【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!

まりぃべる

文字の大きさ
22 / 28

22.心得 

しおりを挟む
 《エーファを見送った時、に戻ります》



 エーファが乗った馬車を見送った後、ケヴィンに騎士隊の仕事へ戻ろうと声を掛けたが断られたフォルクハルト。珍しいとは思ったが、次の瞬間、ケヴィンのを見たとフォルクハルトはなんだか自分の事のようにむず痒い思いがした。


「コリンナ嬢!!
 結婚を視野に僕との事を考えてくれませんか。」


 いつもの副司令官として同僚や後輩を纏める姿ともまた違う、それでいて緊張している姿に胸を打たれたフォルクハルトは、コリンナの隣にいたカールと目が合いケヴィンとコリンナにはばれない程度に口角を上げ合って見守る事とした。

 しかし、コリンナからの返答はなく。それに不安に思ったケヴィンは断られる前に再度口をひらく。


「とりあえず、明日の見学会の後すぐ帰ると言わず、もう少しだけでも滞在日数を伸ばすことは適いませんか?」

「…はい」

「ありがとうございます!

 カール殿も、僕を認めて頂けるように尽力いたしますので、これからもよろしくお願い致します!」


 と、ケヴィンはカールにもそう告げると、頭を何度も下げている。コリンナはそれを見ながら顔を赤らめながらも微笑んでいた。


「…ああ。コリンナは手強いぞ。」


 カールが振り絞ってそう言葉を繋ぐと、ケヴィンは頭を上げる。


「はい!!
 では、急ではありますが明日、見学会が終わった午後、コリンナ嬢と出掛けたいのですが予定は如何ですか?」

「だって、コリンナ。どうするの?」

「え、は、はい!あ、合わせますわ!」

「良かった!では終わったらホテルにお迎えに上がります。コリンナ嬢、また明日!」

「…はい」


 呆気に取られて動く事も出来なかったフォルクハルトより先に、騎士隊の練習場へと向かおうとするケヴィンは足がもつれそうになっている。それに慌ててついて行こうと、カールに素早く視線を向けて頭を下げてから動きだす。


「…ケヴィン!」

「フォルクハルト司令官!?」


 今気がついたとばかりに目を見開いて声を上げるケヴィンに、肩を叩き労いの言葉を掛ける。


「ケヴィン、すごいな!やるじゃないか。それにしても、コリンナ嬢をなぁ…」

「はい、ありがとうございます。騎士隊の心得、遂行しないとと思いまして。」

「ん?心得?」


 確かに、騎士という役職に就くにあたって守らなければならない規律はいろいろとあり、今回オットマーがその内の一つである《素人には手を出すな》を破ったのだ。
 それ以外にも守らなければならない心得は幾つかあるがどの事を指しているのかとフォルクハルトは頭を捻る。


「《やれる時にやる》《後回しにするな》《明日は無いと思って常に全力で》ですかね。
 コリンナ嬢の住むバッヘム領は遠いですし、エーファに対してもかなり仲良くしてくれてましたからね。それに、あの可愛らしい見た目に反して辺境伯軍を持つ家の名にふさわしく騎馬をされるとか。もう…非の打ち所が無いですね。」

「そうか…」


 ケヴィンから言われた、頭の片隅に追いやられていた心得がググッと胸に刺さったような気がしたフォルクハルト。

 そう。本来騎士隊に所属している一員として、明日も変わらぬ日が続くとは限らない。今は幸いにして平和な日々が続いている。だがいつ何時それが崩れるかは分からないのだ。このエルムスホルン国の国王ゲオルクが、いつどこかの国と戦争をすると言い出すとも限らない。今は近隣諸国とも和平条約を結んではいるが、国を守る騎士隊に所属している者として、忘れてはいけない言葉を思い出させてくれたのだ。


「まぁ、騎士隊を辞めようかと思っていた僕が言うのも、って感じですかね。
 でも、だからこそ初心に返って、一からやり直す気持ちで明日の見学会もやりますから!そのまま入隊の流れになる人物を一人でも多く獲得出来るよう頑張ります!」

