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5. 目を見張るもの
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「エレナ。隣に野菜を届けてもらえますか?ついでに、挨拶をしてくるといいですよ。」
それからもマダリーナにいろいろと教えてもらいながらカーペットの染み抜きまで終えたエレナは、また調理場まで戻ってくると、畑仕事を終えたアンがお茶を飲んでいて、そのように言われた。
指を差された方の紙袋を覗いてみると、ダイコンやニンジン、ほうれん草や赤いカブ、トウモロコシが入っていた。
「さっきここで採れたものばかりなのですよ。
裏口じゃなく表の玄関から出て、左手に見える家に届けてきてもらえるかしらね。」
エレナは頷くと、紙袋を持って建物から外へ出る。
と、周りは鬱蒼としていた森が広がっていた。その中央に森を分断するように剥き出しの土の地面の道が伸びていた。
(沸き湯に入った時も思ったけれど、すごい山の中なのね。でも、こういう場所来た事もなかったから、素敵ね!
…でも、暮らすには大変そう。だって、火を付けるのも火打ち石の火花で付けるなんて…毎回なんて、時間掛かりすぎないのかしら?益々料理したくないなぁ。)
エレナは、両親がいても共働きで幼い頃から一人で過ごしていた。けれども料理をしたいとは思わず、両親が置いていった食費から惣菜を買ったりしていた。
両親が亡くなってからも、料理をしようとは思わず、米を炊いた白いご飯に惣菜、インスタント食品などを食べていたのだった。
ここは、科学技術があまり発達していないのか、火も石を打ち合わせてその火花で付ける。エレナは驚いたが、ここで生きていくには慣れないといけないのだろうなぁと思いながら、周りをキョロキョロとする。
(あ、あった!)
少し先に、簡単な木で出来た小屋のような倉庫のような、見た目の古く、強い風が吹いたら倒れそうな建物がある。
でも直ぐ見えるところには建物はそれだけしかないので、そこが隣の家なのだろうとそちらへと近づいていった。
(え?なんだか、壊れかけの倉庫みたいだけれど…住んでいるのよね?)
「すみません!」
そう声を掛け、入り口らしい扉に手を掛けるとちょうど中から声が聞こえた。その扉は力を入れ過ぎると外れそうで、触れていいのか戸惑われた。
「誰だい?入っとくれー。」
エレナがゆっくりと扉を開けると少し先にテーブルが置いてあり、物がいろいろと置いてあった。
その奥には同じく調理場というかかまどがあり、その隣には大きな瓶と、流し台が置いてある。
水道の蛇口は無く、アン達の家のように窓から伸びた管も無く、外から汲んできた水をそこに溜めてそれを桶で流し台へと汲んで扱う水場のようだった。
その声の主は水場で野菜を洗っていた。茶色と白い毛が混ざった色の髪を肩まで伸ばした、アンやマダリーナと同じ年頃の人であった。
「ん?あんたかい?沸き湯の近くで倒れていたって人はぁ?」
「あ、はい。私はエレナと申します。これをアンさんから…。」
そう言ってエレナは、紙袋を手渡した。
「あぁ、なるほど。ありがとうねぇ。そこへ置いてくれるー?」
少し作業を終えたその女性は、エレナの方へ来た。
「私はビアンカだよぉ。ここら一帯の事は聞いたかい?私は一緒に暮らしていた旦那が亡くなってねぇ。
独り身になって、自らここへ来たのさ。」
ビアンカにテーブルの所にある椅子へと促されたエレナは、そこへ腰を下ろした。
と、エレナはそのテーブルの上にあった物に目がいき、口を開いた。
「ビアンカさん、これは…?」
目の前には、麻で作られたコースターや鍋敷き、タペストリーやなんかが乱雑に置かれていた。
「これかい?私の道楽よぉ。
…ここには、死ぬ事を思って来たのに、思わぬ居心地の良さでねぇ。
沸き湯に入ると身に染みて、まだ生きていないとと思ったんだよ。アン様やマダリーナ、他の人達からも諭されたのもあってねぇ。
ここの山には、アサだと思うんだけどね、それがたくさん木のように真っ直ぐ育っている所があって。もう時間が有り余ってるからね、それを煮て、水に晒して、こうやって編んでいるんだよー。」
(す、すごいたくさん…!しかもこれ、かなりすごい出来栄えだわ。丁寧に作られているもの、売り物と言っても差し支えないくらいだわ!)
「こんなにあるのなら、売ったりされないのですか?」
「売るぅ?こんな道楽が売れるのかい?無理だろうねぇ。
…まぁ、買ってくれる人がいるなら嬉しいけれどねぇ。なんだか私が生きている価値がまだあるような気がするからね。奥の部屋にもまだまだあるよー。」
(まだあるの!すごいわ!)
