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23. 事後報告
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「本当に良かったのかしら?」
「あら、何を言っているの?貴女にはもったいなかったわ。あんなお荷物!…ところで、あの女も居たらしいじゃない!なんで呼んでくれなかったの?私も見てみたかったわ!」
休み明け、朝学院へ行くとクラーラはシャーロテに家であった婚約を白紙に戻す話をしたのだ。今日も、普段通り早く来ているので教室にはほとんど人はいない。教室に他にいる人は、本を読んでいる。
シャーロテは、マルグレーテとも口悪く言っているけれど友人となった。マルグレーテの名前を出してしまうと仲良くなった事が周囲にもバレてしまい、マルグレーテのやっている〝仕事〟がうまくいかなくなるといけないからと敢えてそう言っていたのだ。
「除け者になんてしてないからね、シャーロテ。お父様が声を掛けて下さったの。娘を持つ親として、娘が悪い男に報復をされるかもしれないのは見過ごせないのですって。」
「あら!いいお父様じゃない!うちのお父様は…家の事と、国の事しか考えていないわよ。」
シャローテは口元を尖らせ、少しふて腐れながらそう言った。
「貴族だもの、しかもオルリック公爵家は現国王陛下のご兄弟の間柄だもの。仕方ないわよ。」
「あーあ!クラーラの父親みたいに、貴族らしくない人がお父様だったらなぁ!」
「シャーロテ…」
「あら!分かっているわよ、自分の立場位。でも、思うだけはいいでしょ?…ごめんね、クラーラの前くらいよ、私が弱音吐けるのは。」
クラーラは、シャローテのその明け透けな感じをいつも好ましいと思っていた。公爵令嬢であるのに、全く偉ぶらず、下位貴族の自分とまるで昔からの幼馴染みのように接してくれる。だから自分も、素直になれるのだ。
そんなクラーラに、力になりたいと思わないわけがない。
「そう?ならどんどん吐いて!上手い言葉を掛けてあげられないけれど…。」
「だからいいのよ。クラーラと友人になれたのは宝ね!私がどこかに嫁いでも、クラーラには手紙を書くからね、嫌とか思わないでちょうだい。」
「何言ってるのよ、思うわけないわ!」
「良かったわ。クラーラも、誰に嫁ぐのかしら?本当、あんな男から解放されたから、次は信頼できる人がいいわよねぇ。」
「そうだけど…でも私婚約なんてもう出来ないと思うわ。」
クラーラは少し俯いてそう言った。
自分の有責ではないにしろ、一度結んだ婚約を白紙に戻した令嬢であるから、こんな自分と婚約を結ぶ人なんて居ないと思っていた。
「あら、どうして?クラーラは魅力的よ?きっと、婚約を白紙に戻した事を皆が知ったら、申し込みが殺到よ!これから大変になるわよ!」
「そんな事…!」
ガタン!ガダッ、ガタン!!
「!?」
「!?」
大きな音を立て、椅子と机に足を引っ掛けながら席を立ち、扉にまで体をぶつけて教室を出て行ったのは、ラグンフリズ=フォントリアー。いつも颯爽と歩いているのに今日はどこか鈍くさく、クラーラとシャーロテは笑いそうになりながらも声を出した。
「だ、大丈夫かしら?」
「本当、分かりやす!ええ、クラーラの心配している部分では、大丈夫だと思うわよ。そうじゃない部分は、大丈夫じゃないかもしれないけれど。」
「え?」
「フフフ。さ、お手洗いに行きましょ!付いてきてくれる?」
「分かったわ。もうそろそろ、他の生徒も登校して来る頃ですもんね。」
そう言って、シャーロテとクラーラも、席を立った。
☆★
そして、次の日。
「あの男、学院を辞めたのですってね。」
シャーロテは、登校して早々、クラーラにそう話した。
「えっ!…そうなの。」
あの男、とはもちろんヘンリクだ。クラーラは、父が言っていた事が実現されるのだなと思った。
学院を離れ、罪を償う為に。
「そんな暗い顔しないの!辞める人は珍しいけれど、居ないわけではないし、クラーラの気にする所ではないわよ?」
「ええ…そうね。」
クラーラは、好きになろう、いや婚約者と決まったのだからといずれは夫として共に過ごすのだと寄り添おうと努力していた。そんな一度は婚約者として共に時間を過ごした相手に、少しだけ思いをはせた。
「そういえばもうすぐ、年末年始のお休みだわ!クラーラは、領地へ帰るの?」
暗い顔になったクラーラに、もうその話は終わりとばかりにシャローテは明るい話題を振る。
学院に入学したのが九月。それから三ヶ月も経ったのか、とその言葉にクラーラは思った。
十二月の終わりの一週間と、一月の始めの一週間がが休みになるのだ。
その長期休暇にタウンハウスや寮から通っていた生徒は、領地に帰る者も居る。何らかの事情があって帰らない者は、寮で過ごしても良くなっている。
「ええ。シャーロテも?」
「そうね。どこかで国王陛下に挨拶に来ないといけないけれど、帰るわ。」
「そっか。じゃあお互い会えなくてさみしくなるけれど、ゆっくり過ごしてね!また学院で会いましょう?」
そう言って、シャーロテはクラーラに微笑んだ。
