【完結】気味が悪い子、と呼ばれた私が嫁ぐ事になりまして

まりぃべる

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18 お別れと、新たな出会い

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 教会の鐘が鳴り、日が一番高い位置になった頃にクラースの葬儀は始まる。


 クラースの葬儀はあのあとからは滞りなく行われた。

 領内の教会から、神父が来てクラースの部屋で祈りを捧げてくれた。オルストールン家の直系の、ごく身近な親族のみの葬儀ではあったがこのテルアール国では一般的な葬儀だ。近親者のみで行うのだ。

 罪を犯し、別室で軟禁状態となったカスペルとカーリン、デニスはクラースの部屋に行く事は許されなかった。クラースに毒があると言われるスイトピーの実をマメだと言って食べさせたのだから、クラースも会いたくないだろうとの、ランメルトとレオポルトの判断だ。
 しかしフレイチェが見た限り、確かに毒を飲まされた事は怒っていたがそれよりもカトリーナからもらった万年筆を取られた事の方が怒っているように見えたのだった。



 祈りが終わり、一人ずつベッドに横たわるクラースへ最期の挨拶を述べると葬儀は終わりを告げる。
 部屋を出ると、今日だけは共に皆で昼食を摂ろうと、参加者が食事を摂る為に大広間へと移動する。

 その時、フレイチェはブラムに呼び止められた。


「ねぇ、フレイチェ。やっぱり君、フレイチェだよね?」

「え?」


 フレイチェはブラムへ視線を向ける。はて、会った事があったのかと考える間も無く、ブラムの後ろから走って来てブラムの腕を勢いよく掴んで叫ぶのは恋人で、ランメルトの伯母のヨランダだ。


「え、ちょっとブラム!この子と知り合いだったの!?
 てか、ランメルトが結婚してたってのにもびっくりしたんだけど!」


 ヨランダはクラースよりも年齢が二つ上だとさっき紹介されていた。なので年齢は五十歳。けれどもとても若く見え、話し方も若く聞こえるし三十代と言っても通るのではないかとフレイチェは思う。二十六歳のブラムと並んでも、親子とは見えず恋人同士といっても全く違和感無かった。


「本当だよね、ランメルトくん、結婚おめでとう。
 それよりもさ、覚えてる?僕の事。」


 ランメルトへは、取って付けたように祝いの言葉を述べるとフレイチェへと視線を送り直した。


「ちょっと、恋人だった、とか言うつもり!?」

「やだなぁ、そんなんじゃないよヨランダ。
 フレイチェはさ、僕が湖で絵を描いてた時、よく見に来てたんだよね。」

(湖?絵を描いて…え?)


 フレイチェは頭を巡らせ、あの別邸に行ってすぐ、湖畔で絵を描いていた少年なのではないかと思った。


「もしかして、湖の絵、描いてた?」

「そうそう!
ねえすごい偶然だね!こんな所で会うなんてさ!」

「結構長く、いろんな絵を描いていたわよね?でも突然いなくなって、どうしていたのかと思ったわ。」

「そう?あー、そうだね。あそこで絵を描いてたら、レオポルト様が僕の絵を見て気に入ってくれてさ、僕のパトロンになってくれたんだ!」

「やだわ、パトロンだなんて!
でも、ブラムの絵が素敵なのはそうね。あなたも見たでしょ?ほら、その辺りにたくさん!」


 そう言って、ヨランダは今歩いている廊下にも点々と飾られている風景画を誇らしげに指した。


「そうだったのね。」

「あの頃はさ、絵が無性に描きたくて。あの湖が好きだから何枚も描いたなぁ。そしたら、レオポルト様がわざわざ僕の所に来て、〝うちで描かないか〟って言ってくれてね、今に至るんだよ。」

「そ!それでずーっと私の恋人!
いい?私はブラムと一緒に居られればそれでいいんだから、ブラムの事誘惑なんてして、取っちゃダメよ!」

「ヨランダ、何言ってるんだ。
フレイチェがそんな事するはずないだろ?言いがかりは止めてくれよ。」


 ヨランダと呼ぶと酷く怒り、名前で呼べと言われたランメルトは子供の頃はヨランダさんと呼んでいた。だが、大人になってからはずっとヨランダと呼んでいる。
そして今も、間に入りフレイチェをグイッと自身へと引き寄せ肩を抱く。


「あぁ、そう。じゃあちゃんと見張っておきなさいよ!
ね、ブラム、行きましょ!」

「あぁ、分かったよ。
 フレイチェも良かったね!今、君はとても生き生きしてるよ。」

「そう…?ありがとう。ブラムさんも、幸せそうね?」

「うん、あの時よりずっとね!あの頃は僕、絵は描きたいけれど貧しくてね。日々どうやって生活していこうかって思ってたからね。
今は、とっても裕福な暮らしをさせてくれるレオポルト様と、ヨランダに感謝しかないよ。」

「んもー、カワイイ事言うんだから!ブラムは!」


 そう言って、ブラムの頬にブチューっと唇を押し付けた。


「ちょっ…!さすがに止めてよ、ヨランダ!」

「あら、こういうのって表現したもん勝ちなのよ?
えーと、フレイチェ?だっけ?あんたもランメルトと早くどうにかなって、子供を授かる事ね!そうすれば、オルストールン家は安泰よ!繁栄してくれなきゃ困るものね!」

「ヨランダ、困るの?」

「そりゃそうよ!私達が生活出来てるのは、侯爵様のおかけでしょ!?今はランメルトが侯爵様なんだもの。ランメルトに頑張ってもらわなくちゃ!」

「あ、そっかぁ!うん、ランメルトくんもフレイチェも、頑張ってね!」


 そう言って、まるでスキップでもするように二人は足早に進んで行った。


「…二人って、金目当てなんじゃなかったの?」


 後ろにいたヨーズアが呟く。


「金目当て、というより、ヒモ、でしょうか。まぁある意味金目当てですね。」


 それにヘリーが応える。


「…何にせよ、敵は居なくなったと言う事かな。」

「そうね。二人共、楽しそうだものね。」


 ランメルトとフレイチェもそう応えると、遅れないように大広間へと向かった。
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