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第一章 少年勇者は後退しません
第9話 黒魔槍が倒せません
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「思い切りはよいな」
「そいつはどうも」
小手先の技だけでこれだけ出鼻を挫かれれば、自分のリズムを崩し、距離をとって立て直しにかかるか、守りに入るものと思えば、ゼルドは強引に自分のリズムに巻き込もうと、速度重視の装備に替え、さらに加速してライザームに接近戦を挑む。
しかし、ライザームは、ゼルドの急接近をかわし、滑るように動き続ける。
いや、実際に両足の下に黒い霧を纏う何かがあって、足元の凹凸を無視するように、岩肌の少し上を滑らかに移動していた。右手の槌矛と左腕の盾らしきものは消え、左手に弓と思しき黒い霧が現れる。
「ならば、これを躱してみせよ」
横に後ろにと移動しながら、ライザームは弦を立て続けに引いた。黒い霧状の矢が出てくるのかと思えば、その右手に矢は無い。
矢は無かったが、風を切って飛来する音と気配だけがある。
ゼルドの傍らに浮く二枚の盾が、その意思通りに動いて、見えない矢の軌道を塞ぐ。
衝撃だけが盾を叩き、宙で揺らぐ。その間を縫って来た何かを、ゼルドは両手の手甲で払い、さらに両手の間に入り込んだそれを頭を振ってかわす。
二枚の盾で七つ、両の拳で五つを弾き、ギリギリでかわしたのが二つ、見えない矢の十四連射。最後の矢をかわした時にはライザームに手が届くほどの距離まで迫っている。ライザームに笑みがこぼれた。面白い、と。
「『流星弾』!」
ゼルドの魔力をまとわせ強化された両の拳、肘、膝、爪先、踵が、ライザームが回避する方向を追う様に、あるいは先回りする様に連続して繰り出される。
どの打撃もライザームを抉っているように見えるが、どれもわずかに触れることさえできていない。
「『村雨丸』、『落葉丸』」
宙に浮く二枚の盾はそのままに、ゼルドの両手の手甲は消え、全身の革鎧が戻ってくる。そして両手に反りのある片刃の刀が一振りづつ。
「『双旋』!」
ゼルドの二刀は別々の方向からライザームを襲い、僅かな時間差で二刀が交差するが、ライザームの顔前で空を切る。
切先の僅か先にいるライザームの顔を、一瞬薄い霜の幕が覆った。
ゼルドの繰り出した武技に乗せた二刀の魔力特性、村雨丸の水属性による雫と落葉丸の風属性による風が、交差する一点を中心とする薄氷を生じさせていた。
「『銀翼陣』!!」
その一瞬を逃さず、二刀の舞うような連撃が始まる。数瞬、少なくない剣尖が反応が遅れたライザームを裂く。ライザームが、奇妙なシルエットの小剣と短剣と思しき黒い霧の武器を出し、二刀の動きを制するまで。
「『魔剣砕き』か!?」
ゼルドは、短剣に絡めとられそうになる『落葉丸』を瞬時に収納する。
すり抜けた右手に『雪崩剣』を呼び、『村雨丸』と合わせた氷雪系変則二剣で、逆にライザームの小剣と短剣を凍結させる。
しかし、氷は、次の瞬間には閉じ込めたはずのモノを失い、落ちて割れた。
至近距離から、次にライザームの手に出現したのは、長柄の影であり、そのまま貫かれそうになるのを辛うじて避ける。せっかく詰めた距離だがやむをえない。
黒い霧に覆われた新たなライザームの武器は、黒魔槍と変わらぬ程の長さだが、ゼルドにはまとう魔力の質が異なるのがわかる。
「武技と魔法の武具の組合せ技は『魔戦士』の本領であったな。侮って油断したのはこちらの方であれば、その無礼の詫びにいくつか面白いものを見せよう」
