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15. ソルディーニ家の庭園にて
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「こちらへどうぞ。」
「あぁ、ありがとう。」
アルフォンシーナは、部屋を出ると庭へと続く廊下へと向かう。
ヴァルフレードは、アルフォンシーナの横に並んで進んで行く。
庭、と言っても昔は城であった庭であるのでかなりの広さであり、また手入れもよくされている。
「アルフォンシーナ、その…先ほどの話なんだけどね。」
ヴァルフレードは、歩きながら、先ほどは思っていても深く話せなかった話題をアルフォンシーナへとしようとする。
「はい?先ほど、ですか?」
「その…バジーリオ伯爵がものすごい勢いで怒っただろう?俺が話していた時に。もしかしたら本当に、俺のせいでアルフォンシーナは、ニコニコと笑わなくなってしまったのかい?」
「あぁ、その事ですね。私は、先ほども申し上げましたように、どうしてそうなったのかはあまり覚えていないのです。けれど、しいて言うのであれば、誰か顔も覚えていないのですが、その人に言われたのです。笑うな、と。それなりに親しくしていたような気がしたのですが、そのような人に言われて、私はとても悲しく思ったのだけは覚えています。私は、人を不快にさせるような表情をしていたのだと、教わったのです。以来、笑うのは止めようとしていたのです。
ですから、私と結婚しても、愛嬌が無いと思うのですけれど…」
「それは…!それって、アルフォンシーナが七歳の時の事?」
「さぁ…そうかもしれません。学校に通う前ですの。あ、こちらへどうぞ。」
庭へと出たアルフォンシーナは、芝生の間にある石畳を歩きながら正面の噴水へと向かう。少し傾斜があり、小高くなったところに噴水がある。そこの脇に四阿があるのでそこに座ろうと案内した。
四阿にある、簡易的なベンチに座ったヴァルフレードは、庭園から外れた、茂みのずいぶん先に別の建物がある事に気づく。
「あれは?」
「あちらは、ブルニルタお姉様達が住んでいる建物ですわ。まだ私が居るので、別棟を建てたそうです。いずれは、お父様とお母様があちらに移り住んで、お姉様とサムエレお義兄様とその子供がこちらの建物に住むそうです。」
「へぇ…素敵だね。」
「はい。毎日ではありませんが、近くに住んでいるのでよく顔を合わせる事が出来ます。」
ヴァルフレードは、それに頷くと、咳払いを一つして真剣な顔つきになりアルフォンシーナへ頭を下げた。
「アルフォンシーナ…ごめん!」
「え?あの、ヴァルフレード様!?」
「今の話を聞くと、たぶん、いや十中八九俺がアルフォンシーナへと言った言葉なのだと思う。それで、君を傷つけてしまっていたなんて本当俺はどうかしている。殴ってくれていい。でも、ごめん!言い訳をさせてくれないだろうか。」
「…そうでしたか。でも今となってはもう、別に気にしておりませんから。」
「いや!…まぁ、気にしてもいない存在だったのかもしれないのだが…俺は、君があまりに可愛くて、このまま学校へ行き礼儀作法を覚えて社交界へ飛び立ってしまったらと怯えてしまって、呟いてしまったんだ。『他の奴には笑いかけないで』と。可愛い笑顔を他の誰にも見られたくなかったんだ。」
「…え?」
(ヴァルフレード様は、なんと言われたの?可愛い、とか言わなかったかしら?え!?しかも、他の奴には笑いかけないでと言ったの?私の笑い方が目に余るものだったからではなく…?)
