デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎二年目、五月の章

■強制ログインゾーンとは一体何なのだろうかと謎は深まる一方である

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 由芽に出した指示は病院へ到着してもタクシーから降りないことだった。

 建物内にいる内は強制ログインゾーン内でもログインゾーンから除外される。

 ただし扉を開けたりした場合は強制ログインゾーンに内部も浸食されるという現象が起こる。

 それに加えてログインあいだは現実のオブジェに対して干渉できなくなる。

 久遠はこれらの話を前提として由芽に指示を出している。

 一方で里奈たちは病院に直行するのをあえて避けた。これは久遠の発案によるものだ。

 タクシーで降りたのは病院から半径一キロ以上離れた場所である。

「ちょっと悠長なんじゃない?」

 里奈は久遠問い詰めるような口調で迫る。

「焦るのはわかるけど、いきなり敵陣の真ん中に突っこむのは危険だろ」
 
 久遠は全員にログインを促す。

「どうしてここで?」とも思ったが、久遠があまりに真剣だったので里奈は渋々従った。

 そして、その理由をすぐに理解することとなる。

 そこには境界が存在していた。夜をまといし空間の狭間に黒と紫の混じりあった空間が奥行きへと存在している。

 しかも、その境界はあきらかに動いていた。

「強制ログインゾーンはどうも可視化できるようだね」

 久遠は興味深そうに境界を観察している。それに対して里奈は少し不謹慎なように感じる。

「ちょっと久遠――」

 一言言ってやろうと里奈が口を開くのを久遠は手で制す。話を聞いてくれということらしい。

「見てくれ。ゾーンが移動している」

 久遠の指摘通りで、たしかに自分たちの立ち位置は先ほどから変わっていないにも関わらず微動ではあるが、ゾーンの境界が近づいたり離れたりしている。

「ゾーンは魔物の縄張りを可視化したものかもしれない。……ひょっとしたら解除できるかも」

「どういうこと?」

「たとえばボスモンスターを倒すとかすれば解除されるとか」

 その可能性に賭けろということか。どのみち解除を試みなければ真紀はタクシーからも出られず、病院にも入れない。

「でも、確定事項ってわけでもない。由芽たちには別の病院を探すように伝えておくよ」

「そうね」

 里奈はコクリと頷く。

「なあ。あんたらが何の話をしているかはこれから聞くってことで、とりあえずゾーンこの中にいる一番強いヤツをぶっ倒せばいいんだな?」

 明里はたぎった瞳を隠さない。

「協力してもらえるんですね」

 明里と葵は当然だという満面の笑みを浮かべている。

 四人はパーティーを組むと瘴気しょうき住まう暗夜あんやの地へ足を踏み入れるのであった。
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