デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎一年目、翌年の四月に至るまでの章―外伝―

■その背中は彼女の知らない背中

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 目が覚める。

 ゆらゆら揺れてるのと胸のあたりから伝わる温もり。里奈は自分がいま背負われていることに気がついた。

「ここは?」

 状況がつかめていない里奈は訊ねるしかなかった。

「じっとしてて。ゾーンを出たらタクシーを呼ぶから」

「それでどこへ行くの?」

「病院だよ。気絶をしたんだから診てもらうほうがいい」
 
 タクシーを使うというのか。えらく羽振りがいいなと思ってしまう。

「さっきの魔物はどうしたの?」

「僕が倒したと言ったら信じる?」

「信じない」

 里奈は即答する。

「じゃあ想像に任せるよ」

 この声は男の子のものだった。

「……病院は行きたくない」

「どうして?」

「……お金がない」

「この国の国民なら一八歳まで医療費は無償だよ」

「何それ?」

 はじめて聞いた気がする。


「もうすぐログアウトするよ」

 果たしてその言葉の通りだった。里奈の端末にログアウトの通知がくる。

 それから彼が呼んだであろうタクシーに里奈を乗せる。

「私、一人で行くの?」

「もちろんついていくさ」

 里奈を後部座席に寝かせると、彼は助手席に座る。

 運転席には誰も乗っていない。東京のタクシーは全自動運転だからである。

 タクシーが動きだす。そうしていると里奈はまた眠ってしまっていた。
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