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11. 三週目の水曜 【晃とのデート】
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【着いたよー。】
千鶴は、仕事が終わって電車に乗り込むと、晃へと何時頃駅に着くとメールを送った。
しかし、晃からは返事がなく少し不安に思ったが、電車に揺られ晃の家の最寄り駅に着いた。
途中、連絡先交換してから毎日来る、八戸からのメールに少し返事を返していた。
といっても何の事はない内容で、それでも元気そうな八戸の姿が思い浮かぶそのメールの文章に、いつも千鶴は心が和んでいた。
(うーん…先週みたいに駅にいるかと思ったんだけどなぁ。返事、返って来なかったもんな。…電話しよっと!)
そう思い、スマホを手にするとちょうど着信がきた。
晃からだった。
「もしもしー?晃?メール見た?」
「あーごめん!悪い!今向かうから待ってて!」
「…はーい。気をつけてねー。」
(晃が遅れるなんて珍しい。何かあったのかなぁ…水曜の仕事は早く終わるって言ってたけど、今日は早く終わらなかったのかな?)
そう思いながら、ロータリーへと向かう。
(先週は自転車で来たけど…急いで来るなら車かな?でも、明日も仕事だから違うかなぁ。)
十五分ほどすると、角を曲がって来た、自転車に乗った晃が見えた千鶴は、ホッとした。晃の家からは歩いて十分ほどの距離なのに少し遅かったからだ。
「ごめん!俺のが早く帰れるから油断してたら、寝てた!」
晃は千鶴の近くまで来ると、自転車を降りて謝った。
「もー、返事なかったし心配したよ!でも、疲れてたんだね。ごめんねー?」
「あ、いや…ま、まぁ…。とにかく、行こうぜ!腹減った!」
となぜだか視線を逸らした晃は、そのあとすぐ、そう言って進み始めた。
「あ!待って!今日はどこに行くの?疲れてるなら焼き肉?」
「え?あー…今日はカレーにしようぜ?」
「カレー?いいけど…」
「焼き肉は先週食べたし。俺、今日カレーの気分!な?」
そう言って、カレー屋の方へと自転車を引き、スタスタと一人で向かう晃。
(今日は、駅前の自転車置き場に置いて来ないのね。…手、繋げないじゃん。)
少し遅れて歩き出した千鶴は、そう思った。
信号まで来るとやっと晃は振り返り、千鶴が少し後ろを歩いていた事に気づいて声を掛けた。
「どうした?疲れたか?あ、腹減ったんだろ?大盛りでもいいからな!」
(もう!そんなんじゃないのに…)
晃は店の前に自転車を止めると、やっと千鶴と目を合わせ、
「あー腹減った!俺、大盛りだな!何食べる?」
と言いながら千鶴の肩を押して店へと入った。
「俺は牛肉カレー大盛りで。千鶴は?いつものチーズハチミツカレー?」
「うーん…うん、それにする!」
(晃、私がいつも食べてたカレー、覚えててくれたんだ!)
千鶴は、少し沈んでいた心が、晃のその言葉で浮上した。
カレー屋では、少しお互いの事を話すが、なかなか会話を見つけるのに難しいと思ってしまった千鶴。
理由は、この前の土曜出掛けた事を聞きたかったけれど、あまり聞くと『じゃあ千鶴はどうなの?』と言われそうだから。
同期の人達と出掛けた、それだけならいいのだが、客観的に見ると男子も一緒に遊んでいるのはどう思われるのか千鶴には、良く分からなかった。
それに晃は、あまり感情を表に出さない。大学生の頃、千鶴が男子と話していても顔色を変えなかった。
だから今も、『私は、同期の男女十人で出掛けたよ。楽しかった!』と言えばいいと思い、口に出そうと思ったが、『俺も同期の男女で出掛けた。楽しかった』と言われたら、千鶴は凹むかもしれないと思ったのでその話題は避けたのだ。
「来週の金曜から三泊四日で、研修合宿があるの。そういうのは、晃の会社はある?」
「研修合宿?そんなのあるんだな。俺ん所は無いな。でも、そうか。じゃあ来週も会えないな。」
「も?」
「あ、うん。こ、今週の土曜も同期に誘われてさ。せっかくだから遊ぶ事にしたんだ。」
「…先週とは違う人?」
「いや、同じだよ。研修、今月で終わりだからさ。せっかくなら遊べる時に遊ぼうって。だからさ…今週、千鶴には今日会えたらと思ったんだ。」
(そうなの…でも、まぁ確かにそうね。研修終わったら晃の会社は良く分からないけど、私の所は遠くに配属される人もいるものね。今月だけ…なら。でも何か、心無しか嬉しそう…?私の思い過ごし?)
「そうなのね。じゃあ今週と来週の土曜日は会えないのね。」
「いや…まだ決めてないけど、もしかしたら…。てかさ、水曜もちょっと会えないかも。」
「え?」
「や、ちょっとさー…なんていうか…今日も待ってる間に寝ちゃってさ。体がついていかないっていうか…悪い!慣れたらきっといいんだろうけど、ごめん!」
「…そうね。晃の会社が終わるの早いから、私の仕事が終わるまで時間が空いちゃうもんね。」
「そうなんだよ-。本当ごめん!」
(って事は、半月近く会えなくなるのね。…晃は、淋しいって思ってくれるのかしら。なんか、そんな事思ってないように見えるのは、気のせいかな。)
「…分かった。じゃあせめて、メールくれると嬉しいな。」
「ありがとう!ああ、努力するよ!千鶴も、同期の人達と遊びに行けばいいからな!」
千鶴は、憮然としているがそれには晃は、気づいているのかいないのか、先ほどまでとは違い、晴れやかな顔をしていた。
千鶴は、仕事が終わって電車に乗り込むと、晃へと何時頃駅に着くとメールを送った。
しかし、晃からは返事がなく少し不安に思ったが、電車に揺られ晃の家の最寄り駅に着いた。
途中、連絡先交換してから毎日来る、八戸からのメールに少し返事を返していた。
といっても何の事はない内容で、それでも元気そうな八戸の姿が思い浮かぶそのメールの文章に、いつも千鶴は心が和んでいた。
(うーん…先週みたいに駅にいるかと思ったんだけどなぁ。返事、返って来なかったもんな。…電話しよっと!)
