Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
161 / 167
悪魔対峙編

0158 砂の国の王子様

しおりを挟む
 マイカ帝国との国交が成立したことにより、ハイマギーの森を通れるようになるのだが、この森にはリザードマンやゴブリン達がいる。
 いくら桜花の支配下にあっても人間からすれば見た事のない怪物は警戒するものだろう。冒険者ギルドに知れる前に手を打たなければならない。

「なぁ、見た目を何とかすることは出来ないのか?」
 ゴブリンの長であるガハクと門番吸血鬼のヴラドに聞いてみた。

 リザードマンは開拓地より離れた所に住んでいるので問題はないのだが、ゴブリンだけは何とかしなければならないし、冒険者に退治されるのは嫌だ。

「魔王様なら、何とかしてくれると思うのですが・・・。」

 リョウタが?確かに魔王だから何でも出来そうだけど、そんなに万能なのか?一応、聞いてみることにした。

「リョウタ、お前ゴブリン達を人間の見た目に変える事なんて出来るのか?」
「いや、申し訳ないですけど、それは出来ません。」
「やっぱりなぁ。分かった。」
「しかし幻影魔法で、人間に見えるようには出来ますぞ。」

 リョウタがハイマギーの森にやってくるとゴブリン達はひれ伏し、ガタガタと震えている。こうしてみると、リョウタって魔王なんだなと改めて思ってしまう。

「あの、兄者。本気の魔法を掛けるので、本来の姿に戻っても良いでしょうか?」

 どうやら、人間の姿になっている時は魔力が落ちるらしい。リョウタは本来の姿になると、青い身体は大きくなり、角まで生えていた。

「では、参ります!」

 ゴブリン達がいる範囲を魔法陣が包み込み、あれよあれよとゴブリン達は人間の姿になって行った。それを確認するとリョウタは人間の姿に戻っていた。

「これで、人間と認識されるのだな?」
「ええ、人並外れた体力と筋力以外は人間と同じです。」

 俺の元々の認識ではゴブリンと言えば知能が低い者と思っていたのだが、この世界のゴブリン達は知能が高い。今度、ポトフとアランに教育してもらおう。そうすることによって森の管理者とこれから開かれるであろう海の外のつながりを作るための港町を作ってもらおうと思う。早速、森の開拓に入ろう。

 皇帝ロンベルクとバレット、領主でもあるリョウタに集まってもらい、ハイマギーの森の開拓作業へと移るための会議を行った。

 海外との交渉はマイカ帝国が行うとして、通行税を二ホン国に、ヤヌス王国は開拓の一部を担う代わりにマイカ帝国と同様に海外との交渉も出来る事となった。
 開拓はハイマギーの森に住むゴブリン達に任せ、広めの通路を作り、時折休憩所を儲け、そこで儲けを出すという算段だ。

 しかし、そんな美味しい事情を商業ギルドが黙っているはずがなく、当然のようにサウラさんが顔を突っ込んできた。

 サウラさんが言うには休憩所ではなく、宿場町を作るべきだという。そうすることにより私ども商業ギルドはウハウハよ!と言っていたので、宿場町を作ることにした。当然、管理は商業ギルドに任せる事とゴブリン達は優先的に雇い入れてもらう事で話しは落ち着いた。

 そして、数か月後。

 とうとう森の開拓が終了し、港町が出来た。管理はゴブリン達だ。

 バレットが海外の国に行くと言うので船を作ったのだが、この世界の船はものすごく揺れる。そう、船酔いが凄いのだ。当然、バレットも例外なく船酔いの餌食となっていた。

 船での航海と言っても向こうの国は見えていて、船で2~3日もあれば着く距離にあった。

 やっとの思いで付いた海外の国は・・・辺り一面、砂。砂漠だった。

「王よ、この先は何もないようです。本当に進まれるのですか?」

 近衛兵が心配とおののきで、恐る恐るバレットに進言をしたのだが、初めての海外という事でテンションの上がってしまったバレットは進むことを決断した。

 しかし、辺り一面は砂漠。時折吹く風に舞い上がる砂埃。歩く足元は砂に覆われ、思うように進まない。日中は暑いのに日が暮れると恐ろしく寒い。そんな日を過ごし3日が経っていた。

