3 / 10
セラフィナと宿題
しおりを挟む
翌日のことです。
私はいつものようにアルバートと話していました。
「アルバートは昨日の王国史の宿題出来た?」
「ああ、少し調べるのが大変だったけどどうにか終わったよ」
「アルバートも大変だったんだ。私だけじゃなくて良かった」
そんな他愛のない話をしていると、突然少し離れたところから甘ったるい悲鳴が聞こえます。
「きゃあ、どうしよう、昨日の王国史の授業、宿題あったの!?」
「ははは、宿題に気づかないなんてセラフィナは天然だなあ」
悲鳴(?)の主はいつものようにセラフィナです。
そんなセラフィナを近くにいる男子たちはからかいつつも好意的な言葉をかけています。
「えぇ、そんなこと言うなんてひどいよう、どうしよう、今からでも宿題終わるかな」
「え~、昨日の宿題難しかったからどうだろう。ていうか俺も自信ないし」
そんな会話を聞いていると不意に目の前のアルバートが立ち上がります。
「悪い、ちょっとセラフィナに宿題を教えてくる」
「え?」
急すぎる成り行きに私は困惑します。
が、アルバートは真剣な表情で言いました。
「困っているクラスメイトがいるんだから助けてあげないと」
「でも、それってアルバートがする必要はある?」
そもそも天然でも天然じゃなくても宿題を忘れて誰かに見せてもらうこと自体好ましいことだとは思えません。
もっとも、それはセラフィナ以外にもやっている人はいるでしょうからあまりきちんと注意するつもりはありませんが。
せめて婚約者であるアルバートにはあまりそういうことはしないで欲しいところです。
「彼女はちょっと天然なところがあるから僕のようなしっかりした男子が助けてあげないと」
「……」
そう言われるとどのように言い返しても私が嫉妬深く見えてしまいます。天然という言葉は免罪符か何かなのでしょうか。
そのため何と言い返そうか考えていると、アルバートは私の表情を見て溜め息をつきました。
「何だその顔は。そんなに僕がセラフィナを助けるのが不満か?」
「不満と言う訳ではないですが……」
「ならいいだろう? ソフィアももう少し他人に優しくした方がいいよ」
「すみません」
謝りはしたものの、これは他人に優しいとか優しくないとかそういう問題なのでしょうか。
とはいえ、やはりうまく言い返す言葉がありません。そもそも私も元々はアルバートがセラフィナを助けるのをそこまで不満ではありませんでした。
ただ、セラフィナ以外の女子は比較的しっかりした女子が多いので必然的に彼はセラフィナばかり助けるような形になってしまっているのです。そしてセラフィナの方もアルバートのそういう助けを期待しているように見えてしまいます。
そのため少しずつ私も気になるようになってしまいました。
また、クラスの男子の中でアルバートが一番優しい性格のせいで、必然的にこの二人の組み合わせが多くなってしまいます。
まさか婚約者が優しくて困る日が来るなんて、と私は内心嘆息しました。
「セラフィナ、また宿題を忘れたんだって?」
「アルバート!? そうなの、私またドジしちゃった」
「それなら僕が教えてあげるよ」
「ありがとう! 本当にアルバートはいつも優しいね!」
二人の方を見るとそんな会話が聞こえてきて、私は微妙な気持ちになります。
アルバートもセラフィナもにこにこした表情で、教科書とノートを広げています。
「でもアルバートは婚約者もいるのにいつもいつも私のことばかり助けてくれてありがとう」
「ソフィアのことか? 彼女はしっかりしているから大丈夫だよ。それに、もしセラフィナを助けることをあれこれ言ってくるようなら僕がガツンと言っておくよ」
「まあ、それは嬉しいわ。でも、私のために婚約者と仲違いなんてことはやめてよね」
「もちろんだ。さあ、勉強を始めようか」
それ以上会話を聞いていると気分が悪くなりそうだったので、私は席を立ったのでした。二人のやりとりを見ていると、セラフィナは形だけ遠慮している振りをして、本当はそう言った方が自分の好感度が上がると分かってやっているのではないかと思えてならないのでした。
私はいつものようにアルバートと話していました。
「アルバートは昨日の王国史の宿題出来た?」
「ああ、少し調べるのが大変だったけどどうにか終わったよ」
「アルバートも大変だったんだ。私だけじゃなくて良かった」
そんな他愛のない話をしていると、突然少し離れたところから甘ったるい悲鳴が聞こえます。
「きゃあ、どうしよう、昨日の王国史の授業、宿題あったの!?」
「ははは、宿題に気づかないなんてセラフィナは天然だなあ」
悲鳴(?)の主はいつものようにセラフィナです。
そんなセラフィナを近くにいる男子たちはからかいつつも好意的な言葉をかけています。
「えぇ、そんなこと言うなんてひどいよう、どうしよう、今からでも宿題終わるかな」
「え~、昨日の宿題難しかったからどうだろう。ていうか俺も自信ないし」
そんな会話を聞いていると不意に目の前のアルバートが立ち上がります。
「悪い、ちょっとセラフィナに宿題を教えてくる」
「え?」
急すぎる成り行きに私は困惑します。
が、アルバートは真剣な表情で言いました。
「困っているクラスメイトがいるんだから助けてあげないと」
「でも、それってアルバートがする必要はある?」
そもそも天然でも天然じゃなくても宿題を忘れて誰かに見せてもらうこと自体好ましいことだとは思えません。