ライザームは、右手一本で武器を抱え、伸ばした左手にまた長柄の武器を召喚する。さきほど与えたはずの複数の刀傷は、もうライザームのどこにも見えない。
「槍の二刀流なら確かに見たことはないな」
「二本ではないよ」
ライザームが両手の武器を軽く宙へ投げ上げると、そのまま肩ほどの高さで水平になり空中に浮かぶ。
そして、両手には、次の二本の長柄の黒い霧が出現している。
左手の槍を、また空中に浮かせると、残る槍を構えた。空中の三本の穂先もゼルドの方を向いている。
「魔王陛下の名において、ライザームが命ずる! 真の姿を示せ『黒魔槍』!」
ライザームの手の中の黒い霧は消え、冷たく黒光りする槍が現れる。
そして、空中の三本の長柄の武具は、金色の三ツ又の戟、銀色の斧槍、赤色の長刀の姿を現す。
遮蔽されていた魔法の武具の本来の気配が解放され、ゼルドは一瞬圧倒される。どれもが、想像を超える格の武具であることがわかる。
続けて、ライザームの声がするが、違う言葉が三重に聞こえる。ライザーム自身の口からとは別に、両手の手袋の甲、中指の付け根当たりが開き、両手の中指に着けた指輪がそれぞれ異なるライザームの声を発していた。
「古の海神ラヴァンよ、その威をもって怨敵滅ぼしたまえ! 『渦動三叉戟』!」
金色の三ツ又の戟は、錐のように回転し、周囲の風と水を巻き込み、横になった竜巻となる。渦の中の水分が微細な氷の細片となって高速で擦れ合い、竜巻は雷をまとい始めた。
「古の武神ルーファスよ、御身にこの戦を捧ぐ! 『審判の斧槍』」
銀色の斧槍は、真っ二つにする獲物を求めるように縦に回転し始め、そのまま風を裂く音を生む銀色の円盤となる。
「地獄の王ズワウズよ、罪人を焼く業火を我に与えたまえ! 『獄炎槍』」
赤色の長刀は、その長い穂先が赤い光を発したかと思う間もなく、白い光へと変わり、穂先自体が炎でできた蛇の舌の如く揺らめく。
「相性が、悪過ぎるのぅ」
「戦闘スタイルが似ている上に、ライザームは武具の能力を使い、武技をまだ使っていないので、ゼルドさんの得意のパターンに持ち込めませんね」
シルヴィアはのんびりと言い、ノゾムは不利な形勢に緊張気味に呟く。
ゼルドは、格上の敵と戦っても、必ず、逆転のチャンスを掴んで来た。ゼルドの『武芸百般』のスキルは、相手の武具の特性を見抜き、相手の見知らぬ武技を解析して習得できる。
相手の武技に短所があればそこを突き、無ければその武技を習得して戦闘中に成長でき、決して相手に後れを取らないからだ。
だが、今回は、終始ライザームの体術と武具の能力と小手先の技の組み合わせだけで、翻弄されているように見える。
しかも、発動させた武具の威力が致命的で、空中の三つの槍のどれ一つとっても、まともに食らえば、ただでは済みそうにない。
「『人面魔獣の鎧』、『反射の盾』、『破軍星』」
ゼルドは、白銀の全身鎧をまとい、三枚目の盾も宙に浮かせ、最も愛用する両手持ちの大剣のその刀身を正中線に沿って下すように構える。
『黒魔槍』を含めて四つの同時攻撃を全てかわすのは困難と、防御を最大限にしてしのぐ算段か。
「『鬼蜻蛉』、『金剛鉞』、『縛妖鎖』」
三枚の盾の周囲に片手持ちの戦斧と両手持ちの巨大な鉞が浮かび上がり、両手首には異様に長い鎖の付いた腕輪が現れる。
「モノマネと笑うかい?」
「我が三百年の研鑽と秘蔵のコレクションを、一目見ただけで真似られては、笑ってはおられぬよ」
返すライザームの顔には、堪え切れずに笑みが浮かんでいる。