「ケヴィン…お前はやっぱりすごいよ。」

「えー?尊敬するフォルクハルト司令官に褒められると擽ったいです…
 あ、フォルクハルト司令官は?エーファが帰って何とも思わなかったですか?って、迷惑が減った位にしか思わないですよね。」

「迷惑なんて思ってない!!…あ、すまん。」


 思いのほか大きな声になってしまい、フォルクハルトは謝る。


「…びっくりしました。
 でも、それでしたらホッとしました。
 あーエーファ、しばらく出歩けなくなって残念がってるだろうなぁ。」


 気が抜けたのか、ケヴィンは独り言のように呟く。


「ん?あまり出歩いて無かったんじゃないのか?」

「え?あぁ、今まではそうですね。領地から出ないでほとんどを過ごしてましたから。
 でも、十七の誕生日が過ぎて結婚出来る年齢になったから、結婚相手を探すために出歩く事にしたんです。その矢先、ですから。
 怪我の件は、僕がオットマーにもっと強く止めろって言っておけばよかったのかもしれないんですけどね…」

「なに!?」


 最後は自嘲気味にため息と共に吐くように言うと同時に、フォルクハルトが聞き返す。


「僕がもっと…」

「いや、ケヴィンは何一つ悪くない!その前、なんて言った?」

「え?前?」

「結婚相手を探すために出歩いていたのか?」

「まぁ、端的に言えば…でも実際はそう簡単にはいかないのも分かってると思うんですけどね。
 でも領地に引き籠もってるよりは、出会いがあると思ってディーター兄さんや僕が王都に出掛けてみたら?って提案したんですよ。」

「ケヴィン…そうだったのか。
 じゃあ、しばらくは結婚相手探しはしないというか、領地で静養するって事だよな?」

「そうだと思います。
 エーファは自分で相手を見つけたいと言っていましたが、もし今回のことで諦めたなら、父が縁談の話でも見繕ってくるんじゃないですかね。」

「それはいかん!」

「え?」

「おい、すまんが戻るの遅れる!
 自主練習が終わったら明日の見学会の準備、だよな。」


 フォルクハルトは、駆け出そうとする。


「どうしたんです?
 そうですね、今は隊員にはそう指示してありますから、各自鍛錬しているはずです。
 準備といっても、人数もいますからフォルクハルト司令官が居なくても大丈夫ですけど、何か問題が?」


 そう確認すると、フォルクハルトは急いで手紙を出そうと寮に駆け出そうとする。明日、バルヒェット侯爵家に行くという先触れの手紙だ。今書いて急いで出せば、近いため夕方、遅くとも夜には届くはずだ。


「ケヴィン、いや…ケヴィン義兄さんって呼ぶ日が来るかもしれないと思っておいてくれ!いや、呼びたいわけじゃないが、でもまあ結果的に呼べると期待したい……」

「ええ!?どうしました!?ちょっとよくわからないんですが…とにかく、後のことは僕やっておきますから!気をつけて!」


 フォルクハルトは、そういえばケヴィンの兄のディーターは学院で共に過ごしたな、あいつも義兄になるのか…と思いながら自室へと急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる
恋愛
ルクレツィア=コラユータは、伯爵家の一人娘。七歳の時に母にお使いを頼まれて王都の町はずれの教会を訪れ、そのままそこで育った。 理由は、お家騒動のための避難措置である。 八年が経ち、まもなく成人するルクレツィアは運命の岐路に立たされる。 ★違う作品「手の届かない桃色の果実と言われた少女は、廃れた場所を住処とさせられました」での登場人物が出てきます。が、それを読んでいなくても分かる話となっています。 ☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ていても、違うところが多々あります。 ☆現実世界にも似たような名前や地域名がありますが、全く関係ありません。 ☆植物の効能など、現実世界とは近いけれども異なる場合がありますがまりぃべるの世界観ですので、そこのところご理解いただいた上で読んでいただけると幸いです。