そう思い、スマホを手にするとちょうど着信がきた。
晃からだった。
「もしもしー?晃?メール見た?」
「あーごめん!悪い!今向かうから待ってて!」
「…はーい。気をつけてねー。」
(晃が遅れるなんて珍しい。何かあったのかなぁ…水曜の仕事は早く終わるって言ってたけど、今日は早く終わらなかったのかな?)
そう思いながら、ロータリーへと向かう。
(先週は自転車で来たけど…急いで来るなら車かな?でも、明日も仕事だから違うかなぁ。)
十五分ほどすると、角を曲がって来た、自転車に乗った晃が見えた千鶴は、ホッとした。晃の家からは歩いて十分ほどの距離なのに少し遅かったからだ。
「ごめん!俺のが早く帰れるから油断してたら、寝てた!」
晃は千鶴の近くまで来ると、自転車を降りて謝った。
「もー、返事なかったし心配したよ!でも、疲れてたんだね。ごめんねー?」
「あ、いや…ま、まぁ…。とにかく、行こうぜ!腹減った!」
となぜだか視線を逸らした晃は、そのあとすぐ、そう言って進み始めた。
「あ!待って!今日はどこに行くの?疲れてるなら焼き肉?」
「え?あー…今日はカレーにしようぜ?」
「カレー?いいけど…」
「焼き肉は先週食べたし。俺、今日カレーの気分!な?」
そう言って、カレー屋の方へと自転車を引き、スタスタと一人で向かう晃。
(今日は、駅前の自転車置き場に置いて来ないのね。…手、繋げないじゃん。)
少し遅れて歩き出した千鶴は、そう思った。
信号まで来るとやっと晃は振り返り、千鶴が少し後ろを歩いていた事に気づいて声を掛けた。
「どうした?疲れたか?あ、腹減ったんだろ?大盛りでもいいからな!」
(もう!そんなんじゃないのに…)
晃は店の前に自転車を止めると、やっと千鶴と目を合わせ、
「あー腹減った!俺、大盛りだな!何食べる?」
と言いながら千鶴の肩を押して店へと入った。
「俺は牛肉カレー大盛りで。千鶴は?いつものチーズハチミツカレー?」
「うーん…うん、それにする!」
(晃、私がいつも食べてたカレー、覚えててくれたんだ!)
千鶴は、少し沈んでいた心が、晃のその言葉で浮上した。
カレー屋では、少しお互いの事を話すが、なかなか会話を見つけるのに難しいと思ってしまった千鶴。
理由は、この前の土曜出掛けた事を聞きたかったけれど、あまり聞くと『じゃあ千鶴はどうなの?』と言われそうだから。
同期の人達と出掛けた、それだけならいいのだが、客観的に見ると男子も一緒に遊んでいるのはどう思われるのか千鶴には、良く分からなかった。
それに晃は、あまり感情を表に出さない。大学生の頃、千鶴が男子と話していても顔色を変えなかった。
だから今も、『私は、同期の男女十人で出掛けたよ。楽しかった!』と言えばいいと思い、口に出そうと思ったが、『俺も同期の男女で出掛けた。楽しかった』と言われたら、千鶴は凹むかもしれないと思ったのでその話題は避けたのだ。
「来週の金曜から三泊四日で、研修合宿があるの。そういうのは、晃の会社はある?」
「研修合宿?そんなのあるんだな。俺ん所は無いな。でも、そうか。じゃあ来週も会えないな。」
「も?」
「あ、うん。こ、今週の土曜も同期に誘われてさ。せっかくだから遊ぶ事にしたんだ。」
「…先週とは違う人?」
「いや、同じだよ。研修、今月で終わりだからさ。せっかくなら遊べる時に遊ぼうって。だからさ…今週、千鶴には今日会えたらと思ったんだ。」
(そうなの…でも、まぁ確かにそうね。研修終わったら晃の会社は良く分からないけど、私の所は遠くに配属される人もいるものね。今月だけ…なら。でも何か、心無しか嬉しそう…?私の思い過ごし?)
「そうなのね。じゃあ今週と来週の土曜日は会えないのね。」
「いや…まだ決めてないけど、もしかしたら…。てかさ、水曜もちょっと会えないかも。」
「え?」
「や、ちょっとさー…なんていうか…今日も待ってる間に寝ちゃってさ。体がついていかないっていうか…悪い!慣れたらきっといいんだろうけど、ごめん!」
「…そうね。晃の会社が終わるの早いから、私の仕事が終わるまで時間が空いちゃうもんね。」
「そうなんだよ-。本当ごめん!」
(って事は、半月近く会えなくなるのね。…晃は、淋しいって思ってくれるのかしら。なんか、そんな事思ってないように見えるのは、気のせいかな。)
「…分かった。じゃあせめて、メールくれると嬉しいな。」
「ありがとう!ああ、努力するよ!千鶴も、同期の人達と遊びに行けばいいからな!」
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