「なるほど、魔力不足は武具の力で補うか」
「どういう意味?」
「縛妖鎖は、敵の魔力に反応するから操らなくていいんですよ。三枚の盾も自動防御にしておけば、ライザームが四つの武具を操るのに、ゼルドさんは大剣と斧と鉞を操るだけで対抗できる」
ノゾムに囁くマシューの解説に、ポーシュまで頷いている。
「だが、足らぬ。かの五芒星将殿には、お見通しであろうよ」
シルヴィアは一言で片づける。
ライザームの足の下にある金属の輪が風を巻く音をたてた。これまでの浮き上がり滑るような動きではなく、一気に噴射するような直線的な動き。
回転する斧槍が遅れることなくその右を並走する。
「『金剛鉞・大切断』! 『鬼蜻蛉・大顎』!!」
回転しながら迫る斧槍に回転させた鉞をあて、戦斧を逆側から遅れて来た炎の長刀に向かわせる。
金属の衝突音と破砕音が、同時に響く。ライザームの黒魔槍を、ゼルドはかろうじて大剣で受け流した。金剛鉞は、刃の半ばまで斧槍に断たれていたが、絡み合ったまま地へ落ちる。鬼蜻蛉は弾き飛ばされ、燃える長刀の矛先を僅かに逸らし速度を鈍らせたにとどまったが、続く三枚の盾が貫かれながらも長刀を止めた。
「やっぱり、届かねぇか!」
斜め後方上空から、雷と風をまとった三叉戟が迫るのと同時に、ライザームの黒魔槍がゼルドの大剣と再び交差する。
「『黒魔槍・地影槍』!」
ゼルドの大剣は、再度黒魔槍を受け流そうとし、両腕の縛妖鎖の一本は後方の三叉戟をまとう竜巻ごと絡めとり、もう一本は黒魔槍の影がそのまま足下の岩を使って実体化し突き上げて来るのに巻き付いて抑え込んでいる。
次の一瞬、縛妖鎖は地面の槍状の岩と飛び去ろうとする三叉戟の両方に引かれ、大剣を両手で持っているがゆえにゼルドは両手首で空中に吊るされたようになる。
「終わりだ」
ライザームの黒魔槍は、その隙を逃さない。
「そいつはどうも」
小手先の技だけでこれだけ出鼻を挫かれれば、自分のリズムを崩し、距離をとって立て直しにかかるか、守りに入るものと思えば、ゼルドは強引に自分のリズムに巻き込もうと、速度重視の装備に替え、さらに加速してライザームに接近戦を挑む。
しかし、ライザームは、ゼルドの急接近をかわし、滑るように動き続ける。
いや、実際に両足の下に黒い霧を纏う何かがあって、足元の凹凸を無視するように、岩肌の少し上を滑らかに移動していた。右手の槌矛と左腕の盾らしきものは消え、左手に弓と思しき黒い霧が現れる。
「ならば、これを躱してみせよ」
横に後ろにと移動しながら、ライザームは弦を立て続けに引いた。黒い霧状の矢が出てくるのかと思えば、その右手に矢は無い。
矢は無かったが、風を切って飛来する音と気配だけがある。
ゼルドの傍らに浮く二枚の盾が、その意思通りに動いて、見えない矢の軌道を塞ぐ。
衝撃だけが盾を叩き、宙で揺らぐ。その間を縫って来た何かを、ゼルドは両手の手甲で払い、さらに両手の間に入り込んだそれを頭を振ってかわす。
二枚の盾で七つ、両の拳で五つを弾き、ギリギリでかわしたのが二つ、見えない矢の十四連射。最後の矢をかわした時にはライザームに手が届くほどの距離まで迫っている。ライザームに笑みがこぼれた。面白い、と。
「『流星弾』!」
ゼルドの魔力をまとわせ強化された両の拳、肘、膝、爪先、踵が、ライザームが回避する方向を追う様に、あるいは先回りする様に連続して繰り出される。
どの打撃もライザームを抉っているように見えるが、どれもわずかに触れることさえできていない。
「『村雨丸』、『落葉丸』」