【完結】その令嬢は可憐で清楚な深窓令嬢ではない

まりぃべる
恋愛
王都から少し離れた伯爵領地に住む、アウロラ=フランソンは領地の特産物である馬を領民と共に育てている。 一つ上の兄スティーグは学友から、妹を紹介しろと言われるが毎回断っていた。そしてその事を、寮から帰ってくる度に確認される。 貴族で伯爵家の娘であるアウロラは、そのうちいつかはどこかの家柄の男性と結婚をしなければならないのだと漠然と思っている。ワガママが許されるのなら、自分の好きな乗馬は止めたくなかったし結婚はしたくなかったけれども。 両親は好きにすればいいと思っていたが、父親の知り合いから結婚の打診が来て、まずは会うだけならと受けてしまった。 アウロラは、『仕方ない…いい人だといいなぁ』と思いながら会い、中身を知ろうとまずは友人から始めようと出掛ける事になるのだが、なかなか話も噛み合わないし価値観も違うため会話も出来ない。 そんな姿を見てか相手からは清楚だなんだと言われていたが、相手がある女性を助けた事で「僕達別れよう」と一方的に言われることになった。 あまりの事に驚くが、アウロラもまたある男性と出会い、そして幸せになるお話。 ☆★ ・まりぃべるの世界観です。現実とは常識も考え方も似ているところもあれば、全く違う場合もあります。単語や言葉も、現実世界とは意味や表現が若干違うものもあります。 ・人名、地名など現実世界と似たもしくは同じようではありますが全く関係ありません。 ・王道とは違う、まりぃべるの世界観です。それを分かった上で、暇つぶしにでも楽しんでもらえるととても嬉しいです。 ・書き終えています。順次投稿します。

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

元婚約者に冷たく捨てられた伯爵令嬢、努力が実って王太子の恋人に。今さら跪かれても遅いですわ!

sika
恋愛
幼い頃から完璧な淑女として育てられたクロエは、心から想っていた婚約者に「君の努力は重い」と一言で婚約破棄を突きつけられる。 絶望の淵に立たされた彼女だったが、ある夜、偶然出会った温かな笑みの青年──実は身分を隠した王太子であるノエルと運命的な出会いを果たす。 新たな居場所で才能を咲かせ、彼の隣で花開くクロエ。だが元婚約者が後悔と嫉妬を滲ませ再び現れたとき──彼女は毅然と微笑む。 「貴方の愛を乞われるほど、私の人生は安くありませんわ」 これは、見放された令嬢が愛と誇りを手にする逆転劇。そして、誰より彼女を溺愛する王太子の物語。

私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?

みこと。
恋愛
 鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。 「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。 (あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)  現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。  そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。  なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?  この出会いが、クローディアに新しい道を拓く! ※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。

元婚約者に冷たく捨てられた令嬢、辺境で出会った無愛想な騎士に溺愛される ~今さら戻ってこないでください~

usako
恋愛
婚約者に「平民の娘と結婚する」と一方的に婚約破棄された名門令嬢レティシア。 心が傷ついた彼女はすべてを捨て、辺境の小領地へと旅立つ。 そこで出会ったのは、無口で不器用だが誰よりも誠実な騎士・エドガー。 彼の優しさに癒され、次第に芽生える信頼と恋心。 けれど元婚約者が後悔とともに彼女を探しに来て――「もう遅い」と彼女は微笑む。 ざまぁと溺愛の王道を詰め込んだ、胸キュン辺境ラブストーリー。

『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。 涙を流して見せた彼女だったが── 内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。 実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。 エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。 そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。 彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、 **「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。 「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」 利害一致の契約婚が始まった……はずが、 有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、 気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。 ――白い結婚、どこへ? 「君が笑ってくれるなら、それでいい」 不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。 一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。 婚約破棄ざまぁから始まる、 天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー! ---

処理中です...