Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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貴族領地編

0088 商人ギルドの使い方

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 水を打ったように静まり返った。

 誰かが、ぽつりと言った。「そんな事出来る訳がない。」
「そうだそうだ!」と全員が声を上げる。

 俺は、まあまあとなだめ、何故駄目だと思ったのか、訳を聞かせて貰いたいと言った。

 大体に出た答えはこうだった。
・税金が高すぎる。
・物を売るにも売るところがない。
・物を作るにもこの地では材料を手に入れることが出来ない。
・物価が高すぎて物を買う事が出来ない。

「じゃあ、一つ一つ潰していきましょう。まずは税金の問題ですね。これは簡単に解決が出来ます。」
「どういうことですか?」
「それは、国王が税率を元に戻すと約束してくれたからですよ。」
皆が、顔を見合わせ「本当ですか?」と聞いてくるので
「ああ、領地から王都に納める税金は5年前に戻る、更に俺は前領主みたいな、意地汚い税金を取りません!それは約束します!」
 皆が、オオー!と歓喜の声を上げ、これで助かると喜んでいる。

「二つ目ですね。物を売る所がないという事ですが。これは半分は解決したのではないでしょうか?」
「なぜです?」
「税金が安くなったのだから、商品をわざわざ高く売ることもないでしょう。さっき肉屋で話を聞いたら、普段は全く売れないのに、腐りかけてたたき売りになったとたんに売れると言っていました。これは、仕入れの時点で高く買っているという事。利益を出さないといけない小売店は、更に高い値段で売ろうとします。だから、誰も買えないという悪循環が生まれているんですよ。」

「そ、そうですね。しかし、もう半分はどうすれば?」
「領土内で売れないのなら、領土外で売ればいいでしょう?」
「輸出は無理ですって!」
「何故、そう思うのですか?」
「我々が扱っているのは、生ものが多いんです。王都にまで持って行く間に腐ってしまう。」
「なるほど。それは課題ですね。他には?」
「せめて、腐らないものであればと思います。」
「そうですね。でも、実際はヤギで生計を立てている村もありますよね?それは、どうやってるのですか?」
「領土外の商品は、全て干し肉に加工して発送しています。」
「なるほどなるほど。ヤギの話なんですけど、僕からの提案を聞いて貰えますか?リリア!頼む。」

 リリアがテーブルの上に2つの品物を置く。

「領主様、これは一体?」
「それは、チーズとバターです。」
「チーズとバター?見た事も聞いたこともないですな。」と皆が怪訝そうな顔をしている。
「まあ一度、食べてみてください。」
 リリアがチーズを切り分ける。バターはパンに塗って出される。
「まずは、バターですね。どうぞ、お食べ下さい。」皆がバターを塗ったパンを食べる。
「これは、美味いですね!」と誰もが言う。
「では、チーズを。」薄く切ったチーズを皆が食べる。
「これは!なんとも言えない味だ!風味も良いぞ!」
 俺は、にこやかに笑いながら「そうでしょう?美味しいでしょう?」
「これは、一体何で作られているのですか?」
「乳です。」
「え?」皆が嘘?とでも言いたげな顔で見てくる。
「正確にはウシの乳で出来ているのですが、ヤギの乳でも同じ物が出来ますよ。これなら、腐る事を気にしないで領土外に売れますし、なんと言っても、王都にはない品物です。」
「・・・という事は・・・。」
「ええ、高く売れるという事です!」
「でも、これはあくまでも僕の提案ですので、詳しいことはまた話し合いましょう。」

「次、材料の仕入れという事ですね。確かに王都からは一番離れた場所にあるという事で不利と言えば不利ではありますね。」
「そうなんですよ・・・。」皆が暗い顔になってしまった。ここの人達は良い人が多いんだろうな。日本にいた時は取引先と騙しあいだったから、新鮮だわ。
「例えばですよ。生もの以外でしたら、大丈夫な方法がありますよ。ねえ、商人ギルドさん!」
「ええ、ですがウチの建物には物が入らなくてですね・・・。」
「だったら、大きくすればいいんでしょう?」
「確かにそうですが・・・。商人ギルドもお金が・・・。」
「そこは心配しないでください。」
「なら、可能です。」

「あの、何の話をしているのですか?」
「皆さんはご存じないかも知れませんが、商人ギルドは商品の輸入・管理・卸し業務もしているのですよ。」
「それと、この話と、どう繋がるのですか?」
「いいですか?例えばこの商品を作りたい!と思って作りたい分量だけ買い付けるから、高くなるんですよ。」
「その先も同じものを作って行くのであれば、商人ギルドに買い付けて貰うのです。そして、在庫の管理をしてくれますから、必要な時に必要な分だけ、商人ギルドに買いに来れば良いんです。このやり方の方が、原材料費も安くなりますよ。」
「商人ギルドにそんな使い道があるとは知らなかった・・・。何で教えてくれなかった?」
「それは、聞かれなかった事もありますし、ここの商人ギルドの建物では在庫を抱えられないのですよ。」
「でも、そんなに大量の発注の代金はどこから出るんだ?」
「そこで、僕の出番です。商人ギルドでは僕が、と言うより皆さんの税金を使います。それによって、誰にも無理なく商売が出来るシステムになっているんですよ。」

「なるほど。と、いう事は、その逆もあるという事ですか?」誰かが言った。
「その通りです!物を販売するのに個人的に遠い所まで行くよりも、商人ギルドに納品してしまえば、安心して商品を届けて貰えるという事になります。それに商人ギルドは「世界各国にある」という事です!」
「と、言うと、どうなるのですか?」
「世界の物を買い付けることが出来るし、売ることも出来るという事です!どうですか!夢が膨らむでしょう?」

 皆の目が輝きだした!そこで最後の難問。

「次で最後になりますね。物価の問題ですね。これが一番、手が掛かりますね。」
「そうなんですよね・・・。」さっきまで、明るかった顔がまた暗くなった。
「それには、この手を打ちます。」
皆の視線、期待に溢れた視線が桜花に集まる。

「一定期間、支援金の給付、並びに無税とします!」

 この思い切った案にはさすがに皆が驚き、一斉に「本当ですか?」と聞いてくる!

「まぁまぁ、聞いてください。税金の事が領主である僕の一番の仕事ですから、国王に掛け合いますよ。」
「それに、さっきのチーズやバターだって、作るのに研究が必要でしょ?その他の産業に関しても同じことが言えます。」
「そして、給付金が入れば、買い物にも行けます。もう少し、良い物を食べようと言う気持ちも起こると思うんですよ。」
「それに・・・。」俺はコレット村の村長を見て、

「この領土には、根本的に見直さなければならない所もあるようなので、軌道に乗るまでは、僕が支援します。」
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