デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎二年目、六月の章

■脱出とそれから

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 結局、釣瓶落としの対策は手当たり次第やって探るというのが久遠の結論であった。

 結論としては釣瓶落としは目視で確認をしているようで、煙幕弾でこちらの姿を隠しながら進むのが有効だった。

 しかし、それも煙幕弾があればの話で尽きてしまうと別の対策が必要である。

 久遠は投擲の武器は持っていたが、天井まで届く射程の武器までは有していない。

 やはり長射程を望むなら弓矢が有効なのだ。二種類の武器はそうやって差別化が図られている。

 久遠はアイテムボックスから薬の入ったビンを取りだす。

「それは?」

韋駄天いだてんの秘薬です。三〇秒だけ足が速くなるそうです」

 それを試すのかと聞くまでもなく、久遠は薬を飲むと真鈴を抱きかかえる。

「……行きます!」

 それは本当に驚くような速度で走り抜けていく。

 背後をちらりと見るといろんな顔つきをした釣瓶落としたちが次々に落ちてくる。

 首から上しかなく移動時にはどうやってか飛び跳ねながら追いかけてくる。何とも不気味な光景である。

 薬が間もなく切れそうで、第一階層の入り口に差しかかろうとしたときである。

 背後から地面を揺るがすような唸り声。そこには他のよりひとまわりは巨大な釣瓶落としの姿があった。

 その声は悔しそうで「次は必ず仕留めてやる」そんな風に言ってるようであった。

 ゲートを走り抜けて、プリズム・タワーを出ると真鈴はあることに気がつく。

 ――ログアウトできる!

 自動ドアもなく、外と繋がりはオープンになっているのが幸いした。

 久遠と真鈴はログアウトして、二人はその場にへたりこむ。

「動けそう?」

 脂汗をかいて肩で息をしている久遠に声をかける。

「少し待ってもらえたら……」

 夜の街は明るいが人はまったくといっていいほど歩いていない。

 小さな風の音さえ耳で聞き取れる。

 先ほどの体験は何だったのだろうか。先ほどまで異世界にいたような気分である。

 真鈴は何とか立ちあがって久遠へ手を差しだす。

「帰ろっか」

 久遠は真鈴の手を握り返して指と指を絡ませあった。

 それから真鈴は久遠を支えながら帰路へとつくのである。
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