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兄のお迎え
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更に三年が経ち、クラウディオが十歳、アルサイドが十一歳となった。
「アルサイドという少年の家はどこか!?」
午後。
クラウディオが、昼食が終わって夕食の準備の為家を出て山へと向かおうと村の端に差し掛かった時。対面から来た、この貧しい村には全く似合わない、豪華絢爛な二頭引きの馬車を後ろに引き連れた、馬に乗った全身紺色で、髪は少し白髪が混じり始めた男の人に声を掛けられた。
クラウディオはいきなりの事で驚き、言葉に詰まる。
「えっと…」
「知らんのか?アルサイドという、奇跡の聖人であると言われる少年の家だ。」
クラウディオは、この貧しい村には不釣り合いな煌びやかの人達が兄に何の用なのか、果たして教えていいものなのか迷い口ごもった時、大きな声であったから聞こえたのだろう、近くで草刈りをしていたアルサイドと同じ年齢の子が反応した。
「僕、知ってるよ!って、クラウディオ、お前自分の家だろ?あ、お前は仕事があるのか。クラウディオはアルサイドの分も働かないといけないから忙しいもんな。
僕が案内するよ!」
「なんだ、君は兄弟なのか?まぁ、案内してくれるなら誰でもいい。」
「じゃあ、こっち!」
そう言って、クラウディオが一言も発する暇もないまま、二人はそのまま去って行った。
(どうしよう。兄ちゃんに用って、なんだろう!?家に戻った方がいいかな、でも山で今日の夕飯になるものを採ってこないといけないし。急げ!)
クラウディオは家に戻る事も考えたが、自分のしなければならない家の手伝いがある為、それを素早くこなして急いで帰ろうと思った。
この三年で、クラウディオは家の事をいかに効率良くこなせば時間短縮になるのか考え、そして実践していたのだ。
その為、急いで山へ入り、さっさと採って帰ろうといつもに増して神経を研ぎ澄ました。
ーーー
ーー
ー
「ただいま…」
クラウディオが家に帰ると、両親が台所のテーブルを囲んでいる所だった。
「クラウディオ!どこ行ってたのよ!遅かったのね!」
「おおクラウディオ!聞いて驚くなよ!?アルサイドが、国王様から呼び出しが掛かったのだ!!」
「え!?」
「残念だったな、クラウディオ。
国王様にお会いにならないといけないからとアルサイドはすぐに向かったよ。」
(そうだったのか…あんなに煌びやかだったのは、国王様の…。)
「奇跡の聖人であるものね!国王様の為に、働くのだそうよ!うふふ!さすがアルサイドよね!」
両親はそう言いながら手を挙げて喜んでいる。
テーブルの真ん中には、見慣れない、手のひらに乗るほどの大きさの巾着袋が置いてあった。
「どうして兄ちゃんが…」
どうしてこんな貧しい村で生活していたアルサイドの事が分かったのだろうと不思議だった。それに、特別な力のある者が国王の為国の為に仕える事は何ら不思議ではないが、何の連絡もなく迎えが来てすぐに向かわなければならないのはいささか理不尽ではないかと子供ながらにクラウディオは思い、呟いた。
「そりゃぁ、すごい人物だからに決まってるわ!!」
「そうだな!俺達の子供はやっぱりすごかったんだな!!」
母親はそのように楽観的に言い、父親もそのようにほくほく顔で自負していた。
「手当ても頂いたし、今日はお祝いでもするか!
よし、ちょっと出掛けてくる!」
「手当て?」
「そうよ!アルサイドを連れて行くにあたって、人手が足りなくなるだろうからって使いの方がお手当てをくれたのよ!とってもたくさん!!
