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31. 訪れた人
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クラーラが卒業して、カントリーハウスへ帰ってきて一週間が経った。
フォントリアー家の人々がマグヌッセン家を訪れた。
「ご足労かけました。どうぞ、お入り下さい。」
クラーラの父ティーオドルは、執事のイエスタと共に出迎えをした。そして訪れたラグンフリズとその父モウリッツに自らそう声を掛け、応接室へと案内した。
ティーオドルは、モウリッツとは領地で作った陶器を海外へと輸出してもらう為取引がある。また、険しい山を挟んでではあるが隣の領地であるので、それなりに親しい仲である。しかし、ティーオドルは来てくれた理由に緊張しているのだ。
モウリッツは、息子から愛する女性が出来たと聞いた時から、内々にティーオドルへ婚約の打診をしていた。
父親同士で子供達には内緒で話し合い、互いに卒業するまでは婚約発表を控える事にまとまった。
だが、社交シーズンになると、クラーラへの誘いがどうしてもきてしまう。だから婚約発表まではしなくとも、ラグンフリズが迎えに行き、ダンスも踊った。
すると、なんとなく察する者はクラーラを諦め、誘いも減った。
しかし、はっきりと婚約発表していないからとチャンスがあるはずだと勘違いした猛者がクラーラにダンスやエスコートの誘いを懲りずに申し出る者もいた。
その度にクラーラはダンスを受け、エスコートはさすがに断っていたが少し嫌気が差していた。
その為、次の年の社交シーズンは最低限の物しか出席しないように対策をした。
そんな苦労ももうすぐ終わる。そのように皆思っていた。
「ありがとう、ティーオドル。なんだか、緊張するな。」
「そうだな。さ、座ってくれ。」
今日は、改めて本格的に婚約を結ぶ為に集まったのだ。
「まず。えー、モウリッツよ、フォントリアー侯爵家の領主夫人に、クラーラを嫁がせてよいのだろうか。」
「ティーオドル。もちろんだ。うちは代々の海運業を営んでいる為、一般的な領主夫人とは異なるだろうが、ラグンフリズが選んだ女性であれば構わない。ラグンフリズ、きちんと自分の言葉で言ってみなさい。」
「はい。ティーオドル=マグヌッセン伯爵殿、私ラグンフリズ=フォントリアーはクラーラ=マグヌッセンを心より大切に想っております。これからも大事に、幸せにしますからどうか、クラーラ嬢と結婚させて下さい。」
ラグンフリズはティーオドルの目をしっかりと視線を合わせそう言って頭を下げた。
「うむ。クラーラはどうだい?」
「はい…。私クラーラ=マグヌッセンは、ラグンフリズ=フォントリアー様をお慕い申し上げております。出来る事であれば、傍で支えていきたいです。」
「よく言った!うちは、海外に長く出掛けてしまう事もあるが、その辺りは大丈夫かな?」
「はい…。」
「その時は一緒に行くよ。」
「そうかそうか!ならもっと船をイイ物にして、もっと安定した船にせんとなぁ。婚約祝いだな!」
「モウリッツの船はここら辺りの船としては一番丈夫で質の良いものだろう?これ以上なんてあるのか?」
「職人は、今よりもっと、と高みを目指す者もいるからな!しかし、もし一緒に航海へ出て酔われてしまったらその時はラグンフリズ、お前が支えるんだぞ。」
「はい、もちろんです。」
「ありがとう。よろしく頼んだぞ。…よし!じゃあ固い事はここまでだ!書類作成はまた明日にしよう。飲めるか?食事もどうだ。泊まっていけばいい。モウリッツよ、談話室へ行こう!」
「お?いいのか?じゃあ飲みながら久しぶりにビリヤードやるか?」
そう言いながら二人の父親は立ち上がり、向かいの談話室へと行ってしまった。
残された若い二人は、顔を見合わせ、どちらかともなく笑い合うと、喜びあった。
「やった!これで晴れて結婚できる!」
「ウフフ。そうね。夢みたいだわ。嬉しい!」
クラーラは、一度婚約をしていた為、再び婚約を結ぶ事が出来るなんて思いもしなかった。
だが、恋をしてしまった。
いつの間にか、ヘンリクとは違い、クラーラを尊重してくれるラグンフリズと添い遂げたいと思っていた。
ラグンフリズの何気ない手紙や話す言葉にいつも心を温かくしてもらっていた。
