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本編
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「えーすごっ!」
思わず声に出てしまったけれど、これは許して欲しい。私が使わせてもらっている部屋からすぐに見える庭も、色とりどりの小さな花などが咲いていたけれど、そこの10倍以上の広さはある。ここは庭っていうかお屋敷の庭園みたい。カラフルな花がそこかしこに咲いている。淡いピンクと真っ赤なバラが絡みついたアーチがある所をくぐると、タイルが敷かれた道が奥へと続いている。
「ここだ。もう少し進んだ所にあるガゼボで座れるから、そこまで行こう。ちなみにマリア、その入り口の所に倒れていたのだが覚えているか?」
えー全然記憶にないな…
「うわっ!」
「…!」
「きゃっ!」
考えていたところで、さわさわと優しい風がだんだん強くなり、クルクルと私たちの周りを風が回る。と、声が頭に響いてきた。
『ごめんなさいね。マリアさん、あなたに特別な力を付与するの忘れちゃったわ。さあ、これで助けてあげてちょうだい。私はもう、力になってあげられないの。よろしくね。』
「え?」
声が止むと同時に風も収まった。
「強い風だったね、大丈夫?」
「え、ええ。今の…」
「ここはそんなに風は吹かないのだが珍しいな。大丈夫か?」
えと…二人には声が聞こえなかったのかしら。何だったんだろう…。
「あれ。なんだか大人しいね。さっきまでの威勢はどこにいったの?」
ガゼボは庭園が見渡せてとてもステキ。でも先ほどの声の事を考えていて、ぼーっとしてしまっていた。
「えっと、発言してもいいのですか?」
「?あ、さっきのドレイク侯爵令嬢との会話?あれはマリアちゃんには関係ないから大丈夫だよ。僕らの仲でしょ、せっかくだし気楽に話そうよ。」
「僕らの仲とは良くわからんが、マリア、気にするな。今まで通り普通に話して欲しい。」
「はい…。では、聞きますけど、王子殿下って、ルーク様の事?」
それで普通に話して欲しいって事かしら?
「あー…別に黙っていた訳ではない。まぁ、自分からこの国の第二王子だと言いづらかったんだ。でも、普通に話してもらいたい。だからルークと呼べと言ったんだ。」
「うそだー!内緒にしたかったんでしょ?だって地位があると、距離が遠く感じて遠慮されちゃうもんね。」
「ロイ、うるさい。マリアも、他の者がいる時は相応の言葉遣いなどをしてもらわないといけないが、普段はロイまでとはいかなくとも気安く頼む。」
「まあ、王子殿下にはなかなか心開ける人がいないんだよ。だから、僕からもお願いだよ、マリアちゃん!」
「そうですか…ではお言葉に甘えちゃいますね。言葉遣いかぁ。この国の常識とか、ルールとか良く分からないので、教えてもらったりできますか?衣食住と与えてもらってるだけで有難いのですけど、出来れば…」
「そうだな。では、調整して、行儀見習いや作法の教師を付けよう。そんなに気にするな。いきなりこの世界に来てしまったのだから。こう、時間のある時に一緒に話をしてくれるだけで充分だ。」
「そうだよ-。あ、たまにマリアちゃんのいた世界の話をしてよ。こっちの世界で何か役に立つヒントがあるかもしれないし。」
「ありがとうございます!分かりました。私も、そんな事でよければ話します。」
「まだちょっと堅いな-。そのうち砕けて話せるようになってね!あ、あと朝食は苦痛だったって聞いたけどどうだったの?」
「苦痛というか…まだ私、こちらのお食事の作法が良く分からないの。それなのにあんなにたくさん給仕してくれる人がいたら緊張しちゃって。失敗してないか気にしたり。あと、部屋がとっても広かったから、ルーク様と一緒に食べてるって言えないなと思っちゃって…。でも、ルーク様は王子様だって聞いたから、本当は忙しいんじゃないのですか?だったら他の時間の食事のように部屋で一人で食べた方がいいのじゃないかと思ったんです。」
「そっかー。王族と食事ってのは確かに緊張するよね。僕も嫌だよ。多分、ルークも好きじゃないんじゃない?」
「そうか、悪かった。顔を見たかったんだ。あそこは確かに、人がいる時に使う晩餐の部屋だ。王族がおもてなしとして使う部屋でもあるんだ。しかしマリアが窮屈であれば仕方ない。マリアの部屋で一緒に食べてもいいか?」
