偽りの聖女として捧げられた修道女、魔王と呼ばれる神官様のお手伝いさんとして幸せを掴む

今晩葉ミチル

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幕間〜シルバー・レインの思惑〜

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 リベリオン帝国の東部地方は、ごく一部を除いて荒地が広がっている。毎日のように灼熱の太陽に照らされる。
 かつてはクレシェンド王国の領土であったが、つい最近闇の眷属が奪い取った。闇の眷属は、水源のあるごく一部の地域に居住している。日頃なら、日干しレンガで造られた白い街並みで、人々が物や情報を交換している。

 時折襲撃があるが、リベリオン帝国東部地方担当者シルバー・レインを中心にして蹴散らしていた。

 シルバーは銀髪の縦ロールが印象的な小柄な少女だ。黒を基調にした、白いフリルとレースで装飾されたドレスを身につけている。胸の部分には、大きな黄色いリボンがくっついていた。
 不適な笑みを浮かべてワールド・スピリットを放つ。

「デッドリー・ポイズン、ヴェリアス・ビースト」

 虚空から何体もの猛獣が現れる。黒紫色の体毛を生やし、黄色い瞳をギラつかせている。獅子、虎、ヒョウ、熊など形状は様々であるが、いずれも体内に猛毒を宿している。
 鋭い爪や牙だけでなく、猛毒も致命傷になる。
 そんな猛獣たちを、シルバーはその気になれば無限に呼び出せる。
 襲撃者たちは恐怖と絶望に打ちひしがれた。
 それに加えて、突然の来訪者がいた。
 空間の歪みから一人の男性が出現した。ダーク・スカイであった。
 襲撃者たちは一斉に逃げ出した。

「魔王だ! 勝てるはずがない!」

「ミネルバ様に報告だ!」

 勝敗は明らかであった。
 ダークは眉をひそめた。
「シルバー、戦況が危なかったんじゃねぇのか?」
「お屋敷まで攻められるかもと言いましたけど、意外となんとかなりましたわ」
 乾いた風が砂粒を巻き上げる。
 シルバーはニヤついて、ワールド・スピリットを解く。猛獣たちが黒紫色のドロドロした液体に変貌して、大地に沈んでいった。
「幸いお屋敷にダメージはありませんでしたわ。ゆっくりお話をしましょう」
「何を話す為に俺を呼んだ?」
 ダークは舌打ちをした。
 シルバーはふふっと得意げに鼻を鳴らす。
「早く婚約者のもとに帰りたいという事かしら」
「婚約者なんていねぇよ」
「そんなにイラつかないでくださる? おもてなしの準備は整えておりますの。そうですわね、クリス」
 シルバーの後ろに立つ、クリスと呼ばれた男性が頷く。中肉中背の、白髪を生やす執事である。
「最高級の赤ワインとおつまみをご用意いたしました」
「ねぇダーク、クリスの労力を無駄にするなんて、考えられませんわね?」
 シルバーの視線に圧を感じる。
 ダークは溜め息を吐いた。片手をパタパタと振った。

「戦況が危なくないなら、帰らせてもらうぜ。赤ワインやつまみはてめぇらで消費しておけ。コズミック・ディール、テレポート」

 ダークは空間転移で一瞬にして姿を消した。
 シルバーはわざとらしく溜め息を吐く。

「人の話は最後まで聞くものですのに。クリス、例の噂は流しておきましたわね?」

「はい、抜かりはありません。メリッサ様お一人だけが集中的に狙われる事態は防がれると思われます」

「そうですわね。ダークがハーレムを作っているという噂を流してあげたのは、親切心ですわ。決して面白半分ではありませんのよ」

 シルバーは夢みがちな表情になる。
「私の頭の良さが恐ろしいですわ」
 クリスは深々と頷く。
「名案でした。メリッサ様はダーク様と深い関係であると既に出回っていますからね。それにも関わらず、戦闘はできず、身を守る術もありません。敵にとって格好の標的でしょう」
「ダークがハーレムを作っていると噂を流せば、敵はきっと錯乱しますわ。クリス、当然私はハーレムから外れていますわね?」
「え?」
 沈黙が流れる。熱された風が吹き、いくらか砂を巻き上げた。
 シルバーは口元を引くつかせる。
「クリス、どういう事ですの?」
「ダーク様にロリコン属性を付ければ、よりメリッサ様を守れると思いまして……」
 クリスは汗をダラダラ流していた。
「あの……マズかったのでしょうか?」
「マズイに決まっておりますわ! どうして私がハーレムの一員にされますの!?」
 シルバーは泣き喚く。
「私がエリック一筋なのはご存知でしょう!?」
「えと、その……申し訳ありません」
「謝ってすむ問題ではありませんわ! すぐに噂を消しなさい!」
 クリスはコクコクと頷いた。

「より強烈な噂を流して、ダーク様のロリコン属性を打ち消します」

「急ぎなさい! 一刻の猶予もありませんわ!」

 シルバーにまくしたてられて、クリスは部下たちに耳打ちした。
 その後で、多くのデマが流される事になるが、ダークは知る由もない。
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