55 / 79
守ってほしいもの
しおりを挟む
メリッサとダークは教会に戻る。
教壇の前でボスコが立っていた。ボスコは胸に片手を当てて、祈りを捧げているようだった。
ダークは教会の扉を施錠した。
この時にメリッサはハッとした。
ボスコは教会を施錠せずに、メリッサとダークの帰りを待っていたのだ。施錠をせずに寝るわけにいかず、ずっと祈りを捧げていたのだろう。
ダークはワールド・スピリットで空間転移ができるが、ダークの負担になると考えたのだろう。
ダークは恭しく礼をする。
「相変わらずお気遣いくださり、深く感謝します」
「構いません。蛍は綺麗でしたか?」
ボスコが微笑むと、ダークは頷いた。
「メリッサが思った以上に喜んでいました。連れて行った甲斐があります」
「本当に綺麗でした。ありがとうございました。あの景色を守る為に苦労なされたと聞いております」
メリッサが深々と礼をすると、ボスコはパタパタと両手を振った。
「そこまで畏まる事はありませんよ。蛍を守ったのは、主にマザーです。偉大な前神官長ですよ」
「そのマザーが、ボスコ様がよく頑張ったとおっしゃっていました。俺からも改めて感謝します」
「スカイ君まで、僕を褒めすぎていますよ」
ボスコが照れ笑いを浮かべると、ダークは口の端を上げた。
「ボスコ様は敬われる事に慣れてください。現在の神官長なのですから」
「そのセリフはそっくりそのまま、お返しします。あなたは立派な神官ですから」
ダークは苦笑する。
「魔王ですけどね」
「魔王なら、なおさら敬われても良いでしょう」
「俺は大量に人を殺しています。ムカつく連中を皆殺しにするつもりです。恨まれるのが当然でしょう」
ダークの切れ長の瞳に、鋭い眼光が宿る。
ボスコは天井に向けて、溜め息を吐く。
「あなたを憎しみに染めて殺戮に追いやった人々を、僕は許す事はできません。悔い改めてほしいものです」
「あいつらにそんな感情はないでしょう。特にカインに気をつけるべきだと思います。目的の為に手段を選ばないうえに、執念深いので」
「リリーさんを人質にした事もありますね」
ボスコはメリッサに微笑み掛ける。
「あなたは捕まらないように気をつけてくださいね」
「は、はい。気をつけます」
唐突に話を振られて、メリッサはどもった。
リリーは、ダークと親しくなれるという甘言に騙されて捕まってしまった。そんな事情をボスコは知らないはずだが、憐れみのこもった視線を浮かべている。
「リリーさんもメリッサさんも、人を疑う事を知らないでしょう。あなたたちの純粋さに癒されます。その感性を守っていただきたいです」
「ボスコ様も憎しみに染まらないようにしてください」
ダークはあくびをした。
「俺はそろそろ寝ます。明日はメリッサを連れて早めに東部地方に行く予定です」
「分かりました。気をつけて行って来てください。メリッサさんも無理せず、お身体を大切にしてください」
メリッサは礼をした。
「お気遣いくださり感謝します」
「今日はゆっくり休みましょう」
ボスコは穏やかな笑みを浮かべていた。
ダークはオルガンの傍の床をどかして、下り階段を降りていた。
ボスコが続き、メリッサが床を元に戻す。
三人はそれぞれの部屋に戻る。
メリッサが部屋に戻ると、リトスは既に寝ていた。メリッサの分のマットと布団は敷かれていた。
メリッサはリトスを起こさないように、感謝を込めて礼をした。
ふと、リトスが寝返りを打つ。
「……メリッサ、お幸せに~」
寝言を言っていた。
メリッサの笑顔が静かに綻んだ。
教壇の前でボスコが立っていた。ボスコは胸に片手を当てて、祈りを捧げているようだった。
ダークは教会の扉を施錠した。
この時にメリッサはハッとした。
ボスコは教会を施錠せずに、メリッサとダークの帰りを待っていたのだ。施錠をせずに寝るわけにいかず、ずっと祈りを捧げていたのだろう。
ダークはワールド・スピリットで空間転移ができるが、ダークの負担になると考えたのだろう。
ダークは恭しく礼をする。
「相変わらずお気遣いくださり、深く感謝します」
「構いません。蛍は綺麗でしたか?」
ボスコが微笑むと、ダークは頷いた。
「メリッサが思った以上に喜んでいました。連れて行った甲斐があります」
「本当に綺麗でした。ありがとうございました。あの景色を守る為に苦労なされたと聞いております」
メリッサが深々と礼をすると、ボスコはパタパタと両手を振った。
「そこまで畏まる事はありませんよ。蛍を守ったのは、主にマザーです。偉大な前神官長ですよ」
「そのマザーが、ボスコ様がよく頑張ったとおっしゃっていました。俺からも改めて感謝します」
「スカイ君まで、僕を褒めすぎていますよ」
ボスコが照れ笑いを浮かべると、ダークは口の端を上げた。
「ボスコ様は敬われる事に慣れてください。現在の神官長なのですから」
「そのセリフはそっくりそのまま、お返しします。あなたは立派な神官ですから」
ダークは苦笑する。
「魔王ですけどね」
「魔王なら、なおさら敬われても良いでしょう」
「俺は大量に人を殺しています。ムカつく連中を皆殺しにするつもりです。恨まれるのが当然でしょう」
ダークの切れ長の瞳に、鋭い眼光が宿る。
ボスコは天井に向けて、溜め息を吐く。
「あなたを憎しみに染めて殺戮に追いやった人々を、僕は許す事はできません。悔い改めてほしいものです」
