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19. 王宮での催し2
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シェスティンが下を向き、ビルギッタに手渡されたハンカチを握り締めていると、近づいてくる足音が聞こえ、ビルギッタに話し掛けていた。
「どうした?何かあった?」
その声もまた、聞きたいと思っていた声である。低く、それでいて優しい声で話すその人は、ランナルだ。
「それが…良く分からないの。話し掛けたらこうなって…。」
「そうなの?じゃあビルギッタが泣かせたって事か?」
そう言われたので、慌てて頭を横に二度ほど振ったシェスティンは、言葉にしないといけないと思い、意を決して頭を上げる。目には涙を溜めたままで。
「違うの。あの…どうして私に声を掛けてくれたの?」
「え?当たり前よ。あなたと話がしたかったからよ。」
「俺だってそうさ。わざわざ抜け出してきたんだからね。」
(え?抜け出して…?友人達の所からかしら?)
シェスティンは疑問に思ったが、すぐ近くをフレドリカが大声を上げながら歩いていた為に、そちらに目がいったシェスティンは二人の言葉に益々疑問が沸いた。
「でも…」
私はフレドリカじゃないのよ、あちらにフレドリカがいるでしょう?とシェスティンが言おうとした所でカイサがやってきた。
「あぁ、シェスティン!ちょっと来なさい。
フレドリカも、聞こえているでしょう?来なさい。」
「えー嫌よ、私!今から庭園を見に行くのよ!」
すぐ近くをテラスに向かって歩いていたフレドリカは苦虫をかみつぶしたような顔をして、カイサへと文句を言った。
「フレドリカ、それはあとでも出来るでしょ!?私のお友達にご挨拶に行くわよ!」
「もー本当強引なんだから!
アンヤ、ベッテ、ごめんなさいね。すぐ戻るわ!アブラハムもあとから行くから!」
フレドリカは、いつもの友人である三人に向かってそう言った。ブロルは今回、貴族しかこの王宮に呼ばれていない為に来ていなかった。
「失礼、カイサ夫人。私はランナルと申します。少しだけ、お時間をいただけませんか。二人きりではありません。こちらのビルギッタ嬢と三人で話がしたいのです。」
「なに?…え!え?あ、そ、そうなの?分かった…分かりましたわ。じゃあフレドリカだけで行きましょうね。」
「え?なんでよ!お母様!私だって行きたくないわよ!」
カイサは、途端にソワソワとしてその場を立ち去ろうとフレドリカへと手を伸ばす。
けれど、行きたくないと喚いたフレドリカに、近づいてきた人物が隣に立ちカイサへと声を掛ける。
「失礼。僕も、フレドリカ嬢と少し話がしたいんだけれどよろしいかな?カイサ夫人?僕は、ロルフと言いますよ、マダム。」
(お母様、あんなに驚いて…やっぱり王子なのかしら。
あら?あの人、ロルフ様!?前回のお楽しみってこれ?)
シェスティンは、カイサの後ろからやって来たロルフが、恭しく執事のようにお辞儀をしたのを見てそう思った。
すると、ロルフはシェスティンを見るとウィンクをしてこっそりと手を振ってきた。
(え?どういう事…?)