宙に浮く二枚の盾はそのままに、ゼルドの両手の手甲は消え、全身の革鎧が戻ってくる。そして両手に反りのある片刃の刀が一振りづつ。
「『双旋』!」
ゼルドの二刀は別々の方向からライザームを襲い、僅かな時間差で二刀が交差するが、ライザームの顔前で空を切る。
切先の僅か先にいるライザームの顔を、一瞬薄い霜の幕が覆った。
ゼルドの繰り出した武技に乗せた二刀の魔力特性、村雨丸の水属性による雫と落葉丸の風属性による風が、交差する一点を中心とする薄氷を生じさせていた。
「『銀翼陣』!!」
その一瞬を逃さず、二刀の舞うような連撃が始まる。数瞬、少なくない剣尖が反応が遅れたライザームを裂く。ライザームが、奇妙なシルエットの小剣と短剣と思しき黒い霧の武器を出し、二刀の動きを制するまで。
「『魔剣砕き』か!?」
ゼルドは、短剣に絡めとられそうになる『落葉丸』を瞬時に収納する。
すり抜けた右手に『雪崩剣』を呼び、『村雨丸』と合わせた氷雪系変則二剣で、逆にライザームの小剣と短剣を凍結させる。
しかし、氷は、次の瞬間には閉じ込めたはずのモノを失い、落ちて割れた。
至近距離から、次にライザームの手に出現したのは、長柄の影であり、そのまま貫かれそうになるのを辛うじて避ける。せっかく詰めた距離だがやむをえない。
黒い霧に覆われた新たなライザームの武器は、黒魔槍と変わらぬ程の長さだが、ゼルドにはまとう魔力の質が異なるのがわかる。
「武技と魔法の武具の組合せ技は『魔戦士』の本領であったな。侮って油断したのはこちらの方であれば、その無礼の詫びにいくつか面白いものを見せよう」
ライザームは、右手一本で武器を抱え、伸ばした左手にまた長柄の武器を召喚する。さきほど与えたはずの複数の刀傷は、もうライザームのどこにも見えない。
「槍の二刀流なら確かに見たことはないな」
「二本ではないよ」
ライザームが両手の武器を軽く宙へ投げ上げると、そのまま肩ほどの高さで水平になり空中に浮かぶ。
そして、両手には、次の二本の長柄の黒い霧が出現している。
左手の槍を、また空中に浮かせると、残る槍を構えた。空中の三本の穂先もゼルドの方を向いている。
「魔王陛下の名において、ライザームが命ずる! 真の姿を示せ『黒魔槍』!」
ライザームの手の中の黒い霧は消え、冷たく黒光りする槍が現れる。
そして、空中の三本の長柄の武具は、金色の三ツ又の戟、銀色の斧槍、赤色の長刀の姿を現す。
遮蔽されていた魔法の武具の本来の気配が解放され、ゼルドは一瞬圧倒される。どれもが、想像を超える格の武具であることがわかる。
続けて、ライザームの声がするが、違う言葉が三重に聞こえる。ライザーム自身の口からとは別に、両手の手袋の甲、中指の付け根当たりが開き、両手の中指に着けた指輪がそれぞれ異なるライザームの声を発していた。
「古の海神ラヴァンよ、その威をもって怨敵滅ぼしたまえ! 『渦動三叉戟』!」
金色の三ツ又の戟は、錐のように回転し、周囲の風と水を巻き込み、横になった竜巻となる。渦の中の水分が微細な氷の細片となって高速で擦れ合い、竜巻は雷をまとい始めた。
「古の武神ルーファスよ、御身にこの戦を捧ぐ! 『審判の斧槍』」
銀色の斧槍は、真っ二つにする獲物を求めるように縦に回転し始め、そのまま風を裂く音を生む銀色の円盤となる。
「地獄の王ズワウズよ、罪人を焼く業火を我に与えたまえ! 『獄炎槍』」
赤色の長刀は、その長い穂先が赤い光を発したかと思う間もなく、白い光へと変わり、穂先自体が炎でできた蛇の舌の如く揺らめく。
「相性が、悪過ぎるのぅ」
「戦闘スタイルが似ている上に、ライザームは武具の能力を使い、武技をまだ使っていないので、ゼルドさんの得意のパターンに持ち込めませんね」
シルヴィアはのんびりと言い、ノゾムは不利な形勢に緊張気味に呟く。
ゼルドは、格上の敵と戦っても、必ず、逆転のチャンスを掴んで来た。ゼルドの『武芸百般』のスキルは、相手の武具の特性を見抜き、相手の見知らぬ武技を解析して習得できる。
相手の武技に短所があればそこを突き、無ければその武技を習得して戦闘中に成長でき、決して相手に後れを取らないからだ。
だが、今回は、終始ライザームの体術と武具の能力と小手先の技の組み合わせだけで、翻弄されているように見える。
しかも、発動させた武具の威力が致命的で、空中の三つの槍のどれ一つとっても、まともに食らえば、ただでは済みそうにない。
「『人面魔獣の鎧』、『反射の盾』、『破軍星』」
ゼルドは、白銀の全身鎧をまとい、三枚目の盾も宙に浮かせ、最も愛用する両手持ちの大剣のその刀身を正中線に沿って下すように構える。
『黒魔槍』を含めて四つの同時攻撃を全てかわすのは困難と、防御を最大限にしてしのぐ算段か。
「『鬼蜻蛉』、『金剛鉞』、『縛妖鎖』」
三枚の盾の周囲に片手持ちの戦斧と両手持ちの巨大な鉞が浮かび上がり、両手首には異様に長い鎖の付いた腕輪が現れる。
「モノマネと笑うかい?」
「我が三百年の研鑽と秘蔵のコレクションを、一目見ただけで真似られては、笑ってはおられぬよ」
返すライザームの顔には、堪え切れずに笑みが浮かんでいる。
「なるほど、魔力不足は武具の力で補うか」
「どういう意味?」
「縛妖鎖は、敵の魔力に反応するから操らなくていいんですよ。三枚の盾も自動防御にしておけば、ライザームが四つの武具を操るのに、ゼルドさんは大剣と斧と鉞を操るだけで対抗できる」
ノゾムに囁くマシューの解説に、ポーシュまで頷いている。
「だが、足らぬ。かの五芒星将殿には、お見通しであろうよ」
シルヴィアは一言で片づける。
ライザームの足の下にある金属の輪が風を巻く音をたてた。これまでの浮き上がり滑るような動きではなく、一気に噴射するような直線的な動き。
回転する斧槍が遅れることなくその右を並走する。
「『金剛鉞・大切断』! 『鬼蜻蛉・大顎』!!」
回転しながら迫る斧槍に回転させた鉞をあて、戦斧を逆側から遅れて来た炎の長刀に向かわせる。
金属の衝突音と破砕音が、同時に響く。ライザームの黒魔槍を、ゼルドはかろうじて大剣で受け流した。金剛鉞は、刃の半ばまで斧槍に断たれていたが、絡み合ったまま地へ落ちる。鬼蜻蛉は弾き飛ばされ、燃える長刀の矛先を僅かに逸らし速度を鈍らせたにとどまったが、続く三枚の盾が貫かれながらも長刀を止めた。
「やっぱり、届かねぇか!」
斜め後方上空から、雷と風をまとった三叉戟が迫るのと同時に、ライザームの黒魔槍がゼルドの大剣と再び交差する。
「『黒魔槍・地影槍』!」
ゼルドの大剣は、再度黒魔槍を受け流そうとし、両腕の縛妖鎖の一本は後方の三叉戟をまとう竜巻ごと絡めとり、もう一本は黒魔槍の影がそのまま足下の岩を使って実体化し突き上げて来るのに巻き付いて抑え込んでいる。
次の一瞬、縛妖鎖は地面の槍状の岩と飛び去ろうとする三叉戟の両方に引かれ、大剣を両手で持っているがゆえにゼルドは両手首で空中に吊るされたようになる。
「終わりだ」
ライザームの黒魔槍は、その隙を逃さない。
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