偽りの聖女として捧げられた修道女、魔王と呼ばれる神官様のお手伝いさんとして幸せを掴む

今晩葉ミチル

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風呂場

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 メリッサとダークが教会に戻る。暖炉の火は消えていた。
 隠し階段の傍でリトスが立っていた。メリッサたちの姿を見て、歓声をあげた。
「おかえり! 相変わらず仲がよさそうだね!」
「ちゃかしている暇があったらどけよ」
「ダークは冷たいなぁ。照れ隠しは身体に毒だよ」
 リトスは唇を尖らせたが、すぐに笑顔になる。

「まあ、長年しみついたツンデレ癖は簡単に直らないよね。あんたの代わりに、メリッサを風呂場に案内してあげるよ」

「勝手にしろ。俺はもう寝るぜ」

 ダークは教会の門を施錠すると、足早に隠し階段を降りて行った。
 リトスはニヤついていた。
「素直じゃないなぁ……メリッサ、あんな奴だけど大切にしてあげてね」
「もちろんです、できる事は何でもやります」
「いい心がけだね! 明日に備えて、今はゆっくりと休もう。ダークと距離を詰めるのはその時だ!」
 リトスは天井に向けて右の拳を突き出した。妙に気合いが入ったまま、階段を降りていく。
 メリッサは両頬を赤らめたまま、リトスに続いてゆっくりと階段を降りる。床を元の位置に戻して、外から階段が見えないようにしておいた。
 リトスは腕を振りながら部屋に戻る。メリッサも続こうとすると、白いフェイスタオルとバスタオルを手渡された。
「すぐに出発しよう。風呂はできているよ!」
「私が入っても良いのですか?」
「もちろんだよ! 頑張ったご褒美だよ」
 リトスがウィンクをすると、メリッサは胸をなでおろした。
 正直なところ、かなり疲れている。汗を流せるのはありがたいと感じていた。
「お恵みに感謝します」
「固くならなくていいよ」
 リトスは片手をパタパタと振る。
 しばらく歩いた所に脱衣場があり、ドアを隔てて風呂場が続く。脱衣場も風呂場も、天井に蔓延る光る蔦が静かに照らす。脱衣場には飲み水用の水路があり、風呂場には二種類の水路がある。
 冷たい水がそのまま流れる水路と、水を薪で温めてから浴槽に流すための水路だ。前者は湯加減調整の為、後者は浴槽に流す為に利用される。敷居を動かせば水路同士がつながり、お湯の温度を調整できるのだという。
「あたしに難しい話は分からないけど、神官どもの話だと、川の水をうまく利用しているらしいね。崖があるから溜まったお湯を捨てるのも簡単なんだって」
「すごいですね。よくこんな仕組みを思いつきましたね。工事も大変だったと思います」
「そこらへんあたしにはよく分からないけど、神官どもはいつも大工に感謝しているね。さあ、難しい話は置いておいて、風呂に入ろう!」
 リトスは桶を使って軽く身体を流してから、湯舟に浸かる。
 メリッサも桶で汗を流す。丁度いい温度で、心地いい。湯舟につかると、じんわりと疲れが取れていく。

「気持ちいいです」

「良かった、風呂に連れてきた甲斐があったよ!」

 リトスの笑顔は輝いていた。
 メリッサは安堵の溜め息を吐く。
「このまま眠れそうです」
「寝るのは部屋に帰ってからにしよう。メリッサが溺れたら、あたしが怒られちゃう!」
 言いながら、リトスは大笑いしていた。
 メリッサも笑いがこぼれる。

「明日も頑張れそうです」

「ダークも言っていたけど、頑張りすぎないようにね」

 リトスに釘を刺されるが、メリッサは微笑んだ。
「無理をしないように心がけます」
「本当に頼むよ」
 二人で笑い合い、ゆっくりとお湯に浸かった。
 のぼせそうになったら、脱衣場の水路から、木のコップで水をすくって飲める。
 部屋に戻ると、リトスは予備のマットと布団を、手早く広げる。枕も用意していた。
「本当は恋バナを聞きたかったけど、疲れたからまた今度にするよ。おやすみ」
「おやすみなさいませ。いろいろありがとうございました」
 二人はあっという間に眠りについた。やはり疲れていたのだ。
 メリッサは夢の中でも洗い物をしていたが、幸せな夢に感じていた。ダークを始め、周囲の人たちの優しさや温かさを感じていた。
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