デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎二年目、八月の章

■翠烏という刀の話

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「あなた、どうして翠烏のことを?」

 久遠がなぜ知っているのか。聞かずにはいられなかった。いまのところ翠烏のおかげでいい思いをしたということがないからだ。

「君の持つ翠烏は三色烏さんしきからすと呼ばれる継承装備の一本だと思われる」

「やけに詳しいじゃない」

 攻略サイトのどこを見てもなかった情報をこの少年は知っている。

「僕はそのうちの一本、蒼烏あおがらすを所持している。ついでに里奈もその一本である紅烏くれがらすの所持者だ。期せずして三色烏がここに揃ったんだ」

 頼果はポカンとする。久遠が何を言っているのか理解できなかったためだ。

「それと君の悩みは僕や里奈といることでだいたい解決する」

 逆もまた然りと久遠は言って、久遠や里奈の持っているスキルについて話してくる。

「だから、私に一緒にいないかと誘おうとしている?」

 久遠は首肯する。

「行くアテがないというなら東方旅団とうほうりょだんに入団しないかい?」

「そうはいってもねぇ」

 久遠はまだ知らないのだ。自分がわざわざ危険を承知で夜の街を駆けまわっていた理由を。

「私もこの前の戦いであなたが他と違うのは理解してるつもり。だから三色烏のことも信じる」

 だが、それと入団するかの話は別だ。

「難しいかい?」

「そうね。いまのところは何とも。時間をもらえる?」

 どのみちいま起きていることに対して落とし前はつける必要があった。返事はそれからでもいいだろうと頼果は考えた。

 頼果にとってこの寮は選択肢の一つに入れていいくらいには嫌いではなかった。

 それに久遠という少年に興味もあった。

「わかったよ。その代わり朝になって何も言わずに出て行くのはやめてほしいかな」

「だったら、ここで一緒に寝る?」

 頼果は布団に何とかもう一人入れるスペースを作る。

「君のような女性から誘われるのは男冥利なんだろうけど、やるんなら隣にもう一組布団を敷くかな」

「本気?」

「それなりにね。里奈にも事情を話すからさ。ちょっとは考えてくれよ」

 それから久遠はもう一組の布団を持ってきて頼果の近くに布団を敷く。

「そこまで言ったなら寝込みを襲うとかしないでよね」

 久遠は布団に潜ると右手を振って答える。素っ気ない対応だ。

 それはそれでモヤモヤする頼果であった。

 間もなくして部屋が暗くなる。頭上のほうから久遠の寝息が聞こえてくる。

 なぜか、その吐息を頼果は妙に意識してしまうのであった。
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