分かった。そもそも体力のない人は走り方をいくら整えてもそこまで爆発的に走るのが速くなる訳ではない。そもそも平民の中には一滴の水を出すことすら出来ない人も多いからそれを思えばリンダがだめだめという訳ではないのだが、貴族が集まる学園ではどうしても落ちこぼれという意識を持ってしまうのだろう。
 そんなリンダに、私はことさらに明るく声をかける。

「じゃあ今日は戻ろうか。また言ってくれればいつでも付き合うから」
「あ、ありがとう」

 こうして私たちは教室に戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

処理中です...