「えっ私の部屋で?」
「ちょっとルーク、仕方ないっていう割に顔がニヤついてるよ!本当は自分もあんな広い部屋で食べたくなかったって言えばいいのに。一応異世界から来たとはいえ国賓扱いをしたって事でしょ。ルークはいつも、自分の部屋で食べてるんだ。でも少ししか取らなくて。マリアちゃんと一緒だったら、たくさん食べてくれるだろうから、栄養も取れて良いと思うんだよね。」
来てもらうのは申し訳ないと思ったんだけど、私が王子殿下の部屋に入るのは良くないって事かな。他に食事用の部屋が無いのかしら。まぁ、そう言ってくれるなら、そうした方がいいのかな。
「分かりました、ルーク様がそれで大丈夫でしたらお願いします。でも無理しないで下さいね。ルーク様も、休息出来る時にしておかないと。」
「大丈夫だよ。公務があったら、一緒には取れない日もあるけど。毎日はしつこかったら止めるから言ってね。今は国王様も第一王子殿下も公務についてなくてルークは忙しいから、逆に息抜きが欲しいんだって-。」
「体調がお二人とも良くないってタリアから聞きました。大丈夫ですか?」
「うーん、起き上がれる日もあるみたいだけどね。最近は出歩いてるのも見ないよね。」
「大事を取っているんだろう。元気になって欲しいのだが…。」
「そうなんですか…。私、お見舞いに行くのは良くないですか?」
「うーん、ルーク、どう?」
「そうだな。体調の良さそうな日に顔を見せに行くくらいなら。タリアに伝えてもらうようにしよう。一緒に行くんだ。」
「はい。ありがとうございます。ご挨拶しますね。ルーク様も、一人で公務されてるんですか?無理しないで下さいね。ルーク様の代わりはいないのですから。」
「他に王位継承権持ってる人はいるけど、ルークみたいに動けるかは別だもんね。」
「あ、そうではなくて!ルーク様も一人の人間ですよね?王子とか関係なく、代わりはいないのですよ。」
「ふーん。なるほどね。ルークを一人の人間として、みてくれてるみたいだね。」
「え?当たり前ですよね?違いました?だって、一人で仕事抱え込んだら、体が悲鳴上げちゃうかなって。」
「いや…まあ…そうだ。マリア。ありがとう。」
朝食もあまり食べてないって…一日の活力の源なのに。何だか心配になっちゃうわ。
それにしても、改めて考えるとこんな顔が整った人と一緒に朝食か…なんとなく嬉しいような緊張するような…いや、一人で食べるんじゃないから嬉しいだけよね!きっとそうよ!
思わず声に出てしまったけれど、これは許して欲しい。私が使わせてもらっている部屋からすぐに見える庭も、色とりどりの小さな花などが咲いていたけれど、そこの10倍以上の広さはある。ここは庭っていうかお屋敷の庭園みたい。カラフルな花がそこかしこに咲いている。淡いピンクと真っ赤なバラが絡みついたアーチがある所をくぐると、タイルが敷かれた道が奥へと続いている。
「ここだ。もう少し進んだ所にあるガゼボで座れるから、そこまで行こう。ちなみにマリア、その入り口の所に倒れていたのだが覚えているか?」
えー全然記憶にないな…
「うわっ!」
「…!」
「きゃっ!」
考えていたところで、さわさわと優しい風がだんだん強くなり、クルクルと私たちの周りを風が回る。と、声が頭に響いてきた。
『ごめんなさいね。マリアさん、あなたに特別な力を付与するの忘れちゃったわ。さあ、これで助けてあげてちょうだい。私はもう、力になってあげられないの。よろしくね。』
「え?」
声が止むと同時に風も収まった。
「強い風だったね、大丈夫?」
「え、ええ。今の…」
「ここはそんなに風は吹かないのだが珍しいな。大丈夫か?」
えと…二人には声が聞こえなかったのかしら。何だったんだろう…。
「あれ。なんだか大人しいね。さっきまでの威勢はどこにいったの?」
ガゼボは庭園が見渡せてとてもステキ。でも先ほどの声の事を考えていて、ぼーっとしてしまっていた。
「えっと、発言してもいいのですか?」
「?あ、さっきのドレイク侯爵令嬢との会話?あれはマリアちゃんには関係ないから大丈夫だよ。僕らの仲でしょ、せっかくだし気楽に話そうよ。」
「僕らの仲とは良くわからんが、マリア、気にするな。今まで通り普通に話して欲しい。」
「はい…。では、聞きますけど、王子殿下って、ルーク様の事?」
それで普通に話して欲しいって事かしら?
