二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

文字の大きさ
226 / 247

226.

しおりを挟む
カトリーヌの部屋の前まで行き、コンコンとノックをして中にいるだろう侍女または部屋付きメイドを呼び出して、カトリーヌの部屋に彼女がいるのか確認したうえで、話があると伝える。

「カトリーヌはいるかしら?話があるのだけれど」

その問いかけに、ノックに反応して扉を開けて対応していた部屋付きメイドが「いらっしゃいます、少々お待ちくださいませ」と一度扉を閉めて、カトリーヌに相応の準備をさせるために部屋の中が少々慌ただしくなる。

それから5分もかからないうちに、「大変お待たせしました」と先ほど対応していた部屋付きメイドが部屋の中へ案内する。

そこから侍女が引き継いで、部屋付きメイドはフリーンとカトリーヌの飲むお茶を淹れるために作業を開始する。

フリーンが部屋の中へ入ると、すでにカトリーヌはソファーの席に座っていた。

そこにフリーンも遠慮なく座り、口を開く。

「カトリーヌ、ヴァルファズルからの手紙は読んだわね?」

フリーンはカトリーヌも確実に手紙を出すだろうと思っていたし、実際ヴァルファズルからもカトリーヌからの手紙が届いた旨を記載されていたので、カトリーヌの方にも返事が来ているはずだと踏んで、フリーンはそのことについて口にした。

「はい」

カトリーヌも少し苦々しい表情で返事をする。

実際、返事が来ていた。

そしてその内容はカトリーヌが望んだものではなかった。

父、ヴァルファズルからの手紙の返事は「ブラギ家へ行ってきなさい」というものだった。

ただ、長期休暇中の友人たちとの約束に関しては、そちらの方が早かったからなんとか都合をつけてもらえるように手を打つということでカトリーヌが一番のデメリットとして挙げていた部分をどうにかするという確約はなった。

なので、これ以上カトリーヌが騒ぎ立てることはできない。

「これで決定事項よ。あなたがどれだけあがこうと、私とヴァルファズルは許しません。
ブラギ伯爵家に長期休暇中は行くように。
はじめて滞在するわけだし、それほど長くはないでしょうから安心していいわ。
そうね、短くて1週間、長くて2週間といったところかしら」

「全然長いわ!せめて3泊4日くらいに!」

「あのね、どこの貴族家でも長期休暇中に婚約者が滞在するともなれば、その家の事を色々と教えるためにも最低でも1週間は滞在するのが普通なの。
そんなちょっと領地内で小旅行をなんて感覚でできるような滞在じゃないの。
あちらにも予定があって、教えるべき事をしっかり学んでもらわなければならない期間なの。
だから最低1週間なのよ!私もヴォーダン伯爵家に滞在するときには最低1週間、長くて1か月は普通にいたわよ」

母のまさかの長期滞在経験に、カトリーヌが愕然とした。

そんなに長く他の家に滞在するなんてカトリーヌであれば嫌気が差す。

「でも、お母さまはおばあ様と仲が良かったんでしょ?」

「そうね、お義母様、あなたの言うお祖母様とはとっても仲が良かったわよ」

「私はそうじゃないじゃない…。仲が良いとか良くないとか、そんなレベルじゃないもの」

「じゃあ仲良くなるために行きなさいよ、今後の為じゃない」

「う」

それでも嫌だと態度で示すカトリーヌに、フリーンはカトリーヌへのメリットも示すことにした。

「実際にあちらの伯爵夫妻と会ったのは、学園入学後のあの食事会のときだけでしょう?」

「?、はい」

「その食事会の時、あなたはそれほど満足に受け答えできていなかったわよね?」

「はい…」

カトリーヌにとってはある意味苦々しい思い出だ。

あの後スカルドに言われた言葉を思い出せば苛立ちもする。

「あの時だけの判断では、あちらもあなたを測りかねているでしょうから、あなた自身をあちらのご夫妻が判断するためにも必要な期間よ。
あなたがもし、あちらの伯爵家には合わないとあちらが判断したならば、他の宰相補佐の家などに縁組をした方が良いと婚約が解消される可能性はあるわね」

「!」

カトリーヌにとって、その可能性は少しだけ希望の持てるものだった。

なにせ、相手側の親が「この子は合わない」と思ったことでの解消なら自分にとって大きな傷にならないからだ。

だが、カトリーヌは失念している。

以前、自身の両親がこの婚約が確定事項であるというようなことを伝えていることを。

そして、万が一、億が一、本当に婚約が解消されたとしても次に選ばれるのはブラギ伯爵家のように、王家の息のかかったお相手になるということを。
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

処理中です...