Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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貴族領地編

0089 幸せの黄色いオムライス

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「あの、ひとつよろしいでしょうか?」ヤード村の村長が手を上げた。
「なんでしょうか?」
「現在、売っている商品はそのままの値段でも良いのでしょうか?」
「もちろん、値下げ、もしくは加工して販売してもらいます。」

 ガタッ!激しく立ち上がる椅子の音と同時にヤード村の村長が言った。
「そんな事をしたら、ウチはやっていけなくなるじゃないか!」
「そうなれば、他所から輸入になりますね。」
「ハッ、他所の麦なんて粗悪品だ!ウチの麦が一番なんだよ!」
「聞いてますよ。その話は。ハラカ・マッシュ子爵領のことでしょう?」
「な、何でその話を知っている?」
「バレット国王が、全ての領地・村を視察しているからですよ。何でもハラカ・マッシュ子爵領は脱穀・製粉した麦を輸出しているのだとか。その麦を脱穀なしで仕入れ、こちらで脱穀したから粗悪品になった。同じ値段で品質がいいのなら、そちらから輸入しますよ。」

 ヤード村の村長は、「そんなことをしたら、てめぇ、領地の人間を殺す気か!」
「知っているのですよ。あなたの村は他の村と比べると納めている税金が少ない事と、自分の所しか麦は作ってないからと言って、強気の価格で販売していることも。全て、バレット国王から聞いた話ですけどね。」
「まっ、どちらにしても麦はハラカ・マッシュ子爵領から輸入はするんですけどね。」
「やっぱり、俺達を殺す気なんだな!」村長は顔を真っ赤にしている。
「何故なら、あなたの村は、麦よりも儲けるからです。」
 村長は、キョトンとしている。

「いいですか?本来、麦と言う物は安い物なんですよ!何故なら栽培が楽だからという事に尽きます!じゃあ、どこで品質が変わるかと言うと「脱穀と製粉」による事がほとんどです!ならば、製粉が上手いハラカ・マッシュ子爵領から輸入するのが結果的に豊かな生活に貢献してくれます。」
「じゃあ、何を作れと言うんだ?」
「まだ、言うつもりはなかったのですけど、いいでしょう、リリア、頼むよ!」
「は~い、ご主人様~!」と出てきたのは「白い物体」。よく見ると小さな粒が集まっている。
「まあ、食べてみてください。」
 その言葉のままに、口の中に・・・。

 その物体からは想像できない、身のほぐれ方、そして甘み・・・。
「なんだぁ、これは!」ヤード村の村長が叫んだ!
「美味しいでしょう?これは「コシヒカリ」と言う穀物です。」
「麦と全然違う・・・。」
「麦を栽培している所は沢山ありますが、コシヒカリは王国にはありません。と、いう事は?」
「麦よりも儲かるという訳か。」
「そうです!分かって頂けましたか!」
「先ほどのご無礼をお許しください。」と村長は頭を下げた。
「でも、麦は麦で栽培してくださいね。必要ですから。」


「私の村では何を作れば良いのでしょうか?」
 エ・マーナ村の村長が手を上げた。

「エ・マーナ村はヤギが主力でしたね。最終的にはヤギは止めましょう。」
「それでは、生活が・・・。」
「あくまでも、最終的にはです。ウシと豚を主力で飼いましょう。」
「ウシ?先ほどのチーズの元ですな!」
「そうです!ヤギでもチーズなどは出来るのですが、やはり、臭いのですよ。それに、ウシの肉はヤギと違って、柔らかいんです!」
「でも、輸送の間に腐ってしまうんじゃ・・・」
「それには心配には及びませんよ。」
「どういう事ですか?」
「それは、ウチの妻がやる事業で、輸送をするからです。なので心配は無用です。」

「あの、先ほど、商人ギルドを経由してくれるとの話だったと思いますが・・・。」
「ええ、ちゃんと王都にある商人ギルドに申請してますよ。それに、いくら商人ギルドと言っても転移魔法は使えないでしょ?」
「それはそうですね。失礼しました。」

「冒険者ギルドは何をすれば良いのですか?」
「冒険者の皆さんには、通常業務のついでに噂を触れまわったり、後はこの周りの資源探索とかになりますね。」
「なるほど、冒険者向きって事ですね。了解しました。」

「あの・・私の村は・・・。」コレット村の村長が手を上げた。
「コレット村ですね。コレット村には・・・。」

「村を潰して頂きます。」

 コレット村の村長の顔が青ざめた。

「あ、言い方が悪かったですね!コレット村には今の場所から移動して貰おうと思ってます。バレット国王の話では、かなり衛生面に問題があるようなので、病気になりやすい畜産業には向かないし、農業をするにしても、水が悪いんじゃ話になりませんからね。」

 ほっと、胸を撫でおろした村長は「では、私どもは何をすれば良いのでしょうか?」
「コレット村の皆さんには「養鶏場」を運営して貰います。」
「ヨウケイジョウ?とは・・・。」
「鶏を飼育してもらいます。」

 室内に笑い声が響いた。コレット村の村長の胸の中には他の村は画期的な話なのに、私の村だけ、今までと変わらないと言う絶望もよぎるのだろう・・・。

「お~い、リリア!次、頼むよ!」
「は~い、ご主人様!」とリリア達が運んできたのは、「黄色い物体」だった。
「なんだろう、ぷるぷるしてるな。」
「それにしても、いい匂いですね!」
「この赤いソースは何だ?」
 皆、不思議そうに見ている。

「どうぞ、お召し上がりください。」
 黄色い物体にスプーンを差し込むと、トロっとした物が流れ落ち、中から赤い「コシヒカリ」が出てきた。スプーンですくって口の中に・・・誰もが、甘美な味の虜になる。
「これは、めちゃくちゃ美味いぞ!」
「こんなのは食べた事がない!」と皆が大騒ぎ!
「もう一杯食いたい!」
「私も食べたいです!」と声が上がる。

「いかがでしたか?この料理名は「オムライス」と言います。鳥の料理ですね。」
「なるほど、さっきの黄色いのはたまごか!」
「その通りです!中の具には鶏肉も使ってます。」
「これで、儲かるのですか?」
「美味しかったでしょ?」
「確かに美味かった。」
「このオムライスを作るのに、一人前たまごを3個使うのですよ。」
「なるほど、今我々が食べたオムライスだと、たまご18~20個使う事になるな。」
「そうです!それに、この料理は王都にはまだありません!」
「・・・という事は?」
「この料理は王都で無茶苦茶流行る!という事です!」
「確かに鶏やたまごは単価が安い。だからこそ、売れる商品に使うんです!それに、たまごが安定的に流通すれば、安定収入にも繋がります。難点は、忙しくなるという事ですが。」
「やります!死んだ気で働きます!」コレット村の村長もやる気になってくれたようだ。

「実は、コレット村にはトマトの栽培もして欲しいんですよね。」
「トマト?野菜の名前ですか?」
「はい。さっきのオムライスの赤色はトマトから出ている色なので、絶対に必要なんですよ。」
「ご主人様~」リリアがトマトを持ってきた。
「これが、トマトです。」
「ほぉ~、何とも不思議な形をしてますね。」
「そのままでも食べれますよ。よければどうぞ。」
「では、お言葉に甘えて・・・。」トマトをひとかじり・・・。
「何て、みずみずしい!」
「そうでしょう?トマト農園は大きい方がいいので、コレット村の皆さんは忙しくなりますよ!」
「それなら、ウチの手が開いた時に手伝うとするか!」
「皆で、助け合いですね!」


・・・・プレゼン、上手く行って良かったぁ~。
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