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共同発表
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それから数日後のことです。
いつものように王国史の授業を受けていると、授業ももう終わるというときに先生が突然変なことを言いだしました。
「さて、ここまで我が国の歴史を学んできた訳だが、歴代の国王には偉大な方が数多くいたと思う。そこでこれから先生が決めたメンバーで王を一人選んで研究し、最後の授業で発表して欲しい」
先生の言葉に教室はざわめきます。
普通の授業よりは発表の方がいい、という人や面倒なことが増えた、という者も多そうです。
「きらびやかな面だけでなく、時代背景やその王のしたことでどのような影響があったか、栄光だけでなく負の側面まできちんと調べて発表するように。この発表は試験と同じ比重で評価する」
そう言って先生は詳しい決まりが記された資料を配ります。そこには発表の形式や時間、評価する項目などがびっしりと書かれてしました。
その紙を見て先ほどは何となく盛り上がっていた生徒も大変そうだ、とげんなりします。
もっとも、試験が苦手な生徒の中には配点が試験と同じと聞いて喜んでいる者もいますが。
「メンバーについてはこれまでの成績を加味して不公平にならないように決めておいた。配った資料の裏側に書いてあるから見ておくように。それでは」
そう言い残して先生は教室を出ていきました。
それを聞いて私は嫌な予感がしました。なぜなら私は王国史の成績はかなり良いからです。不公平にならないように、ということは成績が悪い相手がいるということでしょう。
そう思って裏側を見てみると、やはりそうでした。
私の班にアルバートがいるのはおそらく先生の配慮ですが、アルバートと一緒にマクシミリアンという男子の名前があるのはいいですが、セラフィナの名前も一緒にあったのです。
アルバートも成績はいい方で、マクシミリアンもそんなに悪くはなかったと思います。ということはセラフィナは相当悪いということです。元々期待はしていませんでしたが、他三人の成績と帳尻が合うほど悪いということは相当でしょう。
別に成績が悪くても真面目にやってくれるのであれば気になりませんが、成績が悪い上にグループの発表でいつものような態度をとられるときっとかなり腹が立つと思います。そしてその光景は容易に想像がつきました。
授業が終わると次が昼休みだったこともあり、生徒たちは自然と決められたグループで集まっています。
早速アルバートの元にセラフィナとマクシミリアンが集まっているので、私も三人の元に向かうことにしました。私たちが集まると、早速セラフィナが主にオリバーとマクシミリアンに向かってアピールしています。
「皆さん、よろしくお願いします。私は天然なので迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いしますね」
「もちろんだ。同じグループになったんだから助け合うのは当然だろう?」
オリバーはいつもの通り答えます。もはやこれぐらいでは何も思わなくなってきた自分が少し腹立たしいです。
それはさておき、もう一人のマクシミリアンという男子はあまり関わりがないのでどういう人物か気になります。
彼は中肉中背であまり目立つタイプではないですが、鍛えているのか体は引き締まっており、透き通るような瞳をしています。彼に見つめられれば全て見透かされてしまいそうな気がします。
そんなマクシミリアンはセラフィナを見て少しだけ考えた末、人あたりのいい笑みを浮かべて言いました。
「ああ、よろしく。ただ天然と言っても出来るだけのことは頑張ってくれ」
「は、はい」
セラフィナはぎこちなく笑いながら頷きますが、おそらくマクシミリアンの言葉に満足しなかったのでしょう、どこか不満そうです。
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
私が挨拶すると、マクシミリアンは私にも笑い返してくれました。
セラフィナと同じグループなのは嫌ですが、彼はもしかすると思ったよりもまともな人なのではないか、と思えてきます。私はそれを一縷の希望に頑張ることにしたのでした。
いつものように王国史の授業を受けていると、授業ももう終わるというときに先生が突然変なことを言いだしました。
「さて、ここまで我が国の歴史を学んできた訳だが、歴代の国王には偉大な方が数多くいたと思う。そこでこれから先生が決めたメンバーで王を一人選んで研究し、最後の授業で発表して欲しい」
先生の言葉に教室はざわめきます。
普通の授業よりは発表の方がいい、という人や面倒なことが増えた、という者も多そうです。
「きらびやかな面だけでなく、時代背景やその王のしたことでどのような影響があったか、栄光だけでなく負の側面まできちんと調べて発表するように。この発表は試験と同じ比重で評価する」
そう言って先生は詳しい決まりが記された資料を配ります。そこには発表の形式や時間、評価する項目などがびっしりと書かれてしました。
その紙を見て先ほどは何となく盛り上がっていた生徒も大変そうだ、とげんなりします。
もっとも、試験が苦手な生徒の中には配点が試験と同じと聞いて喜んでいる者もいますが。
「メンバーについてはこれまでの成績を加味して不公平にならないように決めておいた。配った資料の裏側に書いてあるから見ておくように。それでは」
そう言い残して先生は教室を出ていきました。
それを聞いて私は嫌な予感がしました。なぜなら私は王国史の成績はかなり良いからです。不公平にならないように、ということは成績が悪い相手がいるということでしょう。
そう思って裏側を見てみると、やはりそうでした。
私の班にアルバートがいるのはおそらく先生の配慮ですが、アルバートと一緒にマクシミリアンという男子の名前があるのはいいですが、セラフィナの名前も一緒にあったのです。
アルバートも成績はいい方で、マクシミリアンもそんなに悪くはなかったと思います。ということはセラフィナは相当悪いということです。元々期待はしていませんでしたが、他三人の成績と帳尻が合うほど悪いということは相当でしょう。
別に成績が悪くても真面目にやってくれるのであれば気になりませんが、成績が悪い上にグループの発表でいつものような態度をとられるときっとかなり腹が立つと思います。そしてその光景は容易に想像がつきました。
授業が終わると次が昼休みだったこともあり、生徒たちは自然と決められたグループで集まっています。
早速アルバートの元にセラフィナとマクシミリアンが集まっているので、私も三人の元に向かうことにしました。私たちが集まると、早速セラフィナが主にオリバーとマクシミリアンに向かってアピールしています。
「皆さん、よろしくお願いします。私は天然なので迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いしますね」
「もちろんだ。同じグループになったんだから助け合うのは当然だろう?」
オリバーはいつもの通り答えます。もはやこれぐらいでは何も思わなくなってきた自分が少し腹立たしいです。
それはさておき、もう一人のマクシミリアンという男子はあまり関わりがないのでどういう人物か気になります。
彼は中肉中背であまり目立つタイプではないですが、鍛えているのか体は引き締まっており、透き通るような瞳をしています。彼に見つめられれば全て見透かされてしまいそうな気がします。
そんなマクシミリアンはセラフィナを見て少しだけ考えた末、人あたりのいい笑みを浮かべて言いました。
「ああ、よろしく。ただ天然と言っても出来るだけのことは頑張ってくれ」
「は、はい」
セラフィナはぎこちなく笑いながら頷きますが、おそらくマクシミリアンの言葉に満足しなかったのでしょう、どこか不満そうです。
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
私が挨拶すると、マクシミリアンは私にも笑い返してくれました。
セラフィナと同じグループなのは嫌ですが、彼はもしかすると思ったよりもまともな人なのではないか、と思えてきます。私はそれを一縷の希望に頑張ることにしたのでした。
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