上 下
71 / 266
◎二年目、五月の章

■里奈は晴に訊ねられる。ここで何をしているのかと

しおりを挟む
「なあ、他にも二人いなかったか?」

 この一言で実はだけに興味があるわけでないことを里奈は察する。

「いるわよ。二人とも教室だけどね」

「ってことは本気で義務教育を受けてるのかよ」

 晴は思わず吹きだす。まあ、これがの反応だろう。里奈もとやかく言う気はない。

「それで江波先輩は私たちをわざわざ笑いにきたワケ?」

 極力、感情は抑えたつもりだが、最後のほうで語気が強くなってしまう。

 馬鹿にされたのだから腹を立てて何が悪いというのか。

「悪い。気分を害したなら謝る」

 里奈の気分を害したのを察した晴は早速頭を下げてきた。

 切り替えの早い男だと少し感心する。だが、それだけだ。今後関わることもないだろう。

 里奈は立ちあがり、その場をあとにしようとする。

「待ってくれよ」

 晴が呼び止めてくる。

「まだ何か用でも?」

 里奈の口調は冷たい。

「ちょっと詳しい話を聞かせてほしい」

 鬱陶うっとうしいと思った里奈はどうあしらってやろうかと思ったが、それは晴の顔を見て気が変わってしまう。

「だから俺の話も聞いてくれ。こっちも困ったことになっていてな」

 自分はひょっとしてお人好しか何かだろうかと呆れるしかなかった。

「とりあえず聞いてあげる。ただし私の仲間も一緒よ。それでもいい?」

「もちろんだ。こちらこそ助かる」

 晴は安堵したように胸を撫でおろしている。見ているとどうも自分のことで悩んでいるような感じではない気がした。

 まあいいだろう。それも話を聞けばわかることだ。

 里奈はとりあえず久遠を呼びだした。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

星を旅するある兄弟の話

SF / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

悪役令息の義姉となりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:20,301pt お気に入り:1,495

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:172,140pt お気に入り:7,995

書捨て4コマ的SS集〜思いつきで書く話

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:2

臆病な犬とハンサムな彼女(男)

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:3

処理中です...