これで、私達の暮らしも楽になるわー!!」
クラウディオは、両親が何を言っているのかいまいち良く分からなかったが、どうやらアルサイドが出て行ってしまうと農村では困るだろうと、手当てという名のお金をくれたのだとどうにか理解する。だが、父親の言った祝い、とは当の本人が居ないのにやるものなのかと疑問に思った。
それでも、クラウディオの思いとは裏腹に父親はテーブルの上にあった巾着袋から二枚、金貨を取り出してズボンのポケットに突っ込み嬉々として家を出て行く。この村には商店なども無いから、近くの町まで買い出しに行くのだ。
「今日はきっと、見たこともない位のご馳走が食べられるわよ、クラウディオ!」
「…そうなんだ。僕、夕飯採ってきたけど……」
「あ、そうだったわね。ありがとう。じゃ、洗って干しておいてくれる?また明日にでも食べましょ!」
まるでスキップでもするかのように、洗濯物を取り込まないと!と普段はしない家の事をしに母親は外へと出て行ったのを、クラウディオは呆然としたまま、見つめていた。
「アルサイドという少年の家はどこか!?」
午後。
クラウディオが、昼食が終わって夕食の準備の為家を出て山へと向かおうと村の端に差し掛かった時。対面から来た、この貧しい村には全く似合わない、豪華絢爛な二頭引きの馬車を後ろに引き連れた、馬に乗った全身紺色で、髪は少し白髪が混じり始めた男の人に声を掛けられた。
クラウディオはいきなりの事で驚き、言葉に詰まる。
「えっと…」
「知らんのか?アルサイドという、奇跡の聖人であると言われる少年の家だ。」
クラウディオは、この貧しい村には不釣り合いな煌びやかの人達が兄に何の用なのか、果たして教えていいものなのか迷い口ごもった時、大きな声であったから聞こえたのだろう、近くで草刈りをしていたアルサイドと同じ年齢の子が反応した。
「僕、知ってるよ!って、クラウディオ、お前自分の家だろ?あ、お前は仕事があるのか。クラウディオはアルサイドの分も働かないといけないから忙しいもんな。
僕が案内するよ!」
「なんだ、君は兄弟なのか?まぁ、案内してくれるなら誰でもいい。」
「じゃあ、こっち!」
そう言って、クラウディオが一言も発する暇もないまま、二人はそのまま去って行った。
(どうしよう。兄ちゃんに用って、なんだろう!?家に戻った方がいいかな、でも山で今日の夕飯になるものを採ってこないといけないし。急げ!)
クラウディオは家に戻る事も考えたが、自分のしなければならない家の手伝いがある為、それを素早くこなして急いで帰ろうと思った。
この三年で、クラウディオは家の事をいかに効率良くこなせば時間短縮になるのか考え、そして実践していたのだ。
その為、急いで山へ入り、さっさと採って帰ろうといつもに増して神経を研ぎ澄ました。
ーーー
ーー
ー
「ただいま…」
クラウディオが家に帰ると、両親が台所のテーブルを囲んでいる所だった。
「クラウディオ!どこ行ってたのよ!遅かったのね!」
「おおクラウディオ!聞いて驚くなよ!?アルサイドが、国王様から呼び出しが掛かったのだ!!」
「え!?」
「残念だったな、クラウディオ。
国王様にお会いにならないといけないからとアルサイドはすぐに向かったよ。」
(そうだったのか…あんなに煌びやかだったのは、国王様の…。)
「奇跡の聖人であるものね!国王様の為に、働くのだそうよ!うふふ!さすがアルサイドよね!」
両親はそう言いながら手を挙げて喜んでいる。
テーブルの真ん中には、見慣れない、手のひらに乗るほどの大きさの巾着袋が置いてあった。
「どうして兄ちゃんが…」
どうしてこんな貧しい村で生活していたアルサイドの事が分かったのだろうと不思議だった。それに、特別な力のある者が国王の為国の為に仕える事は何ら不思議ではないが、何の連絡もなく迎えが来てすぐに向かわなければならないのはいささか理不尽ではないかと子供ながらにクラウディオは思い、呟いた。
「そりゃぁ、すごい人物だからに決まってるわ!!」
「そうだな!俺達の子供はやっぱりすごかったんだな!!」
母親はそのように楽観的に言い、父親もそのようにほくほく顔で自負していた。
「手当ても頂いたし、今日はお祝いでもするか!
よし、ちょっと出掛けてくる!」
「手当て?」
「そうよ!アルサイドを連れて行くにあたって、人手が足りなくなるだろうからって使いの方がお手当てをくれたのよ!とってもたくさん!!
これで、私達の暮らしも楽になるわー!!」
クラウディオは、両親が何を言っているのかいまいち良く分からなかったが、どうやらアルサイドが出て行ってしまうと農村では困るだろうと、手当てという名のお金をくれたのだとどうにか理解する。だが、父親の言った祝い、とは当の本人が居ないのにやるものなのかと疑問に思った。
それでも、クラウディオの思いとは裏腹に父親はテーブルの上にあった巾着袋から二枚、金貨を取り出してズボンのポケットに突っ込み嬉々として家を出て行く。この村には商店なども無いから、近くの町まで買い出しに行くのだ。
「今日はきっと、見たこともない位のご馳走が食べられるわよ、クラウディオ!」
「…そうなんだ。僕、夕飯採ってきたけど……」
「あ、そうだったわね。ありがとう。じゃ、洗って干しておいてくれる?また明日にでも食べましょ!」
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