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◎一年目、翌年の四月に至るまでの章―外伝―

■彼女は悔しくて走りだす

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 里奈が外へ飛びだすと外は雨が降っていた。時間は夕方近くになっていた。

 当然、今日泊まる宿などまだ押さえていない。あてもなく走っているだけだ。

 どうすればよかったのかは自分でもわからない。

 叫びながらただ時間も忘れて走り続ける。だが、有限の体力がそれをいつまでも許すはずがなかった。

 声は枯れ果て、雨音にかき消される。

 足はもつれて、いつの間にかとぼとぼとした歩美にへと変わっていく。

 ――走るのも疲れたな。

 里奈は近くにあった公園へ吸い寄せられるように向かい、手近にあったブランコに腰かける。

 また、クランを探すのか。そもそも自分を迎え入れてくれるクランが存在するのだろうか。

 考えることが少しずつ面倒になっていく。思ってしまうのだ。自分は誰にも必要とされないのではと。

 雨は一向に止む気配がなかった。このままだと風邪をひいてしまうかもしれない。
 
 それも構わないか。でも、その時は誰か面倒を見てくれるだろうか。
 
 それはないだろう。

 自分はこのまま野垂れ死ぬのだろうか。

 それならいっそ地元に帰ろうか。親にはなんて言えばいいだろうか。

 ああ、つらい。こんな現実を誰が望んだというのか。

 悲しくて。怒りがわいてくる。それでも里奈にはいま感情をぶつけられるものがなかった。

 そして、知らぬ間に夜が更けていく。

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