「あいつらにそんな感情はないでしょう。特にカインに気をつけるべきだと思います。目的の為に手段を選ばないうえに、執念深いので」
「リリーさんを人質にした事もありますね」
ボスコはメリッサに微笑み掛ける。
「あなたは捕まらないように気をつけてくださいね」
「は、はい。気をつけます」
唐突に話を振られて、メリッサはどもった。
リリーは、ダークと親しくなれるという甘言に騙されて捕まってしまった。そんな事情をボスコは知らないはずだが、憐れみのこもった視線を浮かべている。
「リリーさんもメリッサさんも、人を疑う事を知らないでしょう。あなたたちの純粋さに癒されます。その感性を守っていただきたいです」
「ボスコ様も憎しみに染まらないようにしてください」
ダークはあくびをした。
「俺はそろそろ寝ます。明日はメリッサを連れて早めに東部地方に行く予定です」
「分かりました。気をつけて行って来てください。メリッサさんも無理せず、お身体を大切にしてください」
メリッサは礼をした。
「お気遣いくださり感謝します」
「今日はゆっくり休みましょう」
ボスコは穏やかな笑みを浮かべていた。
ダークはオルガンの傍の床をどかして、下り階段を降りていた。
ボスコが続き、メリッサが床を元に戻す。
三人はそれぞれの部屋に戻る。
メリッサが部屋に戻ると、リトスは既に寝ていた。メリッサの分のマットと布団は敷かれていた。
メリッサはリトスを起こさないように、感謝を込めて礼をした。
ふと、リトスが寝返りを打つ。
「……メリッサ、お幸せに~」
寝言を言っていた。
メリッサの笑顔が静かに綻んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。
秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。
「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」
第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。
着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。
「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。
行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。
「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」
「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」
氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。
一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。
慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。
しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。
「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」
これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
「愛される価値がない」と言われ続けた伯爵令嬢、無口な騎士団長に拾われて初めて「おかえり」を知る
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢フリーダは、婚約者の子爵に「お前は愛される価値がない」と
公の場で婚約を破棄された。家族にも「お前が至らないから」と責められ、
居場所を失った彼女は、雨の中を一人で歩いていた。
声をかけたのは、"鉄面皮"と呼ばれる騎士団長グスタフだった。
「屋根がある。来い」——たった一言で、彼女を騎士団の官舎に迎え入れた。
無口で不器用な男は、毎朝スープを温め、毎晩「おかえり」と言い、
フリーダが泣くと黙って隣に座った。それだけだった。
それだけで、フリーダの凍りついた心が溶けていった。
半年後、落ちぶれた元婚約者が「やり直そう」と現れたとき、
フリーダは初めて自分の言葉で言えた。
「私にはもう、帰る場所がありますので」
これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~
黒鴉そら
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」
自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。
全然関係ない第三者がおこなっていく復讐?
そこまでざまぁ要素は強くないです。
最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる