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◎二年目、七月の章
■三人はプールで休憩していた
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昼食後、しばらくしてから校舎内で少し狩りをしていた由芽たち三人はクールダウンということでプールにいた。
「久遠って泳ぐの下手だね」
圭都が指摘する。対して圭都の泳ぎは由芽から見ても素直に上手と言えるものであった。
「意外だよね」
自分だってもう少しマシだろうと由芽は思う。
「いいだろう。得意不得意があったってさ……」
久遠は唇を尖らせている。拗ねてしまったのだろうか。
由芽は圭都と顔を見あわせる。
「鍛えがいはあるね」
由芽と圭都はせっかくだから久遠のがもう少しまともに泳げるようにしようという話で合意していた。
しかし、それもひと休みしてからの話だ。三人はプールからあがると近くのベンチに座る。
なぜか久遠は真ん中で両サイドに由芽と圭都が座る。
「この配置に何か意味が?」
「なんとなくかな」
由芽は答える。
三人が着ているのは紺色で無地の水着である。学校のプールを利用する際に着用せる水着は指定されているのだ。
「左を見てもみぎを見ても女子の水着じゃ目のやり場に困るよね」
左右に視線をさまよわせていた久遠に対して圭都が言う。
少し意地悪そうな表情だ。久遠は顔を赤くして俯いてしまう。
「圭都ちゃんは沖縄出身なんだよね?」
「ん。由芽はどこから来たの?」
少し日焼けした健康そうな雰囲気なのだ。そのあたりは由芽とは対照的である。
「私は静岡のほう。ちなみに久遠くんは関西の方だよ」
「その割に関西弁しゃべらないよね」
「そっちも沖縄の言葉は使わないだろ」
久遠は呆れ口調である。
「だって知らないし」
「それを言ったら僕もあまり知らないよ」
そういえば方言というのが消滅しかかっているという話を聞いたような気がする。
由芽の親世代さえも知っているのか怪しいらしいのだから無理もない。
「さて、十分休みもとれたと思うし」
由芽は久遠の片腕を両手でしっかりと掴む。
「ゴーゴー」
圭都も同じく久遠の腕を掴んだ。
「わかったよ……」
二人の指導によって久遠の泳ぎはかなり改善されたという。
だが、これからもしばらく久遠への指導は続けようとそんな話になってしまうのである。
「久遠って泳ぐの下手だね」
圭都が指摘する。対して圭都の泳ぎは由芽から見ても素直に上手と言えるものであった。
「意外だよね」
自分だってもう少しマシだろうと由芽は思う。
「いいだろう。得意不得意があったってさ……」
久遠は唇を尖らせている。拗ねてしまったのだろうか。
由芽は圭都と顔を見あわせる。
「鍛えがいはあるね」
由芽と圭都はせっかくだから久遠のがもう少しまともに泳げるようにしようという話で合意していた。
しかし、それもひと休みしてからの話だ。三人はプールからあがると近くのベンチに座る。
なぜか久遠は真ん中で両サイドに由芽と圭都が座る。
「この配置に何か意味が?」
「なんとなくかな」
由芽は答える。
三人が着ているのは紺色で無地の水着である。学校のプールを利用する際に着用せる水着は指定されているのだ。
「左を見てもみぎを見ても女子の水着じゃ目のやり場に困るよね」
左右に視線をさまよわせていた久遠に対して圭都が言う。
少し意地悪そうな表情だ。久遠は顔を赤くして俯いてしまう。
「圭都ちゃんは沖縄出身なんだよね?」
「ん。由芽はどこから来たの?」
少し日焼けした健康そうな雰囲気なのだ。そのあたりは由芽とは対照的である。
「私は静岡のほう。ちなみに久遠くんは関西の方だよ」
「その割に関西弁しゃべらないよね」
「そっちも沖縄の言葉は使わないだろ」
久遠は呆れ口調である。
「だって知らないし」
「それを言ったら僕もあまり知らないよ」
そういえば方言というのが消滅しかかっているという話を聞いたような気がする。
由芽の親世代さえも知っているのか怪しいらしいのだから無理もない。
「さて、十分休みもとれたと思うし」
由芽は久遠の片腕を両手でしっかりと掴む。
「ゴーゴー」
圭都も同じく久遠の腕を掴んだ。
「わかったよ……」
二人の指導によって久遠の泳ぎはかなり改善されたという。
だが、これからもしばらく久遠への指導は続けようとそんな話になってしまうのである。
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