5 / 16
連れて行かれた先で
しおりを挟む
「私はヤーバント=アロルドと申します。これから私の事を父であり師と思って下さい。いいですね、私の言葉は絶対ですから。」
そのように、馬車に乗る前に迎えに来た男性に言われたアルサイドであったが、浮かれていて話半分で聞いていた。その為、名前すら覚えていなかった。
(俺が、国の為に必要だって…!すげーじゃん!!
今までの生活とは比べ物にならないくらいイイ生活が出来る予感がするぜ!)
豪華絢爛な馬車に生まれて初めて乗ったアルサイドは、あまりの乗り心地の良さに初めは敷物を叩いたり背もたれにあるクッションに何度も背中を押し付けたりと興奮していたがだんだんとやる事が無くなり、目の前の男性に話しかける事にした。
「ねぇおっさん。俺、国王様に会うのか?」
「…まだ、今のままではお会いになれませんね。
そうですね…一ヶ月猶予を与えます。そこで、礼儀作法から教えますから、きちんと叩き込んで下さい。無礼を働きますと、ご自身の命に関わりますから。」
「うへー、なんだそれ?今からすぐに会うのかと思ったぜ。
命に関わる?そんな大げさな事言わないでくれよ、ま、俺はそんな事言われても怖くも何ともないけどな!」
「…アルサイド様、大袈裟ではありませんよ。国を治めて下さる偉大なお方にはおいそれとお会いになれません。礼儀がなっていなければ、その場で斬り殺されても文句は言えないのです。」
「そ、そうなんだ……でも、俺は奇跡の聖人なんだろ?だったら斬り殺したら国の為に働けないぜ?」
「ですから、そうならない為に一ヶ月でしっかりと諸々覚えていただき、なるべく早く国王様にお会いしていただきたいのです。
…さ、馬車が着くのはまだずいぶんと先ですから、それまではゆっくりと体を休めていて下さい。着きましたら早速、学んでいただきます。時間は無駄には出来ませんのでね。」
そういうと、目の前の男性はまた小窓へと視線を移し、口を閉ざしてしまった。
ーーー
ーー
ー
☆★
【○月×日
なんという事だ。数年前に耳にした噂を調べ、半信半疑で田舎へとやってきたが、これほどまでに教育が必要とは…!!
すぐに国王様に紹介しようとしていたのだが、あの様子ではだめだ。
奇跡の聖人を見つけたのであれば、昇格も約束されたはずであったのに、手筈を整えてからでなければ逆に降格、いやそれだけでは済まないかもしれぬ…。無礼を働けば最悪、家のとり潰しにならないとも限らない。いやはや、一ヶ月で取り繕う事が出来ればいいが……。】
☆★
【○月×△日
田舎の少年を我が屋敷で教育して二週間。やっと作法は身に付いて来たようだ。言葉遣いはまだ粗野な時もあるが、だいぶ改善されたであろう。謁見の時には、粗相が無いといいのだが。
それよりも心配なのは、本当に奇跡の聖人であるのか…?噂では、雷に当たってもケロリとしていたそうな。それに加え、後光が差していたとも聞いたぞ。
なのに、雷を出す事が出来ないとは…。まぁ、過疎な地域であったから、自身の力を引き出す鍛錬など、教える者も居らずやった事もないだろうから、これから鍛錬すればすぐに発揮されるであろうが…。しかし、礼儀作法やなんかは我が屋敷で何とか出来るが、魔力鍛錬は王宮内の機関で専門的に学ぶしかないからな……大丈夫であろうな……?そこで教えるとはいっても、実際に使える者はもうほとんどいないらしく、だから昔の文献を元に、魔力鍛錬を学ばせるらしいが………果たして…。
いや、大丈夫でなければ困る!国王様にはすでに話を通してあるのだから。さぞ期待されているであろう。この少年の話を聞いた時からすでに、私の、いや国の運命は動き出してしまっているのだから………!!】
ーーー
ーー
ー
☆★
そして、どうにか一ヶ月後、アルサイドは国王と対面し、無事に王宮内で奇跡の聖人として生活する事を許されたのである。
(やったぜ!こんな豪華な部屋が俺の部屋だなんてよー!
あのじぃさんの家もびっくりするほど大きかったが、王宮は比べ物にならないほどだぜ!迷子にならないようにしないとな。って、俺にはいつもお供がつくから大丈夫か!!
明日から、『雷の鍛錬をする』って言われたけど、何をするんだろ。前も、『雷を出して』と家庭教師の先生とじぃさんに言われたけど、雷って、空の稲光の事だろ?出せるわけねぇじゃん!
…あ、それを学ぶのか!学んだら、雷を簡単に出せるようになるんだな、きっと!なんてったって、俺は奇跡の聖人なんだからよ!)
アルサイドは、自分が奇跡の聖人であるから、国王から二言三言声を掛けられただけでいとも簡単に王宮へ住む事を許されたと思っている為、そのように楽観的に思うのであった。
そのように、馬車に乗る前に迎えに来た男性に言われたアルサイドであったが、浮かれていて話半分で聞いていた。その為、名前すら覚えていなかった。
(俺が、国の為に必要だって…!すげーじゃん!!
今までの生活とは比べ物にならないくらいイイ生活が出来る予感がするぜ!)