「あー…別に黙っていた訳ではない。まぁ、自分からこの国の第二王子だと言いづらかったんだ。でも、普通に話してもらいたい。だからルークと呼べと言ったんだ。」
「うそだー!内緒にしたかったんでしょ?だって地位があると、距離が遠く感じて遠慮されちゃうもんね。」
「ロイ、うるさい。マリアも、他の者がいる時は相応の言葉遣いなどをしてもらわないといけないが、普段はロイまでとはいかなくとも気安く頼む。」
「まあ、王子殿下にはなかなか心開ける人がいないんだよ。だから、僕からもお願いだよ、マリアちゃん!」
「そうですか…ではお言葉に甘えちゃいますね。言葉遣いかぁ。この国の常識とか、ルールとか良く分からないので、教えてもらったりできますか?衣食住と与えてもらってるだけで有難いのですけど、出来れば…」
「そうだな。では、調整して、行儀見習いや作法の教師を付けよう。そんなに気にするな。いきなりこの世界に来てしまったのだから。こう、時間のある時に一緒に話をしてくれるだけで充分だ。」
「そうだよ-。あ、たまにマリアちゃんのいた世界の話をしてよ。こっちの世界で何か役に立つヒントがあるかもしれないし。」
「ありがとうございます!分かりました。私も、そんな事でよければ話します。」
「まだちょっと堅いな-。そのうち砕けて話せるようになってね!あ、あと朝食は苦痛だったって聞いたけどどうだったの?」
「苦痛というか…まだ私、こちらのお食事の作法が良く分からないの。それなのにあんなにたくさん給仕してくれる人がいたら緊張しちゃって。失敗してないか気にしたり。あと、部屋がとっても広かったから、ルーク様と一緒に食べてるって言えないなと思っちゃって…。でも、ルーク様は王子様だって聞いたから、本当は忙しいんじゃないのですか?だったら他の時間の食事のように部屋で一人で食べた方がいいのじゃないかと思ったんです。」
「そっかー。王族と食事ってのは確かに緊張するよね。僕も嫌だよ。多分、ルークも好きじゃないんじゃない?」
「そうか、悪かった。顔を見たかったんだ。あそこは確かに、人がいる時に使う晩餐の部屋だ。王族がおもてなしとして使う部屋でもあるんだ。しかしマリアが窮屈であれば仕方ない。マリアの部屋で一緒に食べてもいいか?」
「えっ私の部屋で?」
「ちょっとルーク、仕方ないっていう割に顔がニヤついてるよ!本当は自分もあんな広い部屋で食べたくなかったって言えばいいのに。一応異世界から来たとはいえ国賓扱いをしたって事でしょ。ルークはいつも、自分の部屋で食べてるんだ。でも少ししか取らなくて。マリアちゃんと一緒だったら、たくさん食べてくれるだろうから、栄養も取れて良いと思うんだよね。」
来てもらうのは申し訳ないと思ったんだけど、私が王子殿下の部屋に入るのは良くないって事かな。他に食事用の部屋が無いのかしら。まぁ、そう言ってくれるなら、そうした方がいいのかな。
「分かりました、ルーク様がそれで大丈夫でしたらお願いします。でも無理しないで下さいね。ルーク様も、休息出来る時にしておかないと。」
「大丈夫だよ。公務があったら、一緒には取れない日もあるけど。毎日はしつこかったら止めるから言ってね。今は国王様も第一王子殿下も公務についてなくてルークは忙しいから、逆に息抜きが欲しいんだって-。」
「体調がお二人とも良くないってタリアから聞きました。大丈夫ですか?」
「うーん、起き上がれる日もあるみたいだけどね。最近は出歩いてるのも見ないよね。」
「大事を取っているんだろう。元気になって欲しいのだが…。」
「そうなんですか…。私、お見舞いに行くのは良くないですか?」
「うーん、ルーク、どう?」
「そうだな。体調の良さそうな日に顔を見せに行くくらいなら。タリアに伝えてもらうようにしよう。一緒に行くんだ。」
「はい。ありがとうございます。ご挨拶しますね。ルーク様も、一人で公務されてるんですか?無理しないで下さいね。ルーク様の代わりはいないのですから。」
「他に王位継承権持ってる人はいるけど、ルークみたいに動けるかは別だもんね。」
「あ、そうではなくて!ルーク様も一人の人間ですよね?王子とか関係なく、代わりはいないのですよ。」
「ふーん。なるほどね。ルークを一人の人間として、みてくれてるみたいだね。」
「え?当たり前ですよね?違いました?だって、一人で仕事抱え込んだら、体が悲鳴上げちゃうかなって。」
「いや…まあ…そうだ。マリア。ありがとう。」
朝食もあまり食べてないって…一日の活力の源なのに。何だか心配になっちゃうわ。
それにしても、改めて考えるとこんな顔が整った人と一緒に朝食か…なんとなく嬉しいような緊張するような…いや、一人で食べるんじゃないから嬉しいだけよね!きっとそうよ!
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