デジタル・リボルト~ディストピアからへの英雄譚~

あかつきp dash

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◎二年目、九月の章

■楼閣の大蛇

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「いま叫び声がしたわよ」

 ようやく寮の入り口に到着して里奈が最初に口を開いた。

「声の感じからして蘭々だろうね」

 久遠が言った。

「早く行こうぜ」

 晴が急かしてくる。彼は何だかんだで面倒見はいいのだと里奈は思う。

「中はおそらく強制ログインゾーンになっているね」

 覚悟をするようにと久遠が注意を促してくる。それに一同は頷くと寮の中へ入る。

 入るや否や強制的にログインさせられると同時に最前線にいた久遠に蛇が一匹飛びかかってくるのを容赦なく一刀両断する。

 それから里奈の胴くらいの太さがある大蛇が久遠に向けて、口から粘液を発射してくるのを頼果が弾き飛ばす。

 さらに里奈が式神を飛ばして当てると大蛇の動きは鈍くなる。そこを久遠が一刀で斬り伏せる。

「こいつらどういう動きするんだよ……」

 あまりにも隙のない連携に晴は言葉を失っているようだった。

「行こう」

 久遠を先頭に一行は進む。階段をのぼって踊り場に出ると端の方に追いやられて蛇に囲まれている一二期生組を見つけると晴が前に出る。

「こっちだ!」

 晴が両の手甲でカンカンと鳴らす。すると蛇たちの注意は晴から――そして里奈の方へ移る。

 蛇たちの経路がわかれば、そこを塞いで各個撃破していくだけだ。

「大丈夫か?」

 蛇を倒し終えると晴が縮こまっている蘭々に駆け寄る。

 すると蘭々は迷わず晴の胸の中に飛びこんだ。

「みんな無事でよかった」

 里奈はホッと胸を撫でおろす。いや、本当によかったのだろうか。

「さっきの蛇たちの動きだけど、蘭々たちを倒すつもりならいつでもできたよね」

 久遠が険しい目をしながら考察を口にする。

「もったいぶらないで結論を言いなさいよ」

 頼果が促すと久遠が頷く。

「蘭々たちのレベルを見て、もっと高レベルのアバターを呼ぼうとした可能性がある」

「魔物ってそんな知性的な行動をとれるの?」

 由芽が疑問符をつける。里奈だってそんな話は聞いたことなかった。

「蘭々たちを怖がらせて助けを呼ばせる。それから僕らを合流させて一カ所に集める」

「まさか一網打尽ってか?」

 晴は軽口を叩こうとするも目が笑っていない。

「あるいは一カ所に集めること自体に意味があるのか……」

 階下から地を這う何かが地響きをあげながら迫ってくる。

「いずれにしてもここにいるのはまずそうだ」

 一同は階段をのぼって上へと向かうことにする。

「……あいつがきます」

 蘭々がうわごとのようにつぶやく。

「あいつって?」

 里奈が訊ねる。

 だが、答えてもらう必要なかった。顔面を岩のようなもので覆った、廊下の幅くらいある蛇の頭が暗闇から顔を出したからだ。

 その大蛇の名前は――鎧蛇よろいへびと呼ばれた。


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