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Ⅰ
シルヴィアの凋落 Ⅱ
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翌日から私の生活は一変した。いや、ある意味元に戻っただけと言えばそうかもしれない。そして春休みに入り学園が休みだったのも幸いした。教室に生徒たちが集まれば絶対に私の話題は出てしまうだろう。
だから私は寮の自室に引きこもっていた。一昨日までならひっきりなしにご機嫌うかがいの生徒が来たのに今ではしーんと静まり返っている。
ただ、冷静に考えてみるとここまで不自然に短期間に私の魔力が上下したというのに誰もそのことを追及してこないというのは少しおかしな話だ。もしかして私のことなど端から疑っていて、私への話を聞くことなく調査を進めているのかもしれない、と思うがそれも今となってはどうでもいい。
やがてこんこんと遠慮がちにドアがノックされる。
「誰ですか?」
「私だけど。ちょっと来てくれない?」
そう言ったのは寮母さんの声だった。彼女であればダメとは言えない。
「分かりました」
私が鍵を開けると神妙な面持ちの寮母さんが待っている。私は嫌な予感に胸をざわつかせながら彼女についていった。
向かった先は寮母さんの部屋である。
椅子に座ると、彼女はため息をついて言う。
「昨日の試験の件、聞いたわ。先生たちから詳しいことは聞いてないけど、監督生の件はなかったことにさせて欲しいの」
予想していたこととはいえ、私はその言葉に落胆してしまう。所詮私は魔法がなければただの生徒なのだろうか。
そして落胆のあまり普段なら訊かないようなことを聞いてしまう。
「あの、寮母さんは私の素行や授業態度が良かったから私を監督生にしてくれたのではないですか?」
「何を言っているの? そんなの魔法の成績が良かったからに決まっているじゃない。ただ素行や授業態度がいってだけの子ならたくさんいるわ」
彼女の悪気がなさそうな言葉は酷く私を気を付けた。
私が努力して身に着けようとした魔法の力は身に着かず、邪まな手段に頼ってもだめだった。そして私に唯一残った外面の良さという特技も大したものではなかった。結局私は凡庸な少女に戻ってしまった訳だ。前科という重すぎる烙印を押されて。
「そうですね、分かりました」
寮母さんの部屋からの帰り道、私とすれ違いそうになったクラスの女子たちは気まずそうに道を避ける。そしてひそひそと何かを噂しておかしそうな笑い声をあげた。
内容は聞こえなかったが、どうせ私のことに違いない。
昨日まではレミリアをあざ笑っていた彼女たちの矛先は一斉に私に向いた。きっと彼女らは新しく監督生に指名された生徒に媚びへつらうに違いない。
部屋に戻ると、私の部屋には一人の男が立っていた。オルクだ。
彼とは顔を合わせたくないとは思っていたが、春休み中だし女子寮の中だということもあって私は油断してしまっていた。私は彼を見てさっと表情を強張らせてしまう。
「何でここに」
「許可をとって入れてもらったんだ。一応婚約者だからね」
そう言うオルクの声はぞっとするほど冷たかった。
「……何?」
「終業式の日のこと、ちゃんと説明してもらえないか?」
「何も説明することなんてない! 部屋に戻りたいからどいて」
が、オルクはドアの前で立ちふさがる。
「やっぱり君の魔力が急に増えたのは不正だったのか」
「……」
何を言っても無駄だと思った私は口を閉ざす。
が、それを見て彼はため息をついた。
「残念だよ、僕はレミリアの不正を憎んで婚約を破棄したというのに、本当に不正したのは君の方だったなんて」
何を適当なことを、本当は私の容姿を見て、ずっとレミリアを捨てて私に言い寄る機会を狙っていた癖に、と腹の中で彼を罵る。しかしもはや魔力を失ってしまった以上何を言っても負け犬の遠吠えにしかならない。そのため、私はこんな奴に対しても何も言うことが出来なかった。
「そうそう、婚約の件だけど、実家に勝手な婚約破棄は良くないと言われたからやっぱり考え直させてもらう」
「ふっ」
あまりにおかしすぎて私はついつい笑ってしまった。
この軽薄さでよくぞここまで生きてこられたものだ。今しがた婚約者だからといって女子寮に入ってきたくせに。結局その時々の都合でそう言っているだけではないか。
別にこいつとの婚約がなくなったことはどうでもいい。
しかしこんなやつに下に見られているという事実がひたすらに不愉快だった。
「それじゃ」