 もう、バレットのキャラバン隊は進むことが困難となり、諦めて戻ろうかと決めたが、今いる場所がどこかわからない。砂漠のど真ん中で目印となるものがないのだ。

 次々と倒れて行く仲間たちを見て、初めて自分の犯した哀れな行為をバレットは悔やんだ。このまま死んでしまうのか・・・。バレットもまた砂に倒れてしまった。




「ハッ!」バレットは目覚めた。
 砂漠ではない。どうやら助かったようだ。しかし・・・。ここは牢屋だ。

 見た事のない衣類を纏った男どもがバレットを見ている。周りを見るとキャラバン隊全員が捕らえられているようだ。とりあえずは全員、生きているようだ。

 それにしても、身動きがとれない。どうやら手足を縛られているようだ。
 男たちは、水を掛けてくる。嫌がらせなんだろう。しかし、何も言わない。

「ここは、どこなんだ?」

 水を掛けられる。

「どうして、こんなことをする?私達はヤヌス王国の者だ。」

 水を掛けられる。

 一人の小太りの男がやって来た。

「お前たちは、何しにやって来た?侵略者だろう?」
「違う!私達はこの国に友好を結ぼうとはるばる海を越えてやって来たのだ!」

 男たちの笑い声が聞こえる。

「どうやってだ?まさか泳いできたのか?」
「船を作ったんだ!」
「フネ?何だそれは?」
「異世界からやって来た勇者の知恵を授かって作った物だ!」
「ほう。勇者、異世界人か。」
「そうだ!」

 小太りの男は少し黙り、他の男に何かを告げているようだ。

「異世界人は敵だ。よって、お前達も敵だ。よって、処刑する。」

 また水を掛けられた。



 その夜。

 水に濡れた身体にこの国の冷え込みは堪える。バレットはガタガタと震えていた。
 そこに牢屋に入って来た男がいて、手にはナイフの光が見えた。

 もう、ここで終わりかと観念をしたら、その男は手足のロープを切り、キャラバン隊全員のロープも切り、こっちに来いと手招きをした。

 その男について行って逃げたのがバレたのか、男たちが追って来たのだが、助けてくれた男たちの弓矢に倒れ、最後には建物に火が放たれた。

 目の前には大きなカエルのようなものが繋がれた荷車があり、それに乗ると荷車は、物凄いスピードで、砂地を掛けて行った。

 暗闇で解らなかったが、松明のお陰で何やらの建物に入ったのが判った。ここで、濡れた衣類を捨て、着替えると良いと親切にも食べ物まで用意してくれた。

 そして、疲れた我々は、眠ってしまった。



 翌朝。

 深い眠りについてしまったのか、身体がスッキリとしている。
 キャラバン隊達は既に起きていたのか、バレットが起きるのを待っていたようだ。

「お目覚めですか?」

 褐色の男は礼儀正しくも胸に手を当てお辞儀をした。

「昨日はありがとうございました。お陰で助かりました。」
「いえ、あの者達は野盗でして、指名手配の輩たちだったのですよ。その場で処刑致しました。」

「ところで貴方は?」
「私はミュウ王国のシルと申します。王直属の親衛隊長をしております。」
「では、私達を助けてくださったのは?」
「ええ、王子様の命ですよ。」

「お着替えください。王子が会いたいと申されております。」

 バレットたちは、正装なのか白い布をすっぽりとかぶったような衣服にサンダルのような履物に変えシルの後をついて行った。

 熱い国独特なのだろうか、吹き抜けが多く、扉という物がない。
 バレットたちは一番奥の部屋に通され、そこにいる少年を見た。

「よくぞ参られた。異国の者よ。我はミュウ王国の第一王子ショウと言う。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...