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 オーク用寝具セット(1500DTP)により快眠でした。人間用は1000だったが、姿を変えていないためオーク用を購入。キングサイズのベッドにやわらかいマット、カバーに掛け布団。毛布や目覚まし時計までついて、さらに汚れ防止が付与されている。1500は安い物だ。ただ予想以上の大きさで真ん中にある水晶玉が邪魔になり寝室の部屋を新たに作る必要はあったが。残り1700DTP。

 目覚まし時計を確認すると8時であることが確認できた。ふと何も食べていないことを思い出すも空腹は感じていない。しかし水晶玉のリストに食事セット(10DTP)があることから食べておいた方がいいと思い購入する。水晶玉から現れたのは水と柔らかなパンに焼いた肉が挟まったサンドイッチ2つだった。鶏肉だと思うが照り焼きでうまかった。

 満腹感もなく、モンスターは食事を必要としないのかと考えるが、餓死はしたくないので寝る前にでも食べるようにしようと決意する。

「そろそろ外の様子を見に行くか」

 昨日と同じように棍棒を片手に持ち、水晶玉に触れて入り口の部屋に移動する。久しぶりに日の光を見た気がする。

「まずは適当に歩いてみるか。迷わないように目印が必要だよな」

 わかりやすいように棍棒を地面につけたまま歩いてみる。ある程度進んで棍棒を確認したが傷一つない。武具の知識通りダンジョン産の武具は壊れにくく何かしら付与されているようだ。

「鑑定は3000と高かったからな」

 食べられるのかわからない木の実や雑草、キノコなど発見したが触らずに放置している。たまに動物なのかモンスターなのかわからない猪や蛇も見つけたが、襲われることはなくどちらかと言えば俺から逃げている。

「オークはそこそこ強いモンスターなのかもな。小説じゃただの豚肉として食われる存在って感じだったけど」

 歩き続けて大体2時間ほど、整備された道が見えた。この道を辿れば街に到着するのだろうが、今のところ行く気はない。オークだし。

 周りを見渡せば草原で近くに村などは無かった。ダンジョンがすぐに見つかることはなさそうだ。棍棒で地面につけた線を辿ってダンジョンに戻る。戻る途中で線を消すことは忘れない。

 ダンジョンに到着すれば整備された道のある方向がわかるよう矢印を書いておく。まだ日は高く、反対の方角を探索することにする。

「こっちはまだまだ森が続いているな。もう少し歩いて何もなさそうなら戻るか」

 大体3時間ほど歩いたところでさらに森が深くなることが予想できたので引き返すことにした。だんだんと佐上になっていることから山に入っていくと思われる。

「こっちは危険ってところかな。モンスターに襲われるわけじゃなかったけど、確実に道に迷う」

 ダンジョンに到着する頃には日が沈み、梟と思われる鳴き声が聞こえ始めていた。ダンジョン入り口にある水晶玉に触れてコアの部屋に移動する。予定通り食事セットを購入するとコーラとハンバーガーにフライドポテトが現れた。食事はランダムに出てくるようだ。

 夕食を食べ終わり寝室に向かう。壁に棍棒を立て掛けてベッドに向かって倒れこみ明日のことを考える。

「明日はモンスターと戦ってみるか。戦闘スキルは持ってないけど知識はあるわけだし。ある程度戦えるはずだ」

 次に目的はどうするか。死にたくないというのが一番の目的ではあるが、他には。

「最強、とか? ランキング1位を目指すとか。それにはポイントを溜めないとな。ふぁ…ん寝るか」

 歩き続けたことで思った以上に疲れていたのか20時前に眠ったのにもかかわらず、9時に目を覚ました。寝室からコアの部屋に移動して水晶玉に触れると驚くことが起きていた。

「ポイントが増えてる。誰か入ってきたのか?」

 水晶玉に触れていれば各部屋の様子を見ることができるので、入り口の部屋から順番に確認していくと、ゴブリンの姿はなく猫と思われる大きな動物が丸くなっていた。

「人間じゃなくてもポイントが入るのか。ゴブリンが死んだことでもポイントが入ってるんだよな。1分につき15ポイントか。いつからいたんだ?」

 現在8495DTPだからゴブリン1匹150×3のメイジ250で5分の1が戻って来るから、90と50で140の1680を足して、8495を引くと6675の15割ると445分間ここにいるってことか大体7時間くらい。夜中に入ってきたようだ。

「この世界の知識にヒットしないってことは常識から外れた存在なんだろうな。ポイントがこれだけあれば鑑定買っとくか」

 ただの鑑定ではなく5000DTP必要な看破を購入する。これでモンスターから人間などの生き物を詳しく知ることができる。鑑定は物の詳細がわかるらしく、後回しにする。

「水晶越しでも出来るかどうかだよな。《看破》」

 キャットプリンセス。2日前の魔力溜まりから発生。魔力が濃い個所を好み住処にする。攻撃方法は爪と魔法を使用する。食事は必要とせず魔力を吸収している。年月を重ねる度に尾が増えていき、10本を超えるとクイーンに進化する。しかし独特な魔力を持っているため大型モンスターから狙われやすく、クイーンやキングに進化する個体は稀である。

 ゴブリンを複数相手にしても倒す程度は強いってことだよな。傷ついているようには見えない。無傷で倒したのか、魔法を使って癒したのか。巻き戻し機能とかないのだろうか?

「お? なんか印が出てきたな。これで見れるのか?」

 巻き戻しや停止、早送りでお馴染みの印が現れたので触れてみると時間の指定ができるようだ。夜中の2時を指定して確認する。

「結構怪我して入ってきたんだな。一度こっちまで来てるのか。行き止まりで引き返して、反対に向かってゴブリンを前足で叩き潰した。死体が光の粒になった驚いてるのは可愛いな。てか死体は残らないのか。メイジがゴブリン2匹を盾にして魔法を使ってるな。魔法耐性でもあるのか? 当たってもダメージになっていない感じだ。あ、メイジも潰れた。それで丸くなって寝たのか。1時間早送りしてみるか。やっぱり傷が少なくなってるな。魔力を吸収して傷を治したってことか」

 このまま居着いてくれればポイント問題も解決するわけだが猫は気まぐれだというし、こちらからは手を出さないようにしよう。というか閉じ込められないかとダンジョンを改造しようとしたが、とんでもないポイントを要求された。部屋に誰かがいる状態で改造を行うには10倍のポイントが必要らしい。離れた場所は通常通りのポイントで出来た。
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