そう言ってオルクはその場を離れていく。
私はただただその場に立ち尽くすしかなかった。
とはいえ春休み中は部屋に引きこもっていたため特にそれ以上のことは起こらず、穏やかな日々が過ぎていった。二年生の一年が始まってから私は本当に地獄を見ることになる。
だから私は寮の自室に引きこもっていた。一昨日までならひっきりなしにご機嫌うかがいの生徒が来たのに今ではしーんと静まり返っている。
ただ、冷静に考えてみるとここまで不自然に短期間に私の魔力が上下したというのに誰もそのことを追及してこないというのは少しおかしな話だ。もしかして私のことなど端から疑っていて、私への話を聞くことなく調査を進めているのかもしれない、と思うがそれも今となってはどうでもいい。
やがてこんこんと遠慮がちにドアがノックされる。
「誰ですか?」
「私だけど。ちょっと来てくれない?」
そう言ったのは寮母さんの声だった。彼女であればダメとは言えない。
「分かりました」
私が鍵を開けると神妙な面持ちの寮母さんが待っている。私は嫌な予感に胸をざわつかせながら彼女についていった。
向かった先は寮母さんの部屋である。
椅子に座ると、彼女はため息をついて言う。
「昨日の試験の件、聞いたわ。先生たちから詳しいことは聞いてないけど、監督生の件はなかったことにさせて欲しいの」
予想していたこととはいえ、私はその言葉に落胆してしまう。所詮私は魔法がなければただの生徒なのだろうか。
そして落胆のあまり普段なら訊かないようなことを聞いてしまう。
「あの、寮母さんは私の素行や授業態度が良かったから私を監督生にしてくれたのではないですか?」
「何を言っているの? そんなの魔法の成績が良かったからに決まっているじゃない。ただ素行や授業態度がいってだけの子ならたくさんいるわ」
彼女の悪気がなさそうな言葉は酷く私を気を付けた。
私が努力して身に着けようとした魔法の力は身に着かず、邪まな手段に頼ってもだめだった。そして私に唯一残った外面の良さという特技も大したものではなかった。結局私は凡庸な少女に戻ってしまった訳だ。前科という重すぎる烙印を押されて。
「そうですね、分かりました」
寮母さんの部屋からの帰り道、私とすれ違いそうになったクラスの女子たちは気まずそうに道を避ける。そしてひそひそと何かを噂しておかしそうな笑い声をあげた。
内容は聞こえなかったが、どうせ私のことに違いない。
昨日まではレミリアをあざ笑っていた彼女たちの矛先は一斉に私に向いた。きっと彼女らは新しく監督生に指名された生徒に媚びへつらうに違いない。
部屋に戻ると、私の部屋には一人の男が立っていた。オルクだ。
彼とは顔を合わせたくないとは思っていたが、春休み中だし女子寮の中だということもあって私は油断してしまっていた。私は彼を見てさっと表情を強張らせてしまう。
「何でここに」
「許可をとって入れてもらったんだ。一応婚約者だからね」
そう言うオルクの声はぞっとするほど冷たかった。
「……何?」
「終業式の日のこと、ちゃんと説明してもらえないか?」
「何も説明することなんてない! 部屋に戻りたいからどいて」
が、オルクはドアの前で立ちふさがる。
「やっぱり君の魔力が急に増えたのは不正だったのか」
「……」
何を言っても無駄だと思った私は口を閉ざす。
が、それを見て彼はため息をついた。
「残念だよ、僕はレミリアの不正を憎んで婚約を破棄したというのに、本当に不正したのは君の方だったなんて」
何を適当なことを、本当は私の容姿を見て、ずっとレミリアを捨てて私に言い寄る機会を狙っていた癖に、と腹の中で彼を罵る。しかしもはや魔力を失ってしまった以上何を言っても負け犬の遠吠えにしかならない。そのため、私はこんな奴に対しても何も言うことが出来なかった。
「そうそう、婚約の件だけど、実家に勝手な婚約破棄は良くないと言われたからやっぱり考え直させてもらう」
「ふっ」
あまりにおかしすぎて私はついつい笑ってしまった。
この軽薄さでよくぞここまで生きてこられたものだ。今しがた婚約者だからといって女子寮に入ってきたくせに。結局その時々の都合でそう言っているだけではないか。
別にこいつとの婚約がなくなったことはどうでもいい。
しかしこんなやつに下に見られているという事実がひたすらに不愉快だった。
「それじゃ」
そう言ってオルクはその場を離れていく。
私はただただその場に立ち尽くすしかなかった。
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