そしてついに、婚約を結ぶ事となる。今度からは、婚約者として社交シーズンにも出席する事が出来る。こんなに社交シーズンが待ち遠しいと思う事は無かった。
フォントリアー家の人々がマグヌッセン家を訪れた。
「ご足労かけました。どうぞ、お入り下さい。」
クラーラの父ティーオドルは、執事のイエスタと共に出迎えをした。そして訪れたラグンフリズとその父モウリッツに自らそう声を掛け、応接室へと案内した。
ティーオドルは、モウリッツとは領地で作った陶器を海外へと輸出してもらう為取引がある。また、険しい山を挟んでではあるが隣の領地であるので、それなりに親しい仲である。しかし、ティーオドルは来てくれた理由に緊張しているのだ。
モウリッツは、息子から愛する女性が出来たと聞いた時から、内々にティーオドルへ婚約の打診をしていた。
父親同士で子供達には内緒で話し合い、互いに卒業するまでは婚約発表を控える事にまとまった。
だが、社交シーズンになると、クラーラへの誘いがどうしてもきてしまう。だから婚約発表まではしなくとも、ラグンフリズが迎えに行き、ダンスも踊った。
すると、なんとなく察する者はクラーラを諦め、誘いも減った。
しかし、はっきりと婚約発表していないからとチャンスがあるはずだと勘違いした猛者がクラーラにダンスやエスコートの誘いを懲りずに申し出る者もいた。
その度にクラーラはダンスを受け、エスコートはさすがに断っていたが少し嫌気が差していた。
その為、次の年の社交シーズンは最低限の物しか出席しないように対策をした。
そんな苦労ももうすぐ終わる。そのように皆思っていた。
「ありがとう、ティーオドル。なんだか、緊張するな。」
「そうだな。さ、座ってくれ。」
今日は、改めて本格的に婚約を結ぶ為に集まったのだ。
「まず。えー、モウリッツよ、フォントリアー侯爵家の領主夫人に、クラーラを嫁がせてよいのだろうか。」
「ティーオドル。もちろんだ。うちは代々の海運業を営んでいる為、一般的な領主夫人とは異なるだろうが、ラグンフリズが選んだ女性であれば構わない。ラグンフリズ、きちんと自分の言葉で言ってみなさい。」
「はい。ティーオドル=マグヌッセン伯爵殿、私ラグンフリズ=フォントリアーはクラーラ=マグヌッセンを心より大切に想っております。これからも大事に、幸せにしますからどうか、クラーラ嬢と結婚させて下さい。」
ラグンフリズはティーオドルの目をしっかりと視線を合わせそう言って頭を下げた。
「うむ。クラーラはどうだい?」
「はい…。私クラーラ=マグヌッセンは、ラグンフリズ=フォントリアー様をお慕い申し上げております。出来る事であれば、傍で支えていきたいです。」
「よく言った!うちは、海外に長く出掛けてしまう事もあるが、その辺りは大丈夫かな?」
「はい…。」
「その時は一緒に行くよ。」
「そうかそうか!ならもっと船をイイ物にして、もっと安定した船にせんとなぁ。婚約祝いだな!」
「モウリッツの船はここら辺りの船としては一番丈夫で質の良いものだろう?これ以上なんてあるのか?」
「職人は、今よりもっと、と高みを目指す者もいるからな!しかし、もし一緒に航海へ出て酔われてしまったらその時はラグンフリズ、お前が支えるんだぞ。」
「はい、もちろんです。」
「ありがとう。よろしく頼んだぞ。…よし!じゃあ固い事はここまでだ!書類作成はまた明日にしよう。飲めるか?食事もどうだ。泊まっていけばいい。モウリッツよ、談話室へ行こう!」
「お?いいのか?じゃあ飲みながら久しぶりにビリヤードやるか?」
そう言いながら二人の父親は立ち上がり、向かいの談話室へと行ってしまった。
残された若い二人は、顔を見合わせ、どちらかともなく笑い合うと、喜びあった。
「やった!これで晴れて結婚できる!」
「ウフフ。そうね。夢みたいだわ。嬉しい!」
クラーラは、一度婚約をしていた為、再び婚約を結ぶ事が出来るなんて思いもしなかった。
だが、恋をしてしまった。
いつの間にか、ヘンリクとは違い、クラーラを尊重してくれるラグンフリズと添い遂げたいと思っていた。
ラグンフリズの何気ない手紙や話す言葉にいつも心を温かくしてもらっていた。
そしてついに、婚約を結ぶ事となる。今度からは、婚約者として社交シーズンにも出席する事が出来る。こんなに社交シーズンが待ち遠しいと思う事は無かった。
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