豪華絢爛な馬車に生まれて初めて乗ったアルサイドは、あまりの乗り心地の良さに初めは敷物を叩いたり背もたれにあるクッションに何度も背中を押し付けたりと興奮していたがだんだんとやる事が無くなり、目の前の男性に話しかける事にした。
「ねぇおっさん。俺、国王様に会うのか?」
「…まだ、今のままではお会いになれませんね。
そうですね…一ヶ月猶予を与えます。そこで、礼儀作法から教えますから、きちんと叩き込んで下さい。無礼を働きますと、ご自身の命に関わりますから。」
「うへー、なんだそれ?今からすぐに会うのかと思ったぜ。
命に関わる?そんな大げさな事言わないでくれよ、ま、俺はそんな事言われても怖くも何ともないけどな!」
「…アルサイド様、大袈裟ではありませんよ。国を治めて下さる偉大なお方にはおいそれとお会いになれません。礼儀がなっていなければ、その場で斬り殺されても文句は言えないのです。」
「そ、そうなんだ……でも、俺は奇跡の聖人なんだろ?だったら斬り殺したら国の為に働けないぜ?」
「ですから、そうならない為に一ヶ月でしっかりと諸々覚えていただき、なるべく早く国王様にお会いしていただきたいのです。
…さ、馬車が着くのはまだずいぶんと先ですから、それまではゆっくりと体を休めていて下さい。着きましたら早速、学んでいただきます。時間は無駄には出来ませんのでね。」
そういうと、目の前の男性はまた小窓へと視線を移し、口を閉ざしてしまった。
ーーー
ーー
ー
☆★
【○月×日
なんという事だ。数年前に耳にした噂を調べ、半信半疑で田舎へとやってきたが、これほどまでに教育が必要とは…!!
すぐに国王様に紹介しようとしていたのだが、あの様子ではだめだ。
奇跡の聖人を見つけたのであれば、昇格も約束されたはずであったのに、手筈を整えてからでなければ逆に降格、いやそれだけでは済まないかもしれぬ…。無礼を働けば最悪、家のとり潰しにならないとも限らない。いやはや、一ヶ月で取り繕う事が出来ればいいが……。】
☆★
【○月×△日
田舎の少年を我が屋敷で教育して二週間。やっと作法は身に付いて来たようだ。言葉遣いはまだ粗野な時もあるが、だいぶ改善されたであろう。謁見の時には、粗相が無いといいのだが。
それよりも心配なのは、本当に奇跡の聖人であるのか…?噂では、雷に当たってもケロリとしていたそうな。それに加え、後光が差していたとも聞いたぞ。
なのに、雷を出す事が出来ないとは…。まぁ、過疎な地域であったから、自身の力を引き出す鍛錬など、教える者も居らずやった事もないだろうから、これから鍛錬すればすぐに発揮されるであろうが…。しかし、礼儀作法やなんかは我が屋敷で何とか出来るが、魔力鍛錬は王宮内の機関で専門的に学ぶしかないからな……大丈夫であろうな……?そこで教えるとはいっても、実際に使える者はもうほとんどいないらしく、だから昔の文献を元に、魔力鍛錬を学ばせるらしいが………果たして…。
いや、大丈夫でなければ困る!国王様にはすでに話を通してあるのだから。さぞ期待されているであろう。この少年の話を聞いた時からすでに、私の、いや国の運命は動き出してしまっているのだから………!!】
ーーー
ーー
ー
☆★
そして、どうにか一ヶ月後、アルサイドは国王と対面し、無事に王宮内で奇跡の聖人として生活する事を許されたのである。
(やったぜ!こんな豪華な部屋が俺の部屋だなんてよー!
あのじぃさんの家もびっくりするほど大きかったが、王宮は比べ物にならないほどだぜ!迷子にならないようにしないとな。って、俺にはいつもお供がつくから大丈夫か!!
明日から、『雷の鍛錬をする』って言われたけど、何をするんだろ。前も、『雷を出して』と家庭教師の先生とじぃさんに言われたけど、雷って、空の稲光の事だろ?出せるわけねぇじゃん!
…あ、それを学ぶのか!学んだら、雷を簡単に出せるようになるんだな、きっと!なんてったって、俺は奇跡の聖人なんだからよ!)
アルサイドは、自分が奇跡の聖人であるから、国王から二言三言声を掛けられただけでいとも簡単に王宮へ住む事を許されたと思っている為、そのように楽観的に思うのであった。
569
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!
みっちぇる。
ファンタジー
クランベール男爵家の令嬢リコリスは、実家の経営手腕を欲した国の思惑により、名門ながら困窮するベルデ伯爵家の跡取りキールと政略結婚をする。しかし、キールは外面こそ良いものの、実家が男爵家の支援を受けていることを「恥」と断じ、リコリスを軽んじて愛人と遊び歩く不実な男だった 。
リコリスが命がけで双子のユフィーナとジストを出産した際も、キールは朝帰りをする始末。絶望的な夫婦関係の中で、リコリスは「天使」のように愛らしい我が子たちこそが自分の真の家族であると決意し、育児に没頭する 。
子どもたちが生後六か月を迎え、健やかな成長を祈る「祈健会」が開かれることになった。リコリスは、キールから「男爵家との結婚を恥じている」と聞かされていた義両親の来訪に胃を痛めるが、実際に会ったベルデ伯爵夫妻は―?
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる