【完結】周りの友人達が結婚すると言って町を去って行く中、鉱山へ働くために町を出た令嬢は幸せを掴む

まりぃべる

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6. あっさりとした面接

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 山の中に吸い込まれるように空いた坑道は、案外広かった。
人が三人くらい横にゆったりと並んで歩けるほどの広さがあり、天井も少し高めになっている。だが、そこは掘られた穴なのだとアレッシアはえらく感心した。壁面がごつごつとしてえぐれていて、小さなスコップか何かの痕のようだったからだ。
 よく見ると壁面には等間隔に巻き貝が置かれており、その中に油だろう液体が並々と入っていて上に飛び出た細い紙がじりじりと燃えている。その為足元は思ったよりも明るく見えた。


「もうすぐ休憩だでよ、けどまぁ鉱山長のガスパレ様がおるでちょうど挨拶できてよかっただな。」


 そう言って連れて行かれたのは、しばらく進んだ先にある突き当たりの左右の分かれ道を、右に曲がって更に進んだ場所で、広い空間だ。天井もかなり高いので、とても広く感じる。そこは人工的に掘られたのではなく、恐らく自然に出来た広い空間なのだろう。
 そこは、今はほとんど人はいないが、埋め尽くされれば何十人入れるのだろうかとアレッシアは思った。

 辺りには、切り出された剥き出しの長方形の石の机と、石の椅子が無造作にいつくも等間隔に置かれている。加工されているわけではなく、自然の物に少し手を加えただけの机と椅子に、アレッシアは驚いた。


(すごい…!あの椅子は、大きな石をそのまま置いたって感じね。それぞれ大きさも形も違うわ。机も、物を置けるように上部は平らになっているけど、ほとんど形はそのままみたい。ここで造られたのかしら?
それに、山の洞窟の中にこんな広い空間が広がっているなんて…!ここはどういう場所なのかしら。)


「ここは食堂だべ。朝昼晩とここに来て摂るだ。席は自由だでよ。
…あ、いたいた。ガスパレ様ー!」

「なんだチーロ採掘長。サボりか?
…ん?その後ろの奴は?」


 ガスパレ様と呼ばれた人物は、二つほど先のテーブル席に腰を下ろして、誰かと共に向かい合ってお茶を飲んでいた。
こちらを見て口を開いたガスパレという人物は、壮年の男性で髭を生やしている。
背を向けて座っている人は、髪が黒いという事は分かるけれど顔が見えないのでアレッシアにはどのような人かは分からないが、その向かいに座って一緒にいた人にぺこぺこと腰を折って丁寧に断りを入れると、ガスパレはアレッシア達の方へとやってきた。

 ガスパレは背はそれほど高くないが肩幅が大きいからかチーロよりも大きく見える。

 アレッシアを連れてきた男性はチーロという名で、採掘長だ。


「新人だす。入り口におりましたで、連れて来た次第ですだ。」

「ほう。…新人か。いやに痩せてんな。それに女みてぇだ。
まぁ、仕事さえしてくれりゃどんな奴でも雇ってやるから安心しな!
前金は、チーロ、金庫から持って行ってくれ。絶対にくすねるんじゃねぇぞ。」

「わ、分かってますだ!
おい、新人!部屋に案内してやる。あ、ガスパレ様に挨拶をちゃんとしろ!」

「は、はい。ありがとうございます。」


 頭を持たれグイと抑えつれるように下げられ、驚きながらも挨拶を言ったアレッシアは名前を言わなくてもずいぶんとあっさり決まったと思った。





☆★

 それからすぐにチーロは付いてこいと歩き出す。アレッシアは、前を歩くチーロに後ろを振り向かれて聞かれた。


「んだば新人。名前は何言うと?」

「はい。アレッシアです。」

「ふうん…で、前金はどうすっべ?お前さんに直接手渡してもいいけんど、部屋に大金を置いたらば盗まれっかもしれねぇぞ。部屋は共同だべ。」

「! 」

「そりゃいけねぇよなぁ。せっかく賃金の高え鉱山へ来たってのによ。
んだば、届けてやろっか?実家か?それとも後見人の家け?」

「え、いいのですか?」

「鉱山に来たば、すぐにゃ帰れんでよ。わいが届けちゃる。
じゃけん、手数料がいるで。一割。ええな?」

「一割…?」

「んだー!当たりめえだ!わいも慈善事業じゃ生活出来んき。
それとも、なんか?盗まれんのを怯えなぎゃら自分で持っとるけ?ま、それでもえーけんど。」


 アレッシアは考える。鉱山に来たらすぐには帰れないとチーロは言った。今から一度持って帰るのはダメなのだろうか。


「今からその前金を持って、家に置いてくるのはいけませんか?」

「だめに決まっとるぎゃー!それでトンズラするかもしんねぇし。今日からおめぇはここの作業員だ。最低でも三カ月は逃げらんねぇべ。」


(三カ月…学校の授業料支払いには間に合うかしら?
それよりこの人にお願いした方が無難なのかもしれないわね。)


「分かりました。チーロさん、お願い出来ますか?」

「ええよ!一割もらえりゃちゃーんと届けちゃる!任せとき!」


 途端に鼻歌を歌いだしたチーロは、途中で扉のついた部屋ーー剥き出しの土壁に木の板を打ちつけたような扉で、開閉出来る扉ーーの前で待て、と言われて中に入っていき、少しして戻ってきてまた歩き出す。手には、巾着の袋を持っていた。


「これが前金さ。この分しっかり働くだぞ?こっから、二枚、もらうで。」


 片手に乗るほどの大きさの巾着に、ずっしりと入っているのは硬貨であった。その袋からアレッシアの目の前で二枚、金貨を抜くと懐へ忍ばせたチーロは、確認してとアレッシアへ巾着を渡す。


「不正があったと言われちゃかなわん。中も本物の金貨じゃろ?ええか?この二枚だけで、確実にお前さんの言うところまでを届けちゃるでな。」

「はい。よろしくお願いします。」

「おうよ、任せとき!」


 チーロは、それがさも偉い事だと言わんばかりに胸を叩いて鼻を鳴らした。
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