クラーラもまた、領地でゆっくり過ごし、また新学期も頑張ろうと思って微笑んだ。
「あら、何を言っているの?貴女にはもったいなかったわ。あんなお荷物!…ところで、あの女も居たらしいじゃない!なんで呼んでくれなかったの?私も見てみたかったわ!」
休み明け、朝学院へ行くとクラーラはシャーロテに家であった婚約を白紙に戻す話をしたのだ。今日も、普段通り早く来ているので教室にはほとんど人はいない。教室に他にいる人は、本を読んでいる。
シャーロテは、マルグレーテとも口悪く言っているけれど友人となった。マルグレーテの名前を出してしまうと仲良くなった事が周囲にもバレてしまい、マルグレーテのやっている〝仕事〟がうまくいかなくなるといけないからと敢えてそう言っていたのだ。
「除け者になんてしてないからね、シャーロテ。お父様が声を掛けて下さったの。娘を持つ親として、娘が悪い男に報復をされるかもしれないのは見過ごせないのですって。」
「あら!いいお父様じゃない!うちのお父様は…家の事と、国の事しか考えていないわよ。」
シャローテは口元を尖らせ、少しふて腐れながらそう言った。
「貴族だもの、しかもオルリック公爵家は現国王陛下のご兄弟の間柄だもの。仕方ないわよ。」
「あーあ!クラーラの父親みたいに、貴族らしくない人がお父様だったらなぁ!」
「シャーロテ…」
「あら!分かっているわよ、自分の立場位。でも、思うだけはいいでしょ?…ごめんね、クラーラの前くらいよ、私が弱音吐けるのは。」
クラーラは、シャローテのその明け透けな感じをいつも好ましいと思っていた。公爵令嬢であるのに、全く偉ぶらず、下位貴族の自分とまるで昔からの幼馴染みのように接してくれる。だから自分も、素直になれるのだ。
そんなクラーラに、力になりたいと思わないわけがない。
「そう?ならどんどん吐いて!上手い言葉を掛けてあげられないけれど…。」
「だからいいのよ。クラーラと友人になれたのは宝ね!私がどこかに嫁いでも、クラーラには手紙を書くからね、嫌とか思わないでちょうだい。」
「何言ってるのよ、思うわけないわ!」
「良かったわ。クラーラも、誰に嫁ぐのかしら?本当、あんな男から解放されたから、次は信頼できる人がいいわよねぇ。」
「そうだけど…でも私婚約なんてもう出来ないと思うわ。」
クラーラは少し俯いてそう言った。
自分の有責ではないにしろ、一度結んだ婚約を白紙に戻した令嬢であるから、こんな自分と婚約を結ぶ人なんて居ないと思っていた。
「あら、どうして?クラーラは魅力的よ?きっと、婚約を白紙に戻した事を皆が知ったら、申し込みが殺到よ!これから大変になるわよ!」
「そんな事…!」
ガタン!ガダッ、ガタン!!
「!?」
「!?」
大きな音を立て、椅子と机に足を引っ掛けながら席を立ち、扉にまで体をぶつけて教室を出て行ったのは、ラグンフリズ=フォントリアー。いつも颯爽と歩いているのに今日はどこか鈍くさく、クラーラとシャーロテは笑いそうになりながらも声を出した。
「だ、大丈夫かしら?」
「本当、分かりやす!ええ、クラーラの心配している部分では、大丈夫だと思うわよ。そうじゃない部分は、大丈夫じゃないかもしれないけれど。」
「え?」
「フフフ。さ、お手洗いに行きましょ!付いてきてくれる?」
「分かったわ。もうそろそろ、他の生徒も登校して来る頃ですもんね。」
そう言って、シャーロテとクラーラも、席を立った。
☆★
そして、次の日。
「あの男、学院を辞めたのですってね。」
シャーロテは、登校して早々、クラーラにそう話した。
「えっ!…そうなの。」
あの男、とはもちろんヘンリクだ。クラーラは、父が言っていた事が実現されるのだなと思った。
学院を離れ、罪を償う為に。
「そんな暗い顔しないの!辞める人は珍しいけれど、居ないわけではないし、クラーラの気にする所ではないわよ?」
「ええ…そうね。」
クラーラは、好きになろう、いや婚約者と決まったのだからといずれは夫として共に過ごすのだと寄り添おうと努力していた。そんな一度は婚約者として共に時間を過ごした相手に、少しだけ思いをはせた。
「そういえばもうすぐ、年末年始のお休みだわ!クラーラは、領地へ帰るの?」
暗い顔になったクラーラに、もうその話は終わりとばかりにシャローテは明るい話題を振る。
学院に入学したのが九月。それから三ヶ月も経ったのか、とその言葉にクラーラは思った。
十二月の終わりの一週間と、一月の始めの一週間がが休みになるのだ。
その長期休暇にタウンハウスや寮から通っていた生徒は、領地に帰る者も居る。何らかの事情があって帰らない者は、寮で過ごしても良くなっている。
「ええ。シャーロテも?」
「そうね。どこかで国王陛下に挨拶に来ないといけないけれど、帰るわ。」
「そっか。じゃあお互い会えなくてさみしくなるけれど、ゆっくり過ごしてね!また学院で会いましょう?」
そう言って、シャーロテはクラーラに微笑んだ。
クラーラもまた、領地でゆっくり過ごし、また新学期も頑張ろうと思って微笑んだ。
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