コースターや鍋敷きのタペストリーなどは、このテーブルにあるだけでも数十個はありそうだとエレナは思った。
見た目は麻で出来ているが、茶色以外にもカラフルな色がありエレナは、とても珍しいと思った。
これらが売れるなら、ここの家も、少しは丈夫な建物に立て直せるのではないかとエレナは失礼ながら思ったのだった。
それからもマダリーナにいろいろと教えてもらいながらカーペットの染み抜きまで終えたエレナは、また調理場まで戻ってくると、畑仕事を終えたアンがお茶を飲んでいて、そのように言われた。
指を差された方の紙袋を覗いてみると、ダイコンやニンジン、ほうれん草や赤いカブ、トウモロコシが入っていた。
「さっきここで採れたものばかりなのですよ。
裏口じゃなく表の玄関から出て、左手に見える家に届けてきてもらえるかしらね。」
エレナは頷くと、紙袋を持って建物から外へ出る。
と、周りは鬱蒼としていた森が広がっていた。その中央に森を分断するように剥き出しの土の地面の道が伸びていた。
(沸き湯に入った時も思ったけれど、すごい山の中なのね。でも、こういう場所来た事もなかったから、素敵ね!
…でも、暮らすには大変そう。だって、火を付けるのも火打ち石の火花で付けるなんて…毎回なんて、時間掛かりすぎないのかしら?益々料理したくないなぁ。)
エレナは、両親がいても共働きで幼い頃から一人で過ごしていた。けれども料理をしたいとは思わず、両親が置いていった食費から惣菜を買ったりしていた。
両親が亡くなってからも、料理をしようとは思わず、米を炊いた白いご飯に惣菜、インスタント食品などを食べていたのだった。
ここは、科学技術があまり発達していないのか、火も石を打ち合わせてその火花で付ける。エレナは驚いたが、ここで生きていくには慣れないといけないのだろうなぁと思いながら、周りをキョロキョロとする。
(あ、あった!)
少し先に、簡単な木で出来た小屋のような倉庫のような、見た目の古く、強い風が吹いたら倒れそうな建物がある。
でも直ぐ見えるところには建物はそれだけしかないので、そこが隣の家なのだろうとそちらへと近づいていった。
(え?なんだか、壊れかけの倉庫みたいだけれど…住んでいるのよね?)
「すみません!」
そう声を掛け、入り口らしい扉に手を掛けるとちょうど中から声が聞こえた。その扉は力を入れ過ぎると外れそうで、触れていいのか戸惑われた。
「誰だい?入っとくれー。」
エレナがゆっくりと扉を開けると少し先にテーブルが置いてあり、物がいろいろと置いてあった。
その奥には同じく調理場というかかまどがあり、その隣には大きな瓶と、流し台が置いてある。
水道の蛇口は無く、アン達の家のように窓から伸びた管も無く、外から汲んできた水をそこに溜めてそれを桶で流し台へと汲んで扱う水場のようだった。
その声の主は水場で野菜を洗っていた。茶色と白い毛が混ざった色の髪を肩まで伸ばした、アンやマダリーナと同じ年頃の人であった。
「ん?あんたかい?沸き湯の近くで倒れていたって人はぁ?」
「あ、はい。私はエレナと申します。これをアンさんから…。」
そう言ってエレナは、紙袋を手渡した。
「あぁ、なるほど。ありがとうねぇ。そこへ置いてくれるー?」
少し作業を終えたその女性は、エレナの方へ来た。
「私はビアンカだよぉ。ここら一帯の事は聞いたかい?私は一緒に暮らしていた旦那が亡くなってねぇ。
独り身になって、自らここへ来たのさ。」
ビアンカにテーブルの所にある椅子へと促されたエレナは、そこへ腰を下ろした。
と、エレナはそのテーブルの上にあった物に目がいき、口を開いた。
「ビアンカさん、これは…?」
目の前には、麻で作られたコースターや鍋敷き、タペストリーやなんかが乱雑に置かれていた。
「これかい?私の道楽よぉ。
…ここには、死ぬ事を思って来たのに、思わぬ居心地の良さでねぇ。
沸き湯に入ると身に染みて、まだ生きていないとと思ったんだよ。アン様やマダリーナ、他の人達からも諭されたのもあってねぇ。
ここの山には、アサだと思うんだけどね、それがたくさん木のように真っ直ぐ育っている所があって。もう時間が有り余ってるからね、それを煮て、水に晒して、こうやって編んでいるんだよー。」
(す、すごいたくさん…!しかもこれ、かなりすごい出来栄えだわ。丁寧に作られているもの、売り物と言っても差し支えないくらいだわ!)
「こんなにあるのなら、売ったりされないのですか?」
「売るぅ?こんな道楽が売れるのかい?無理だろうねぇ。
…まぁ、買ってくれる人がいるなら嬉しいけれどねぇ。なんだか私が生きている価値がまだあるような気がするからね。奥の部屋にもまだまだあるよー。」
(まだあるの!すごいわ!)
コースターや鍋敷きのタペストリーなどは、このテーブルにあるだけでも数十個はありそうだとエレナは思った。
見た目は麻で出来ているが、茶色以外にもカラフルな色がありエレナは、とても珍しいと思った。
これらが売れるなら、ここの家も、少しは丈夫な建物に立て直せるのではないかとエレナは失礼ながら思ったのだった。
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