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とまどい
しおりを挟む一人部屋に取り残されて。
改めてさっきの彼の顔を思い出した。
昔一度だけ見た。
彼が一条を去る日の前の晩に。
彼と言い争った時に見た顔。
(また…傷つけたん?…けど愛人言うたの自分やん…)
彼が酷く傷ついた顔をしたから、傷つけたのは間違いない。
(けど傷つくていうても…)
彼は自分を見下しているはずで、ただの過去の清算で。
そこまで考えてハッとする。
(…うち、拓馬とこんなふうに終わるのが辛かったんやな?)
一度は永遠を夢見た人だから。
(また、あの時みたいに何か間違ごうたん?)
と、瑠璃が俯く。
(けど、愛人なれいうたん、拓馬やし…それに恋人おったし…)
何が間違いなのかわからなくて。
愛人とは都合のいいときに体だけの関係を結ぶものとは違うのか。
(拓馬の希望通りに振る舞った筈なのに…)
けれど現実には彼を傷つけた。
なんで傷ついたのかは解らないけれど、傷ついたんだというのは表情から解った。
(それこそもう…どないしようもないんやな…)
相性が悪いとしか言いようがないほど、何をやってもチグハグになる。
(ちゃうなあ…それだけウチらが隔たったいうことやんなあ…)
瑠璃が呟く。
でもどうしたら拓馬の気にいるのかは、さっぱり解らなかった。
途方に暮れたままで、リビングゾーンへと戻ると、ふと料理の横のボトルが目についた。
瑠璃がやけくそを起こしたようにそれをドボドボとグラスに注いだ。
そしてまたグーッと飲み干す。
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