アルフォンシーナは、そう言われた為に、恥ずかしくもあり、また考えていた。
「俺が、もっと言葉で伝えていればよかった。そうすればアルフォンシーナが傷つく事もなかったのに。俺は本当に馬鹿だ。アルフォンシーナ、本当に済まなかった。」
そう言って再度、座りながら頭を下げたヴァルフレードに、アルフォンシーナは今度こそ言葉を繋いだ。
「ヴァルフレード様、頭をお上げ下さい!でないと、うまくお話し出来ませんわ。ねぇ…きゃ!」
その時、不意に強い風が吹き、アルフォンシーナの長い髪が横に流される。アルフォンシーナは慌てて目を瞑った。
その風が、懐かしい香りをアルフォンシーナの鼻へと運んでくる。爽やかな、清々しささえ覚えるあの香りだ。
「大丈夫かい?アルフォンシーナ。」
風が落ち着き、ヴァルフレードは、アルフォンシーナを覗き込んだ。
アルフォンシーナは、顔を上げ、ヴァルフレードへと問う。
「…ねぇ、ヴァルフレード様。爽やかな香りなのですが、それはヴァルフレード様の香水ですか?」
「ん?香水?俺は…あぁ、もしかしたらベルガモットかな。俺は香水は付けないよ。うちは、細々とだけどベルガモットがなっているからね。領地にいる時にはどうしても染みついてしまうのだろうね。
香水を付けると、その匂いに混ざってしまうからつけない。栽培しているベルガモットで香水もつくっているから、それをつけてもいいのだろうけどね。俺には必要ないからつけていないよ。」
「ベルガモット…」
染みつくほど、たくさんあるのかとアルフォンシーナがそう考えた時、唐突に、実がたわわになっている木々を見渡して香りを堪能している自分を思い出した。それはとても爽やかで、包まれているような感じで。
(そう…そうだわ。この香りはベルガモット。そして、私はこの香りを子供の頃に嗅いでから、とても好きになったのよ。どうして今まで忘れていたのかしら。)
この香りに囲まれた庭で、二回だけではあるがアルフォンシーナは、ヴァルフレードと対面したのだ。そこで話し、案内された短い時間で、アルフォンシーナは、ヴァルフレードに恋をしたのだ。しかし心無い言葉を言われたと傷つき、嫌われたと思い、次の訪問時からは、行かないと決断をしたのだったが。そして、引きこもり、物語の世界へ逃げ込む事で、淡い初恋の思い出に無理矢理蓋をしたのだ。
(私は、ヴァルフレード様とお会いしていたのね。)
「…ヴァルフレード様。私、あなたに初めてお会いした時、物語に出てくる騎士様みたいだと思ったの。」
「うん?俺は軍隊で騎士のようなものだから…え?初めて?アルフォンシーナ、思い出したの?」
「はい。ヴァルフレード様に、ベルガモットの果樹園みたいな所を案内してもらいました。お庭、でしたかしら? 」
「そうか!うん、屋敷の裏だね。アルフォンシーナは、そこを気に入ってくれて。俺も嬉しかったな。…でも、そこで見た可愛い笑顔を独占したくて何気なく発してしまった言葉に、アルフォンシーナは、傷ついてしまったんだよね。」
「もうそれはここだけのお話にしましょう?お父様に知れたら、このお話は無かった事にされてしまうわ。」
「ははっ。それは嫌だね。
あれからずっと俺は、アルフォンシーナだけを求めていたんだから。やっと、アルフォンシーナと婚約の許しを得たんだ。本当だったら、すぐにでも結婚をしたいくらいだ。でも、きっと早くて一年後、かなぁ…。アルフォンシーナ……」
そう言うと、ヴァルフレードはベンチから立ち上がり、アルフォンシーナの横に来てベンチの脇に跪き、アルフォンシーナの右手を軽く取った。
「アルフォンシーナ=ソルディーニ様。これからは今以上に大切に慈しむと国防軍の魂に誓うよ。もしも知らずにアルフォンシーナを傷つけてしまったら俺に怒って欲しい。気持ちを伝えて欲しい。俺は、何度でも謝罪をするし、何度でも俺の気持ちを伝えるよ。今の俺の気持ちは、アルフォンシーナを只一人、愛している。どうか…私と、結婚して下さいませんか。あなたを生涯掛けて守り慈しむ栄誉を私に下さい。」
「……!」
アルフォンシーナは、これ以上ない位、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じた。ヴァルフレードに取られた右手が震えている。それは、ヴァルフレードの緊張からくる震えなのか、アルフォンシーナから発せられる震えなのか。
アルフォンシーナは、口を開こうとするも言葉にならず、じっとヴァルフレードの瞳を見つめた。
「アルフォンシーナ。初めてお会いした日から、私はあなたに囚われたのです。」
ヴァルフレードは、今まで伝えたくても伝えられなかった気持ちをここぞとばかりにアルフォンシーナへと伝える。
「アルフォンシーナ…!」
アルフォンシーナはいつの間にか涙をこぼしている。
ヴァルフレードはそれを見て、とても綺麗だと思った。が、それはとても儚くも見え、より一層放したく無いと思い、ゆっくりと掴んでいた右手を引き寄せる。
アルフォンシーナは、ヴァルフレードへ立たせられた格好となり、そのままゆっくりとヴァルフレードの胸の中に収まった。
自分の胸元にあるアルフォンシーナの頭を慈しむように撫でながら、更に言葉を掛けるヴァルフレード。
「アルフォンシーナ。愛している。愛しているよ。」
アルフォンシーナは、ヴァルフレードの腕の中で嬉しい言葉を聞いていると、いつの間にかアルフォンシーナの顔がほぐれ、泣き笑いの表情ではあるが笑えるようになっていた。
いつまでもそうしていたかったが、遠くから使用人が歩いてくるのが見えたヴァルフレードは、離れ難いと思いながらもゆっくりとアルフォンシーナを引き離す。
「それで、アルフォンシーナ。書面では交わしたけれどもやはりそろそろ先ほどの返事をくれると嬉しいんだが。使用人がこちらへ来ている。昼食に呼ばれるのかもしれないからね。」
アルフォンシーナは、返事をしていなかった事に気づいて、はっとする。
「ごめんなさい、ヴァルフレード様。はい、こちらこそお願いします。」
そう言ったアルフォンシーナは、少しまだぎこちなくはあるが優しくふんわりと笑ったのだ。
「…!!アルフォンシーナ!あぁ!俺の為に笑ってくれたんだね。これからはたくさん、アルフォンシーナに愛を囁くから。アルフォンシーナ、俺に、他の人よりもたくさん笑ってくれれば、いつでも微笑んでいいんだよ。って、ちょっと偉そうかな、ごめんよ。
でもやはり、アルフォンシーナの笑顔は花が咲いたように明るくとても可愛いから、自慢したくなる位だね。」
アルフォンシーナはそう言われ、大げさだなと思った為に今度は声を上げて笑った。
「あぁ、ありがとう。」
アルフォンシーナは、部屋を出ると庭へと続く廊下へと向かう。
ヴァルフレードは、アルフォンシーナの横に並んで進んで行く。
庭、と言っても昔は城であった庭であるのでかなりの広さであり、また手入れもよくされている。
「アルフォンシーナ、その…先ほどの話なんだけどね。」
ヴァルフレードは、歩きながら、先ほどは思っていても深く話せなかった話題をアルフォンシーナへとしようとする。
「はい?先ほど、ですか?」
「その…バジーリオ伯爵がものすごい勢いで怒っただろう?俺が話していた時に。もしかしたら本当に、俺のせいでアルフォンシーナは、ニコニコと笑わなくなってしまったのかい?」
「あぁ、その事ですね。私は、先ほども申し上げましたように、どうしてそうなったのかはあまり覚えていないのです。けれど、しいて言うのであれば、誰か顔も覚えていないのですが、その人に言われたのです。笑うな、と。それなりに親しくしていたような気がしたのですが、そのような人に言われて、私はとても悲しく思ったのだけは覚えています。私は、人を不快にさせるような表情をしていたのだと、教わったのです。以来、笑うのは止めようとしていたのです。
ですから、私と結婚しても、愛嬌が無いと思うのですけれど…」
「それは…!それって、アルフォンシーナが七歳の時の事?」
「さぁ…そうかもしれません。学校に通う前ですの。あ、こちらへどうぞ。」
庭へと出たアルフォンシーナは、芝生の間にある石畳を歩きながら正面の噴水へと向かう。少し傾斜があり、小高くなったところに噴水がある。そこの脇に四阿があるのでそこに座ろうと案内した。
四阿にある、簡易的なベンチに座ったヴァルフレードは、庭園から外れた、茂みのずいぶん先に別の建物がある事に気づく。
「あれは?」
「あちらは、ブルニルタお姉様達が住んでいる建物ですわ。まだ私が居るので、別棟を建てたそうです。いずれは、お父様とお母様があちらに移り住んで、お姉様とサムエレお義兄様とその子供がこちらの建物に住むそうです。」
「へぇ…素敵だね。」
「はい。毎日ではありませんが、近くに住んでいるのでよく顔を合わせる事が出来ます。」
ヴァルフレードは、それに頷くと、咳払いを一つして真剣な顔つきになりアルフォンシーナへ頭を下げた。
「アルフォンシーナ…ごめん!」
「え?あの、ヴァルフレード様!?」
「今の話を聞くと、たぶん、いや十中八九俺がアルフォンシーナへと言った言葉なのだと思う。それで、君を傷つけてしまっていたなんて本当俺はどうかしている。殴ってくれていい。でも、ごめん!言い訳をさせてくれないだろうか。」
「…そうでしたか。でも今となってはもう、別に気にしておりませんから。」
「いや!…まぁ、気にしてもいない存在だったのかもしれないのだが…俺は、君があまりに可愛くて、このまま学校へ行き礼儀作法を覚えて社交界へ飛び立ってしまったらと怯えてしまって、呟いてしまったんだ。『他の奴には笑いかけないで』と。可愛い笑顔を他の誰にも見られたくなかったんだ。」
「…え?」
(ヴァルフレード様は、なんと言われたの?可愛い、とか言わなかったかしら?え!?しかも、他の奴には笑いかけないでと言ったの?私の笑い方が目に余るものだったからではなく…?)
アルフォンシーナは、そう言われた為に、恥ずかしくもあり、また考えていた。
「俺が、もっと言葉で伝えていればよかった。そうすればアルフォンシーナが傷つく事もなかったのに。俺は本当に馬鹿だ。アルフォンシーナ、本当に済まなかった。」
そう言って再度、座りながら頭を下げたヴァルフレードに、アルフォンシーナは今度こそ言葉を繋いだ。
「ヴァルフレード様、頭をお上げ下さい!でないと、うまくお話し出来ませんわ。ねぇ…きゃ!」
その時、不意に強い風が吹き、アルフォンシーナの長い髪が横に流される。アルフォンシーナは慌てて目を瞑った。
その風が、懐かしい香りをアルフォンシーナの鼻へと運んでくる。爽やかな、清々しささえ覚えるあの香りだ。
「大丈夫かい?アルフォンシーナ。」
風が落ち着き、ヴァルフレードは、アルフォンシーナを覗き込んだ。
アルフォンシーナは、顔を上げ、ヴァルフレードへと問う。
「…ねぇ、ヴァルフレード様。爽やかな香りなのですが、それはヴァルフレード様の香水ですか?」
「ん?香水?俺は…あぁ、もしかしたらベルガモットかな。俺は香水は付けないよ。うちは、細々とだけどベルガモットがなっているからね。領地にいる時にはどうしても染みついてしまうのだろうね。
香水を付けると、その匂いに混ざってしまうからつけない。栽培しているベルガモットで香水もつくっているから、それをつけてもいいのだろうけどね。俺には必要ないからつけていないよ。」
「ベルガモット…」
染みつくほど、たくさんあるのかとアルフォンシーナがそう考えた時、唐突に、実がたわわになっている木々を見渡して香りを堪能している自分を思い出した。それはとても爽やかで、包まれているような感じで。
(そう…そうだわ。この香りはベルガモット。そして、私はこの香りを子供の頃に嗅いでから、とても好きになったのよ。どうして今まで忘れていたのかしら。)
この香りに囲まれた庭で、二回だけではあるがアルフォンシーナは、ヴァルフレードと対面したのだ。そこで話し、案内された短い時間で、アルフォンシーナは、ヴァルフレードに恋をしたのだ。しかし心無い言葉を言われたと傷つき、嫌われたと思い、次の訪問時からは、行かないと決断をしたのだったが。そして、引きこもり、物語の世界へ逃げ込む事で、淡い初恋の思い出に無理矢理蓋をしたのだ。
(私は、ヴァルフレード様とお会いしていたのね。)
「…ヴァルフレード様。私、あなたに初めてお会いした時、物語に出てくる騎士様みたいだと思ったの。」
「うん?俺は軍隊で騎士のようなものだから…え?初めて?アルフォンシーナ、思い出したの?」
「はい。ヴァルフレード様に、ベルガモットの果樹園みたいな所を案内してもらいました。お庭、でしたかしら? 」
「そうか!うん、屋敷の裏だね。アルフォンシーナは、そこを気に入ってくれて。俺も嬉しかったな。…でも、そこで見た可愛い笑顔を独占したくて何気なく発してしまった言葉に、アルフォンシーナは、傷ついてしまったんだよね。」
「もうそれはここだけのお話にしましょう?お父様に知れたら、このお話は無かった事にされてしまうわ。」
「ははっ。それは嫌だね。
あれからずっと俺は、アルフォンシーナだけを求めていたんだから。やっと、アルフォンシーナと婚約の許しを得たんだ。本当だったら、すぐにでも結婚をしたいくらいだ。でも、きっと早くて一年後、かなぁ…。アルフォンシーナ……」
そう言うと、ヴァルフレードはベンチから立ち上がり、アルフォンシーナの横に来てベンチの脇に跪き、アルフォンシーナの右手を軽く取った。
「アルフォンシーナ=ソルディーニ様。これからは今以上に大切に慈しむと国防軍の魂に誓うよ。もしも知らずにアルフォンシーナを傷つけてしまったら俺に怒って欲しい。気持ちを伝えて欲しい。俺は、何度でも謝罪をするし、何度でも俺の気持ちを伝えるよ。今の俺の気持ちは、アルフォンシーナを只一人、愛している。どうか…私と、結婚して下さいませんか。あなたを生涯掛けて守り慈しむ栄誉を私に下さい。」
「……!」
アルフォンシーナは、これ以上ない位、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じた。ヴァルフレードに取られた右手が震えている。それは、ヴァルフレードの緊張からくる震えなのか、アルフォンシーナから発せられる震えなのか。
アルフォンシーナは、口を開こうとするも言葉にならず、じっとヴァルフレードの瞳を見つめた。
「アルフォンシーナ。初めてお会いした日から、私はあなたに囚われたのです。」
ヴァルフレードは、今まで伝えたくても伝えられなかった気持ちをここぞとばかりにアルフォンシーナへと伝える。
「アルフォンシーナ…!」
アルフォンシーナはいつの間にか涙をこぼしている。
ヴァルフレードはそれを見て、とても綺麗だと思った。が、それはとても儚くも見え、より一層放したく無いと思い、ゆっくりと掴んでいた右手を引き寄せる。
アルフォンシーナは、ヴァルフレードへ立たせられた格好となり、そのままゆっくりとヴァルフレードの胸の中に収まった。
自分の胸元にあるアルフォンシーナの頭を慈しむように撫でながら、更に言葉を掛けるヴァルフレード。
「アルフォンシーナ。愛している。愛しているよ。」
アルフォンシーナは、ヴァルフレードの腕の中で嬉しい言葉を聞いていると、いつの間にかアルフォンシーナの顔がほぐれ、泣き笑いの表情ではあるが笑えるようになっていた。
いつまでもそうしていたかったが、遠くから使用人が歩いてくるのが見えたヴァルフレードは、離れ難いと思いながらもゆっくりとアルフォンシーナを引き離す。
「それで、アルフォンシーナ。書面では交わしたけれどもやはりそろそろ先ほどの返事をくれると嬉しいんだが。使用人がこちらへ来ている。昼食に呼ばれるのかもしれないからね。」
アルフォンシーナは、返事をしていなかった事に気づいて、はっとする。
「ごめんなさい、ヴァルフレード様。はい、こちらこそお願いします。」
そう言ったアルフォンシーナは、少しまだぎこちなくはあるが優しくふんわりと笑ったのだ。
「…!!アルフォンシーナ!あぁ!俺の為に笑ってくれたんだね。これからはたくさん、アルフォンシーナに愛を囁くから。アルフォンシーナ、俺に、他の人よりもたくさん笑ってくれれば、いつでも微笑んでいいんだよ。って、ちょっと偉そうかな、ごめんよ。
でもやはり、アルフォンシーナの笑顔は花が咲いたように明るくとても可愛いから、自慢したくなる位だね。」
アルフォンシーナはそう言われ、大げさだなと思った為に今度は声を上げて笑った。
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