二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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そんな騒々しさはグウェンドリンの元にも、カトリーヌの元にも届いていた。

それぞれ個別で客人というよりは両親とともに招待された友人たちとの会話を楽しんでいたのだが、そんなところにまで大人たちのざわめきというのは届くものである。

カトリーヌはいったい何なのかしらと訝しげに見つつも父が対応するだろうと動かず、グウェンドリンは一応状況把握するために騒動のところへと歩き出す。

「ちょっと何があったか見てきますね。いったい何なのかしら…」

「あ、待って私も行くわ!」

「もちろん俺も」

とはいえ、グウェンドリンが一人で行くには少し騒ぎ方がおかしな感じがしたのか、ヒルドとシュヴァルドも連れ添って一緒に歩き始めた。

パーティー会場の入り口付近に近づくほど、ざわざわとしたざわめきは大きくなり、同時に大人たちの「いったいどういうつもりなのか」といった、騒ぎを起こす人間に対しての常識を問う様な声も増える。

一体だれが何をしているのか、と思ったグウェンドリンの視界が開けると、パーティー会場である大広間の開け放たれた入り口前でガウト伯爵夫妻といつぞや以来の次男の姿も見えた。

「…ああ、あの人たち」

「え、招待してるの?」

「してるわけないでしょう。あんな騒ぎを起こした分際で」

流石にあの時の夜会でも子供たちの中でだけであっても要注意人物扱いされているガウト伯爵家の次男坊など、絡まれた側のグウェンドリンのいるヴォーダン伯爵家が招くわけがない。

そもそも、ガウト伯爵家に対しての印象はヴォーダン伯爵家内では最底辺にある以上、婚約者候補として考えているだけの家など、重要なパーティーに呼ぶような事はまず考えないのが当たり前だった。

大事な場で騒ぎなど起こされたくない。

ちなみに黙っている状態のシュヴァルドはひどく冷たい目でガウト伯爵家を見つめていた。

性懲りもなく自分の婚約者の家に纏わりつくのが気に食わないのもあるが、そもそもシュヴァルドとガウト伯爵家次男のグンナールの相性が悪すぎて、見かけるだけでイライラするのである。

初めて会ったのは8歳の夜会の時であるが、その時挨拶した辺りからすでにシュヴァルドはグンナールとの関係を最低限にしか保たないと思ったくらいには馬が合わないと察していた。

会話の中から出てくる婿入り先の家で楽隠居同然に楽しく暮らしたいという願望が、シュヴァルドとしては受け入れられなかったのである。

シュヴァルドは次男でありながら長男と同じ教育を受けている当たりでわかる通り、自分の力を試してみたい、領地を運営する仕事などをしてみたいという気持ちが少なからずある。

更に、グウェンドリンとの婚約が裏で本決まりになっている状態にある今、ヴォーダン伯爵家を一緒に盛り立てていきたいという気持ちもまた強い。

なので、自分の力を発揮してできる事をやっていきたい、挑戦したいという意欲に満ちた少年と、逆に誰かが代わりにやってくれるなら楽でいいと放棄する少年では合わないのも無理はなかった。

おまけに一目惚れして必死になって婚約の打診までこぎつけ、どうにか締結されそうな状態に持ち込めた少女の周りにうろつく姿を見れば、それはもう嫌悪感一杯なのである。

「グウェンドリン、あいつは確かカトリーヌ嬢の婚約者候補だったはずだよな?」

手紙のやり取りですでに名前の呼び捨てをお互いに許可し合っているため、シュヴァルドはグウェンドリンの名前を呼び、グンナールの立場を確認する。

ヴォーダン伯爵の前で偉そうに踏ん反り返っているあの馬鹿はいったい何様のつもりだと思いながら目線を決して逸らさない。

何かしでかした時の証人になるつもりでシュヴァルドはヴォーダン伯爵として対応しているヴァルファズルと、それを前にして駄々をこねるように騒いでいるガウト伯爵一家を見ていた。

「いえ、カトリーヌの婚約者候補の可能性のある人間です」

「え?候補にも留まっていないの?」

「ええ、一応婚約者候補としてどうかという検討の段階ですもの」

コロコロと笑うグウェンドリンは、言外にガウト伯爵家との縁談は考えるだけであり得ないと告げていた。

ヒルドに手紙を送ってからすでに10か月以上が経っている現状で、まだ検討の段階ともなると見込みはないだろう。

かなり有力な候補ともなれば、グウェンドリンのように打診が来たその月に候補確定の返事が出る。

けれど、それもないということはそもそもヴォーダン伯爵家にはガウト伯爵家との縁談を受けるつもりがないというスタンスを崩していないことが明らか。

ヒルドはホッとして友人にあのおかしな男が近づく可能性が減ったことに安堵の息をこぼす。

が、それと同時に気付いたのはいまだ検討段階と言う、望みのない状態にありながら、招待のないパーティーに乗り込んできた自称婚約者の家族一同と言うとんでもない事をしているのが、ガウト伯爵家であるという事実。

「…これ、詳細を知ったら他の貴族家の付き合い自体かなり縮小するわね」

常識知らずの騒ぎを起こしたうえに、まだ検討段階の婚約の打診を笠に着てパーティーに乗り込もうとしているなんて、常識知らずも良い所。

そんな常識のない家との付き合いなんてどこも望まないに決まっている。

ヒルドは引きつった顔を扇子で隠しつつ苦笑した。
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