【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる

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ルーティン

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私が9歳の頃、お祖父様が亡くなった。

すると、だんだん生活がしづらくなった。

お祖父様が今まで管理していた物を、お父様が管理するようになったのだけど上手くいかないらしい。
毎年、負債が少しずつたまってきてしまっているみたい。
私は領地経営をさせてもらっていないので詳しくは分からないのだけど。


12歳になって初めて、督促状なるものが家に届いた。

お役人も来て、いろいろと話して別荘を一つ手放す事にしてどうにか首の皮が繋がったらしい。

そこから、私は街へ出て働こうと思った。

お母様は、私が働く事にいい顔をしなかったが、家にいて刺繍をしたり、茶会をしたりしていたのでそちらに意識が向くと何も言わなくなった。
お母様の刺繍は出来がかなり良かったから、お母様には私が欲しいと言って、内緒でパン屋で売らせてもらっている。


街の広場の近くにあるパン屋は、夫婦が営んでていて朝早くからたくさんパンを焼く。
タウンハウスに来ていた頃から、いい匂いで知っている店だった。

雇って下さいと言ったら初めはとても驚かれた。多分、私の身分も知っていたのかもしれない。
けれど、何度も頼みこむうちに呆れられつつも『あんたには負けたよ。朝早いけど、よろしくね!教会の一の鐘がなる頃に来ればいいから。売れ残りのパンは好きなだけ持って帰っていいからね!』と言ってくれた。本当にありがたい。


そのパン屋で、一年程前から来るようになった一人のお客さまがいる。

大抵は、近くに住んでいる常連さんや、近くで朝早くから仕事をしている土木工事の人が買って行く。だから、顔馴染みが多い中で、朝からスーツをビシッと決めて買いに来る背の高いあの人は、珍しい。
そして、金髪で肩までのサラサラの髪を一つに括っているその人は、実はちょっと好みでもある。
整った顔で目鼻立ちがクッキリしていて、買って行く時とても紳士に対応してくれるからだ。

毎日ではないけれど、その人が来ると一日ウキウキしてしまう。

深い海のような、青い瞳でニッコリと笑ってくれるので、破壊力抜群なのだ。

その人は、ゆっくりと、パンを選ぶ。

初めの頃は忙しない常連さんに圧倒されていた。
次第に、混雑する時間をずらして来てくれるようになった。
パンの種類が少なくなっているのにその中でじっくりと見て選んでいる。
だから私はついついおせっかいをしてしまっていた。

「今日は、グリーンビーン入りパンがおすすめですよ。」

「眠い朝は、ピリッとコショウの効いたベーコンエピはどうですか?」

なんていう風に。話しかけたいという気持ちも少しあって。

そして、大抵は、私がすすめたパンを買って行ってくれるようになったので、その人が来てくれた日は以前よりもっと嬉しく、ウキウキするようになった。
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