そう思う間もなくシェスティンはいきなり目の前が暗くなる。見上げると、ランナルがシェスティンの目の前に壁のように立っていたのだ。そうされてしまい、ロルフを見る事が出来なくなったシェスティン。
(え?どうしてランナル、目の前に立ったの?三人で話をするって言ったのに、これじゃぁ背中しか見えないもの。話が出来ないわ。)
そう思ったが、正面に立たれた為にランナルの顔が見えないから何を思ってそうしたのかシェスティンは全く想像も付かなかった。
「あ、そ、そう?そうなの?わ、分かったわ。じゃあ残念だけれど紹介はまたにするわね。お二人とも、ごゆっくり!」
そう言うと、今度こそカイサはそそくさと去って行った。
「えっと…ロルフ様がどうして!?」
「フレドリカ、良ければ向こうで二人で話をしないかい?それとも、部屋に行く?」
「え!へ、部屋!?」
「あははは!さすがにそれはまずいね。では、こちらへどうぞ。可愛いフレドリカ嬢。」
「ふ、フレドリカと呼んでも良くてよ?」
「あぁ、そう?じゃあフレドリカ。行こうか。」
そう言ったロルフは、あたふたとしているフレドリカの手を取り、エスコートをして少し離れた席に座りに行った。
「………どういう事?」
少し呆気にとられ、それに見とれていた三人であったが、ビルギッタが痺れを切らしたように言葉を吐いた。独り言だったのかもしれないが、ランナルは少しまだロルフの方を睨みつつ話した。
「時間がないから、詳しくは言えないけれど、そう言う事らしいよ。」
「え!?」
「その内に分かるさ。
それよりも!俺、抜け出してきたって言ったろ?ちょっとビルギッタは黙ってて。
シェスティン、今日はこれを渡しに来たよ。」
「え?」
ランナルがジャケットから出して手に持っているそれは、イヤリングだった。
「これ、付けてくれない?いや、悪いけれど付けてしまうよ。
ちょうど耳が空いていて良かった。いつも耳元には何も付けていなかったからね。」
そう言ったランナルは、座っているシェスティンへと視線を合わせる為に少し身を屈め、シェスティンの何も付いていない両耳にイヤリングを嵌めた。
「シェスティン、これはうちに伝わるものなんだけどね、君に持っていて欲しい。俺に会う時には、それを付けてくれると嬉しいな。
……行かなきゃ。」
ランナルの傍にいつの間にか兵士が立っていて、会釈をした。早くこちらへという合図なのだと見て取れた。
「じゃあまたあとで。シェスティン、今日は君も驚くかな?最近発掘を開始した遺跡で、見た事もなきコインが発見されてね。質もかなり古いみたいで、歴史的価値が有るそうなんだ。」
ニコリと笑みを浮かべて去って行ったランナルだったが、今日一番驚いた事はこれ以上ないのでは無いかと、シェスティンはイヤリングが付いた耳に手をやりながら顔を赤らめてそう思った。
「どうした?何かあった?」
その声もまた、聞きたいと思っていた声である。低く、それでいて優しい声で話すその人は、ランナルだ。
「それが…良く分からないの。話し掛けたらこうなって…。」
「そうなの?じゃあビルギッタが泣かせたって事か?」
そう言われたので、慌てて頭を横に二度ほど振ったシェスティンは、言葉にしないといけないと思い、意を決して頭を上げる。目には涙を溜めたままで。
「違うの。あの…どうして私に声を掛けてくれたの?」
「え?当たり前よ。あなたと話がしたかったからよ。」
「俺だってそうさ。わざわざ抜け出してきたんだからね。」
(え?抜け出して…?友人達の所からかしら?)
シェスティンは疑問に思ったが、すぐ近くをフレドリカが大声を上げながら歩いていた為に、そちらに目がいったシェスティンは二人の言葉に益々疑問が沸いた。
「でも…」
私はフレドリカじゃないのよ、あちらにフレドリカがいるでしょう?とシェスティンが言おうとした所でカイサがやってきた。
「あぁ、シェスティン!ちょっと来なさい。
フレドリカも、聞こえているでしょう?来なさい。」
「えー嫌よ、私!今から庭園を見に行くのよ!」
すぐ近くをテラスに向かって歩いていたフレドリカは苦虫をかみつぶしたような顔をして、カイサへと文句を言った。
「フレドリカ、それはあとでも出来るでしょ!?私のお友達にご挨拶に行くわよ!」
「もー本当強引なんだから!
アンヤ、ベッテ、ごめんなさいね。すぐ戻るわ!アブラハムもあとから行くから!」
フレドリカは、いつもの友人である三人に向かってそう言った。ブロルは今回、貴族しかこの王宮に呼ばれていない為に来ていなかった。
「失礼、カイサ夫人。私はランナルと申します。少しだけ、お時間をいただけませんか。二人きりではありません。こちらのビルギッタ嬢と三人で話がしたいのです。」
「なに?…え!え?あ、そ、そうなの?分かった…分かりましたわ。じゃあフレドリカだけで行きましょうね。」
「え?なんでよ!お母様!私だって行きたくないわよ!」
カイサは、途端にソワソワとしてその場を立ち去ろうとフレドリカへと手を伸ばす。
けれど、行きたくないと喚いたフレドリカに、近づいてきた人物が隣に立ちカイサへと声を掛ける。
「失礼。僕も、フレドリカ嬢と少し話がしたいんだけれどよろしいかな?カイサ夫人?僕は、ロルフと言いますよ、マダム。」
(お母様、あんなに驚いて…やっぱり王子なのかしら。
あら?あの人、ロルフ様!?前回のお楽しみってこれ?)
シェスティンは、カイサの後ろからやって来たロルフが、恭しく執事のようにお辞儀をしたのを見てそう思った。
すると、ロルフはシェスティンを見るとウィンクをしてこっそりと手を振ってきた。
(え?どういう事…?)
そう思う間もなくシェスティンはいきなり目の前が暗くなる。見上げると、ランナルがシェスティンの目の前に壁のように立っていたのだ。そうされてしまい、ロルフを見る事が出来なくなったシェスティン。
(え?どうしてランナル、目の前に立ったの?三人で話をするって言ったのに、これじゃぁ背中しか見えないもの。話が出来ないわ。)
そう思ったが、正面に立たれた為にランナルの顔が見えないから何を思ってそうしたのかシェスティンは全く想像も付かなかった。
「あ、そ、そう?そうなの?わ、分かったわ。じゃあ残念だけれど紹介はまたにするわね。お二人とも、ごゆっくり!」
そう言うと、今度こそカイサはそそくさと去って行った。
「えっと…ロルフ様がどうして!?」
「フレドリカ、良ければ向こうで二人で話をしないかい?それとも、部屋に行く?」
「え!へ、部屋!?」
「あははは!さすがにそれはまずいね。では、こちらへどうぞ。可愛いフレドリカ嬢。」
「ふ、フレドリカと呼んでも良くてよ?」
「あぁ、そう?じゃあフレドリカ。行こうか。」
そう言ったロルフは、あたふたとしているフレドリカの手を取り、エスコートをして少し離れた席に座りに行った。
「………どういう事?」
少し呆気にとられ、それに見とれていた三人であったが、ビルギッタが痺れを切らしたように言葉を吐いた。独り言だったのかもしれないが、ランナルは少しまだロルフの方を睨みつつ話した。
「時間がないから、詳しくは言えないけれど、そう言う事らしいよ。」
「え!?」
「その内に分かるさ。
それよりも!俺、抜け出してきたって言ったろ?ちょっとビルギッタは黙ってて。
シェスティン、今日はこれを渡しに来たよ。」
「え?」
ランナルがジャケットから出して手に持っているそれは、イヤリングだった。
「これ、付けてくれない?いや、悪いけれど付けてしまうよ。
ちょうど耳が空いていて良かった。いつも耳元には何も付けていなかったからね。」
そう言ったランナルは、座っているシェスティンへと視線を合わせる為に少し身を屈め、シェスティンの何も付いていない両耳にイヤリングを嵌めた。
「シェスティン、これはうちに伝わるものなんだけどね、君に持っていて欲しい。俺に会う時には、それを付けてくれると嬉しいな。
……行かなきゃ。」
ランナルの傍にいつの間にか兵士が立っていて、会釈をした。早くこちらへという合図なのだと見て取れた。
「じゃあまたあとで。シェスティン、今日は君も驚くかな?最近発掘を開始した遺跡で、見た事もなきコインが発見されてね。質もかなり古いみたいで、歴史的価値が有るそうなんだ。」
ニコリと笑みを浮かべて去って行ったランナルだったが、今日一番驚いた事はこれ以上ないのでは無いかと、シェスティンはイヤリングが付いた耳に手をやりながら顔を赤らめてそう思った。
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