もっとも、それはセラフィナ以外にもやっている人はいるでしょうからあまりきちんと注意するつもりはありませんが。
せめて婚約者であるアルバートにはあまりそういうことはしないで欲しいところです。
「彼女はちょっと天然なところがあるから僕のようなしっかりした男子が助けてあげないと」
「……」
そう言われるとどのように言い返しても私が嫉妬深く見えてしまいます。天然という言葉は免罪符か何かなのでしょうか。
そのため何と言い返そうか考えていると、アルバートは私の表情を見て溜め息をつきました。
「何だその顔は。そんなに僕がセラフィナを助けるのが不満か?」
「不満と言う訳ではないですが……」
「ならいいだろう? ソフィアももう少し他人に優しくした方がいいよ」
「すみません」
謝りはしたものの、これは他人に優しいとか優しくないとかそういう問題なのでしょうか。
とはいえ、やはりうまく言い返す言葉がありません。そもそも私も元々はアルバートがセラフィナを助けるのをそこまで不満ではありませんでした。
ただ、セラフィナ以外の女子は比較的しっかりした女子が多いので必然的に彼はセラフィナばかり助けるような形になってしまっているのです。そしてセラフィナの方もアルバートのそういう助けを期待しているように見えてしまいます。
そのため少しずつ私も気になるようになってしまいました。
また、クラスの男子の中でアルバートが一番優しい性格のせいで、必然的にこの二人の組み合わせが多くなってしまいます。
まさか婚約者が優しくて困る日が来るなんて、と私は内心嘆息しました。
「セラフィナ、また宿題を忘れたんだって?」
「アルバート!? そうなの、私またドジしちゃった」
「それなら僕が教えてあげるよ」
「ありがとう! 本当にアルバートはいつも優しいね!」
二人の方を見るとそんな会話が聞こえてきて、私は微妙な気持ちになります。
アルバートもセラフィナもにこにこした表情で、教科書とノートを広げています。
「でもアルバートは婚約者もいるのにいつもいつも私のことばかり助けてくれてありがとう」
「ソフィアのことか? 彼女はしっかりしているから大丈夫だよ。それに、もしセラフィナを助けることをあれこれ言ってくるようなら僕がガツンと言っておくよ」
「まあ、それは嬉しいわ。でも、私のために婚約者と仲違いなんてことはやめてよね」
「もちろんだ。さあ、勉強を始めようか」
それ以上会話を聞いていると気分が悪くなりそうだったので、私は席を立ったのでした。二人のやりとりを見ていると、セラフィナは形だけ遠慮している振りをして、本当はそう言った方が自分の好感度が上がると分かってやっているのではないかと思えてならないのでした。
460
あなたにおすすめの小説
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
奪われたものは、全て要らないものでした
編端みどり
恋愛
あげなさい、お姉様でしょ。その合言葉で、わたくしのものは妹に奪われます。ドレスやアクセサリーだけでなく、夫も妹に奪われました。
だけど、妹が奪ったものはわたくしにとっては全て要らないものなんです。
モラハラ夫と離婚して、行き倒れかけたフローライトは、遠くの国で幸せを掴みます。
見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……
物語は続かない
mios
恋愛
「ローズ・マリーゴールド公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!」
懐かしい名前を聞きました。彼が叫ぶその名を持つ人物は既に別の名前を持っています。
役者が欠けているのに、物語が続くなんてことがあるのでしょうか?
大恋愛の後始末
mios
恋愛
シェイラの婚約者マートンの姉、ジュリエットは、恋多き女として有名だった。そして、恥知らずだった。悲願の末に射止めた大公子息ライアンとの婚姻式の当日に庭師と駆け落ちするぐらいには。
彼女は恋愛至上主義で、自由をこよなく愛していた。由緒正しき大公家にはそぐわないことは百も承知だったのに、周りはそのことを理解できていなかった。
マートンとシェイラの婚約は解消となった。大公家に莫大な慰謝料を支払わなければならず、爵位を返上しても支払えるかという程だったからだ。
お姉ちゃん今回も我慢してくれる?
あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」
「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」
「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」
私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。
代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。
お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。
ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい?
お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる