7 / 10
セラフィナの怠慢
しおりを挟む
「……と言う訳で私の発表は終わります」
発表が終わるころにはセラフィナの声はすっかり震えていました。
彼女の発表は教科書に書いてあることをそのままなぞったようなもので、発表と呼べるほどのものではありません。私やマクシミリアンはもちろんのこと、アルバートですらきっとそう思ったに違いありません。
そしてそんな空気はセラフィナにも伝わったのでしょう、彼女は発表中から少しずつ表情が青くなっていくのが私たちにも分かりました。
「一体何から言えばいいのか」
「まあまあ落ち着こう」
マクシミリアンがしゃべろうとすると、不穏な気配を察したアルバートが遮る。
「ほら、セラフィナはこういうの苦手だし発表も初めてだろう? だから仕方ないこともある」
「アルバート」
私が口を開こうとした時でした。
そんな私を制してマクシミリアンが険しい口調で言います。
「いや、僕も言いたいことがあったんだ。アルバート、この前話したときからそうだったが、君はセラフィナをかばっているように見えて、本当はただ甘やかしているだけだ。それは本人のためにやっていても実は本人のためになっていないといい加減自覚すべきだ」
「な、何だと?」
マクシミリアンの言葉にアルバートは眉を吊り上げますが、すぐに反論の言葉は出てこずに口をパクパクさせています。
そんな彼にマクシミリアンはさらに続きます。
「確かにセラフィナは歴史が苦手かもしれない。だが、それでも苦手なりに調べてくることは出来るはずだ。だが彼女が何かを調べている様子はなかった。図書館や放課後の教室で一度でも彼女を見たか?」
「いや、それは……」
普段あまりしゃべらないマクシミリアンが突然険しい口調でまくしたて始めたため、さすがのアルバートも気圧されてしまっていました。その後ろでセラフィナは目に涙をにじませています。
私もマクシミリアンのことをほとんど何も知らなかったですが、まさかここまで勢いよく話す人だとは思っていなかったため驚いてしまいます。
恐らく自分に関係のないことにまで口を出すタイプではないが、たまたま今回アルバートやセラフィナと同じ班になって言わずにはいられない状況になったということでしょう。
「そして彼女は僕たちが発表している間に必死で自分の発表を作っていた。そしてそれでようやく出てきたものがこれだ。結局彼女は僕らがほぼ必死に準備していた間に遊び呆けて何もしていなかったということだ。それに対して何も言うなと言うのか?」
「す、すいません、私は天然で……」
そう言って突如セラフィナは突如涙を流し始めています。
マクシミリアンの猛攻は傍で聞いている私ですら怖くなるほどだったから、もしかしたら嘘泣きではないのかもしれませんが、この期に及んで天然で全てを押し通そうとするセラフィナにさすがに私は苛立ちました。
「そうやって何でもかんでも都合の悪いことは全部天然で済ませるつもりですか!?」
「ソフィア!?」
突然怒りの声をあげた私にアルバートはさらに動揺します。
それまで怒涛の勢いでしゃべっていたマクシミリアンでさえも思わず言葉を止めていました。
「天然と言えば何でも許されると思っていますけど、世の中そこまで甘くないです! 教室で転んで助けてもらうのとは訳が違うんです! 発表の準備を全くしていなかったのが問題じゃないですか!」
私が叫ぶと立ち尽くしていたセラフィナの目から涙がこぼれます。
もしかしたらこれまでの人生でここまで言われたのは初めてなのかもしれません。
「もう、もういいです!」
そう言って彼女は走っていくのでした。
それを見てアルバートはため息をつきます。
「全く、ちょっと準備不足だっただけでここまで言うなんて二人には呆れた」
「何を言う、ソフィアの言っていることは正しいことだろう?」
「もういい、お前たちとはやってられない!」
そう言ってアルバートもセラフィナを追って走っていくのでした。
グループ学習でやってられないとか言われてもこちらも困ります。
私は残されたマクシミリアンと顔を見合わせるのでした。
発表が終わるころにはセラフィナの声はすっかり震えていました。
彼女の発表は教科書に書いてあることをそのままなぞったようなもので、発表と呼べるほどのものではありません。私やマクシミリアンはもちろんのこと、アルバートですらきっとそう思ったに違いありません。
そしてそんな空気はセラフィナにも伝わったのでしょう、彼女は発表中から少しずつ表情が青くなっていくのが私たちにも分かりました。
「一体何から言えばいいのか」
「まあまあ落ち着こう」
マクシミリアンがしゃべろうとすると、不穏な気配を察したアルバートが遮る。
「ほら、セラフィナはこういうの苦手だし発表も初めてだろう? だから仕方ないこともある」
「アルバート」
私が口を開こうとした時でした。
そんな私を制してマクシミリアンが険しい口調で言います。
「いや、僕も言いたいことがあったんだ。アルバート、この前話したときからそうだったが、君はセラフィナをかばっているように見えて、本当はただ甘やかしているだけだ。それは本人のためにやっていても実は本人のためになっていないといい加減自覚すべきだ」
「な、何だと?」
マクシミリアンの言葉にアルバートは眉を吊り上げますが、すぐに反論の言葉は出てこずに口をパクパクさせています。
そんな彼にマクシミリアンはさらに続きます。
「確かにセラフィナは歴史が苦手かもしれない。だが、それでも苦手なりに調べてくることは出来るはずだ。だが彼女が何かを調べている様子はなかった。図書館や放課後の教室で一度でも彼女を見たか?」
「いや、それは……」
普段あまりしゃべらないマクシミリアンが突然険しい口調でまくしたて始めたため、さすがのアルバートも気圧されてしまっていました。その後ろでセラフィナは目に涙をにじませています。
私もマクシミリアンのことをほとんど何も知らなかったですが、まさかここまで勢いよく話す人だとは思っていなかったため驚いてしまいます。
恐らく自分に関係のないことにまで口を出すタイプではないが、たまたま今回アルバートやセラフィナと同じ班になって言わずにはいられない状況になったということでしょう。
「そして彼女は僕たちが発表している間に必死で自分の発表を作っていた。そしてそれでようやく出てきたものがこれだ。結局彼女は僕らがほぼ必死に準備していた間に遊び呆けて何もしていなかったということだ。それに対して何も言うなと言うのか?」
「す、すいません、私は天然で……」
そう言って突如セラフィナは突如涙を流し始めています。
マクシミリアンの猛攻は傍で聞いている私ですら怖くなるほどだったから、もしかしたら嘘泣きではないのかもしれませんが、この期に及んで天然で全てを押し通そうとするセラフィナにさすがに私は苛立ちました。
「そうやって何でもかんでも都合の悪いことは全部天然で済ませるつもりですか!?」
「ソフィア!?」
突然怒りの声をあげた私にアルバートはさらに動揺します。
それまで怒涛の勢いでしゃべっていたマクシミリアンでさえも思わず言葉を止めていました。
「天然と言えば何でも許されると思っていますけど、世の中そこまで甘くないです! 教室で転んで助けてもらうのとは訳が違うんです! 発表の準備を全くしていなかったのが問題じゃないですか!」
私が叫ぶと立ち尽くしていたセラフィナの目から涙がこぼれます。
もしかしたらこれまでの人生でここまで言われたのは初めてなのかもしれません。
「もう、もういいです!」
そう言って彼女は走っていくのでした。
それを見てアルバートはため息をつきます。
「全く、ちょっと準備不足だっただけでここまで言うなんて二人には呆れた」
「何を言う、ソフィアの言っていることは正しいことだろう?」
「もういい、お前たちとはやってられない!」
そう言ってアルバートもセラフィナを追って走っていくのでした。
グループ学習でやってられないとか言われてもこちらも困ります。
私は残されたマクシミリアンと顔を見合わせるのでした。
620
あなたにおすすめの小説
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
奪われたものは、全て要らないものでした
編端みどり
恋愛
あげなさい、お姉様でしょ。その合言葉で、わたくしのものは妹に奪われます。ドレスやアクセサリーだけでなく、夫も妹に奪われました。
だけど、妹が奪ったものはわたくしにとっては全て要らないものなんです。
モラハラ夫と離婚して、行き倒れかけたフローライトは、遠くの国で幸せを掴みます。
見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……
物語は続かない
mios
恋愛
「ローズ・マリーゴールド公爵令嬢!貴様との婚約を破棄する!」
懐かしい名前を聞きました。彼が叫ぶその名を持つ人物は既に別の名前を持っています。
役者が欠けているのに、物語が続くなんてことがあるのでしょうか?
大恋愛の後始末
mios
恋愛
シェイラの婚約者マートンの姉、ジュリエットは、恋多き女として有名だった。そして、恥知らずだった。悲願の末に射止めた大公子息ライアンとの婚姻式の当日に庭師と駆け落ちするぐらいには。
彼女は恋愛至上主義で、自由をこよなく愛していた。由緒正しき大公家にはそぐわないことは百も承知だったのに、周りはそのことを理解できていなかった。
マートンとシェイラの婚約は解消となった。大公家に莫大な慰謝料を支払わなければならず、爵位を返上しても支払えるかという程だったからだ。
お姉ちゃん今回も我慢してくれる?
あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」
「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」
「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」
私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。
代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。
お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。
ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい?
お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる