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◎二年目、四月の章

■由芽との再会は嬉しいばかりではなかった

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 由芽と落ち合う場所を指定したのは久遠だった。それこそ少し高そうなカフェである。

 由芽には先に待っているように伝えてあり、由芽は緊張した面持ちで店の窓際に座っていた。

「どうやら、彼女は本当に一人のようだね」

 久遠はあたりを見わたしながら、里奈にしか聞こえない声でささやく。店内は里奈たちを入れて三人だった。

「疑ってたの?」

 里奈は非難の視線を久遠に向ける。

「一年近く会ってないんだ。多少は僕に警戒させてくれよ」

 里奈はフンと鼻を鳴らして、由芽のところへまっすぐ向かう。

「古輪くんのおごりだからね!」

 久遠はやれやれと苦笑いを浮かべた。

「由芽、久しぶり。元気……そうじゃないわね」

 遠くからはわからなかったが、一年前と比べて少しやつれているように思えた。生気も心なしか弱く見える。

「里奈ちゃん、お久しぶり。隣の人はえっと……」

「古輪久遠です」

 久遠は自分から名乗る。

 由芽の前だということで二人はメガネとマスクを室内で外していた。

 里奈が男の子を連れていることに驚いているようで、由芽は久遠の顔をまじまじと見ていた。

「何か?」

「気を悪くしたならごめんなさい。男の子とこんなところで話したことなかったから」

 つまり緊張しているということかと里奈は理解する。

「由芽、今日は古輪くんが何でもおごってくれるそうだから、いくらでも頼んでいいわよ」

 里奈は場の空気を和ませるために久遠をダシに使う。しかし由芽は弱々しい笑みを浮かべるに留まる。

 里奈は久遠に横目で視線だけ送る。久遠はこちらの視線には気づいておらず、由芽をじっと観察しているようだった。

 この少年はこの場ではあまり役に立たないなと里奈は認識した。

「古輪くん、こう見えてお金持ちだから遠慮しなくていいからね」

「うん。ありがとう」

 里奈と久遠は席に座る。こうして三人の会話がはじまろうとしていた。
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